4,500円以上のベースアップ要求へ/JAM

(調査・解析部)

[労使]

中堅・中小の金属機械関係労組を多く組織するJAM(河野和治会長、38万7,000人)は12月4,5の両日、静岡県熱海市で「2009年春季生活闘争中央討論集会」を開き、来春の闘争方針について討議した。賃上げについて「方針大綱案」は、物価上昇分に見合うベースアップとして4,500円以上を求める考えを打ち出している。春闘方針は来年1月中旬の中央委員会で正式決定する。

「2009年春季生活闘争中央討論集会」写真

JAMの方針大綱案は、「2009年春季生活闘争においては、消費者物価の上昇に対する生活防衛を最重点課題としながら、家計や中小企業、低所得者層が長らく犠牲となってきたマクロ的な分配の歪みの是正を追求する」との基本的姿勢を示したうえで、「生活防衛に向けた月例賃金の引き上げを重視し、ものづくり産業の賃金水準の向上をめざす」との目標を掲げる。

具体的には09春闘で、定期昇給に相当する賃金構造維持分に加えて、物価上昇分に見合うベースアップ「4,500円以上」を求めることを提起した。「4,500円」は、JAM全体の平均所定内賃金(約29万9,000円)に、08年度の消費者物価の見通し(1.5%)を乗じて端数処理を施したもの。格差の是正・縮小分は「以上」に含めている。

定期昇給制度のある企業の労組はベア分として4,500円以上、定昇制度のない企業労組は賃金構造維持分を4,500円とみなして9,000円以上の平均賃上げ要求を行う考えで、08春闘より2,000円高い水準となっている。

河野会長はあいさつで、「内需拡大の一翼を担うことが労働組合の役割だ」と強調。「生活必需品を中心とする物価上昇は生活を直撃していることから、生活防衛のための賃金引き上げを要求根拠として確認したい」として、物価上昇分をベア要求することへの理解を求めた。

月45時間超と休日割増率を50%に

このほか、一時金要求は年間5カ月(または半期2.5カ月)基準とともに、最低到達基準として年間4カ月を提示。労働時間に関する取り組みでは、月45時間を超える所定外労働時間に対する残業代割増率を50%に、すべての休日割増率を50%以上に、それぞれ引き上げることを重点課題にし、残業代割増率に関しては、5日に成立した労働基準法改正法案で月60時間を超える時間外労働の割増率を50%に引き上げることとしているが、中小企業は当面、適用を猶予される。この点について河野会長は、 (1) 最低基準を定める労基法のダブルスタンダードはあり得ない (2) 適用除外にしてしまうと企業の体質改善のためのさまざまな体質改善が遅れる――ことを理由に「断固反対だ」と主張した。09春闘でのJAMの割増率要求は、中小企業への早期適用をめざす取り組みとなる。

要求根拠が物価上昇分だけでは困難

一方、討論では、厳しい交渉が予想されるなかでのベア要求について「物価分だけで4,500円の要求は、鎧を着ないで刀だけ持って闘ってこいという厳しい交渉になる。また、『今後、物価が下がったら返してくれよ』という論理的な危なさも秘めている」「あれもこれも(要求するの)ではなく、今回はベア以外は目をつぶるという整理の仕方も必要ではないか」「温度差や情勢の捉え方に変化があるなかで、従来のような足し算だけの要求の組み立てではなく引き算があってもいいのでは」などの意見が出された。

また、製造現場の急激な減産に伴う派遣や期間工など非正規労働者の雇い止めが相次いでいる問題に関連して「自分たちの権利だけを振りかざして4,500円という金額を出すことが本当に正しいのか疑問に思わざるを得ない」「ある単組で、残念ながら職場を去る非正規に面談し、生産が回復基調になった時に連絡すれば改めて来てくれるかを聞く個人面談をしている。労働組合としてできることを発信していくことで社会的責任を果たす状況をつくっていくべき」「生産現場の取り組みでは、仕事量の確保をターゲットに政策制度要求を考え、失業率を上げないようにすべき」などの声も上がった。