教育政策の転換求める運動方針など決定/全教の定期大会

(2010年2月17日 調査・解析部)

[労使]

全日本教職員組合(山口隆委員長、約10万人、略称:全教)は2月13、14の両日、東京・三宅坂の社会文化会館で第27回定期大会を開き、2010年度の運動方針や春闘方針を決めた。運動方針の柱は、 (1)正規教職員の増員や教育費無償化等の教育政策転換 (2)教職員の賃金・労働条件の改善 (3)非正規教職員の労働条件改善 (4)労働基本権回復 (5)憲法改悪反対・核兵器廃絶 (6)組織拡大――など。春闘方針では、「月額1万円、臨時・非常勤職員の時給100円」の賃金要求とともに、長時間過密労働の解消などを掲げている。そのほか、教育関連の国際産業別労働組合「教育インターナショナル(略称:EI)」加盟に向けた検討を始めることを確認した。

あいさつした山口隆委員長は、現政権の教育政策について、「(政権交代による)公立高校の授業料無償化や全国一斉学力テストの抽出調査での実施などは、自民党政権では考えられなかったこと」と一定の評価を与えながら、「新政権の教育政策の弱点は、憲法が定める子供の学習権保障などの観点がないこと」と指摘。そのうえで、「『競争と管理』の教育政策を抜本的に転換させ、新しい教育をつくりあげよう」と強調した。具体的な政策として、「30人学級の実現や長時間過密労働の解消をめざす教職員の増員が必要。教員免許更新制は、免許制度そのものとは切り離して、直ちに廃止すべき」と訴えた。

私学含め高校教育費の無償化を

教育政策の転換では、すべての子供たちにゆきとどいた教育条件を求める取り組みとして、教育費について、私学を含めたすべての高校教育費の無償化や、年収500万円以下の家庭に対する大学などの学費無償化を掲げている。学習環境については、30人学級の実現をめざし、文部科学省に教職員増員の新しい定数改善計画の策定を求め、全教としての定数改善要求案を作成するとしている。これに向け、父母・国民と共同でシンポジウム、相談活動や全国署名などに取り組んで合意形成をはかり、貧困や格差の拡大など子供や家庭のおかれている厳しい実態を社会的に訴える考えだ。

教員の拘束時間短縮を

教職員の賃金・労働条件の改善では、教育現場になじまないとして、教職員評価制度と賃金・処遇のリンクの廃止を求めるとともに、長時間過密労働の是正について、すべての都道府県で所定勤務時間を1日7時間45分として、拘束時間の短縮を要求している。

非正規教職員の労働条件改善については、全国で非正規教職員の要求アンケートを実施して、要求の集約をはかる考えで、官製ワーキングプアとしての実態を訴えて非正規教職員の多用化に歯止めをかける社会的なアピール活動に取り組むとしている。

労働基本権の回復では、教職員の労働協約締結権と少数組合を排除しない交渉システムの確立を求めている。

組織拡大については、「組合員の1割拡大、1万人以上の組合員加入の達成」を目標に掲げ、すべての分会で職場の新規採用者や非正規教職員との対話に取り組む考えだ。

子供の貧困問題に言及する発言相次ぐ

討議では、「子供の進学をすなおに喜べず、不安になっている現状を訴える親がいるなど、子供の貧困問題が深刻」「貧困のために、虫歯になっても治療を受けさせてもらえない子供たちがいる」「健康診断のときに、下着を買えないために着けずに来て、学校で下着を借りる子供が出ている」「朝ご飯をとらず、夕飯もパンだけというような家庭が出始めている。貧困と格差が子供たちの心と体に影響を与えている。せめて給食費は無償化すべきだ」など、家庭と子供の深刻な貧困の現状を訴える意見が相次いだ。

就職状況について、「就職先の決まっていない学生の数が、就職氷河期のときを超えている」「このままでは、卒業時でも就職先がきまっていない生徒がでる。経営者協会、商工会議所や自治体に就職支援の要請を行っている」などの厳しい現場の状況が報告された。また、「年契約が若い教員で広がっている。ボーナスもなく、社会保険等を引かれると、年収は200万円を切るワーキングプアーの状態だ」「非正規教職員は、専任をえさに、担任も、部活も専任教員と同様にやらされて長時間過密労働になっている」など非正規教職員の問題を訴える意見もでた。