月給制平均1万円以上、時給制60円以上を要求/介護クラフトユニオン

(2010年2月24日 調査・解析部)

[労使]

 

UIゼンセン同盟傘下で、介護関連の職能別労働組合である日本介護クラフトユニオン(河原四良会長、5万8,250人、略称NCCU)は19日、都内で中央委員会を開き、月給制は平均1万円以上、時給制は平均60円以上の賃上げ要求と、定期昇給制度の導入や扶養(家族)手当といった制度要求の2本を軸とした今春闘の方針を決定した。

「介護処遇問題のトーンダウンを懸念」(河原会長)

河原会長はあいさつの中で、「昨年から『介護従事者の賃金は、全産業平均を下回ってはならない』との賃金政策を各方面に発信した。常勤者で普通に真面目に働けば、月額約30万円、年収ベースで約450万円をめざすということだ」と述べ、目指すべき方向を改めて提起。そのうえで「今年の賃金交渉も、あるべきレベルに向けた格差是正分として、月給制組合員で平均1万円以上注1、時給制組合員で平均60円以上(月給制/170時間)を要求する。その他、賃金制度の確立、扶養手当の要求、さらにこの業界に働き続けるために必要な付帯要求注2等を提案する」との方針を示した。

河原会長はまた、介護業界を取り巻く政策の動向に触れ、「『政労使で取り組む処遇改善元年』と位置づけた昨年に続き、大きなうねりを受けての2年目になるが、この先の動きは見えにくくなっている」と懸念を表明。さらに、「年金、医療、教育等この国の将来形をつくる政策論議から、現在は介護が抜け落ちているようだ。介護の問題が決してトーンダウンしないよう、国と行政に仕掛けていきたい」などと述べ、介護保険制度と介護報酬が同時に改定される2012年に向けて、今秋から本格的な議論が開始されるのを受け、3月末までに独自の政策提言をまとめる考えを明らかにした。

介護職員処遇改善交付金の申請率は8割

中央委員会では、一般経過報告の中で、09年4月に初めて引き上げられた介護報酬改定の影響注3に触れ、「(基本報酬の引き上げはほとんどなく)人員確保や介護従事者の専門性等、サービスの質向上に努力している事業者に『加算』を付ける形となった結果、基準を満たせない事業者は、報酬引き上げの恩恵を受けられず不満が残った。このほか、加算で収益が上がった事業者も、赤字補填で終わってしまったところもあり、介護従事者の処遇が必ずしも国の思惑通り改善されたとは言えない」などの報告があった。

また、昨年10月から実施された介護職員処遇改善交付金事業については、「 (1)平成21年度補正予算で実施され介護報酬とは別枠であること (2)平成24年3月までの時限事業であること (3)対象者が(事務員等間接職員を含まない)介護職員に限られていること (4)平成22年度中にはキャリア・パスに関する要件が追加されること――等から、必ずしも事業者にとって活用しやすいものとはなっておらず、昨年12月末時点の申請率は全体の80%となっている」などと指摘した。

こうした実態を受け、中央委員会では「継続的にサービス提供可能な事業収入と利益を得られるような介護報酬改定」とあわせて、全産業平均を目指した賃金改善に結びつけるため、介護報酬の水準・制度両面からの取り組みの重要性を確認した。

注1:介護業界の平均賃金が21万6,489円(08年度介護労働安定センター調査)なのに対し、全産業の平均賃金は29万9,100円(08年度賃金構造基本統計調査)であることから、その格差を約10年で是正する方針を掲げている。

注2: (1)(常勤社員の休日出勤や残業の軽減に向け)時給制組合員の土、日、祝日の時間給を3割増にすること (2)義務化されているケアマネジャーの現任研修を、組合員が受講する際は出勤扱いとし、費用(研修費、交通費等)は会社負担とすること (3)時給制組合員が「介護福祉士」資格を保有・取得した場合は、現在の本人時給の1割増とすること (4)年次有給休暇の取得促進に向け、具体的施策を示すこと (5)新型インフルエンザワクチン接種を積極的に推進するとともに、接種料金は会社負担とすること――など。

注3:介護報酬改定が、組合員の処遇にどのように反映されたかについて、NCCUが昨年8月に実施した「処遇改善緊急調査」によると、月給制組合員の賃金で平均3.3%(6,475円)増、時給制組合員の身体介護で平均0.7%(10円)増、生活援助で平均2.1%(23円)増、その他時給平均で2.2%(23円)増――などとなっている。