社保庁職員の分限免職回避策を評価/上部団体の自治労が会見

(2009年12月4日 調査・解析部)

[労使]

再就職先の決まっていない社会保険庁職員(約500人)をめぐり、厚生労働省が示した分限免職回避策を受け、社保庁最大の全国社会保険職員労働組合(芳賀直行委員長、8,000人)と、上部組織である自治労(徳永秀昭委員長、約90万人)は2日、都内で記者会見を開き、「2010年1月以降の雇用の受け皿が基本的に確保できる方向になった」などと述べ、これを受け入れる姿勢を明らかにした。

日本年金機構への職員採用にあたっては、社保庁職員のときに過去一度でも懲戒処分を受けた者は一律に不採用・分限免職とする閣議決定が行われており、今年12月末の同庁廃庁までに再就職先がみつからない場合は、民間の解雇に相当する分限免職となるため、連合などがその雇用確保を強く求めていた。

これを受け、長妻厚労相が新たに、(1)懲戒処分歴のない職員約200人については、年金機構の准職員として170人程度を募集する(2)(年金記録のぞき見等)懲戒処分歴のある職員約300人については、厚労省の非常勤職員(任用は2年3カ月間)として200~250人程度を公募する(民間からの応募と同列に扱う)――などとする方針を表明。これを受け、全国社保労組と自治労が、公式見解を明らかにした。

会見した徳永・自治労委員長は、「11月27日に細川律夫副大臣より基本的な骨子案が示されていた」としたうえで、「自治労及び全国社保労組としては、今回の回避策により、再就職を希望する者については、官民人材交流センターを通じた再就職あっせんと合わせて、2010年1月以降の雇用の受け皿が基本的に確保できる方向になったと認識しており、基本的に了解したいと考えている」と述べ、評価する考えを明らかにした。

また、芳賀委員長も、懲戒処分歴のない職員に対する年金機構准職員での募集については「準職員というカテゴリーそのものに問題はあるものの、現時点における回避策としては評価に値すると考えている。労組としてもこの募集により多くの組合員が応じるよう働きかけたい」などとし、政府方針に応じる考えを示した。

一方で、懲戒処分歴のある職員に対する厚労省非常勤職員での公募については、「大幅な所得減額を免れず、今後の生活設計に重大な支障をきたすこと、任用期間が定められており安定雇用ではないこと等から、率直に多くの問題があると考えている。そもそも過去に懲戒処分を受けたことがあるという一律的な基準により分限免職対象者を生じていること自体、(二重処分に相当するという)判例法理に照らしても不合理で、政治的判断の結果であると指摘せざるを得ない」などと批判。そのうえで、年末の廃庁が差し迫るなか、「年明けから路頭に迷うという最悪の事態を回避することを重視し、また仮にこれを拒否したとしても次善策に至らない可能性も高いことから、受け入れることを決断した」などと述べた。

さらに、徳永氏は無許可専従で懲戒処分歴のある約20人の扱いに触れ、「細川副大臣との会談で、私の方から応募の自粛を申し出たことをご理解いただきたい」とし、同職員のその後については「官民人材交流センターのあっせん等を通じ、責任を持って見届けたい」などと言及。また、今回の回避策をもってしても対象者の再就職に至らなかった場合の措置として、「1月以降も官民人材交流センターでの再就職支援を受けられるよう求めてゆきたい」などと強調した。