定昇制度の完全実施と賃金水準の確保を必達目標に/自動車総連春闘方針

(2010年1月15日 調査・解析部)

[労使]

 

トヨタ自動車労働組合などが加盟する自動車総連(西原浩一郎会長、76万3,000人)は14日、都内で中央委員会を開き、今春闘の賃上げについて定期昇給に相当する賃金カーブ維持分の確保などを柱とする取り組み方針を確認した。方針は、定昇制度の完全実施と賃金水準の確保を必達目標に掲げたうえで、独自の判断で賃金改善に取り組む単組への下支えをするとの考え方を示している。今後、傘下組合は同方針に沿って賃上げ要求方針を策定。大手メーカー労組は2月17日に一斉に要求を提出する予定だ。

賃金カーブ維持分の確保にこだわる

自動車総連の春闘方針

取り組み方針は、「日本経済の内需の底割れを防ぎ、産業で働く者の生活を守るためには、現状の賃金水準を維持することが最低限必要だ」と指摘。「賃金カーブ維持分の確保に、こだわりをもって徹底的に取り組む」と強調した。「カーブ維持分の確保を大前提」としたうえで「自社の賃金実態を踏まえた格差・体系是正等の観点を踏まえ、各組合の判断により賃金改善に取り組む」との方針だ。年間一時金は、「5カ月を基準とし、最低でも昨年獲得実績以上」とする。

また、今回初めて方針の柱に組み込んだ非正規労働者に関する取り組みでは、生産変動への対応が避けて通れない産業事情を踏まえたうえで、非正規雇用のあり方について労使で議論の場を設けることや、法令順守などの点検活動に取り組む。

このほか、企業内最低賃金協定(18歳・15万4,000円)の拡大・水準引き上げも求めていく。自動車総連の説明によれば、現在、同協定を締結しているのは集計対象1,118組合のうち584組合。締結率は52.2%にとどまっているという。

個別労組の賃金改善の取り組みも支援

西原会長はあいさつで、今回の賃金改善要求について、「デフレを阻止し、景気の底割れを防ぎ、内需の落ち込みを食い止め、内外需バランスのとれた経済構造に転換していくためになんとしても賃金水準の低下を阻止しなければならない」と指摘した。

さらに、 (1)09年の取り組みでは220労組が賃金カーブ維持分を確保できなかった (2)厚生労働省調査によると、基本給などを削減した企業が全体の30.9%、定昇制度のある企業のうち、定昇凍結・延期を余儀なくされた企業が20.6%に達している――などの実態を説明して、「総連の取り組みの社会的影響の大きさを踏まえ、制度の完全実施と賃金水準両面での維持・確保を必達目標とする」と強調。そのうえで、「格差や賃金体系上の歪みの是正、組合員の頑張り・努力を受け止める観点などから正当性ある根拠に基づき賃金改善に取り組む労組を、しっかり底支えする」と述べた。

また、企業業績の悪化の影響で昨年、大幅な水準低下となった年間一時金については、「賃金と並ぶ取り組みの重要な柱としての位置づけのもと、生活を守る観点から、獲得水準の反転・回転に全力をあげる必要がある」と訴えた。

非正規労働者への労組の関与を

一方、非正規労働者への取り組みにも言及。「産業の宿命である生産変動対応などへの選択肢の一つとして非正規労働者の受け入れは必要」との認識を示したうえで、「その雇用形態は、受け入れ企業の雇用責任が明確な期間従業員などの直接雇用を基本とすべきであり、やむを得ず派遣労働者などの間接雇用を受け入れる場合でも、労組の関与を一段と高めるべきだ」と述べた。

具体的には、各企業労使が非正規労働者の状況や課題を共有したうえで、 (1)相談窓口の設置 (2)正社員との均衡を基本とした労働条件面の向上 (3)職業訓練・能力開発機会の拡充 (4)正社員登用制度などの非正規労働者のモチベーション向上につながる施策の検討・実施 (5)採用時から期間満了時までのコンプライアンス順守の観点での点検機会の場を設けるとともに、少なくとも契約期間満了を履行すべく取り組む――などを求めていく考えだ。

なお、西原会長は、労働政策審議会がとりまとめた労働者派遣法の改正案についても触れ、「製造業派遣での労録型派遣の禁止も含め、(総連の)見解にほぼ沿う内容であり理解できる」と評価した。