8年ぶりにベア要求、物価上昇に見合う賃上げを/連合

(調査・解析部)

[労使]

連合(高木剛会長)は2日、都内で中央委員会を開き、「09年春季生活闘争方針」を決めた。2008年度の物価上昇率を1%台半ばと想定したうえで「物価上昇に見合うベアによって、勤労者の実質生活を維持・確保する」などとしている。

闘争方針は、物価上昇による実質賃金の目減り分を補填するベア要求の目安となる2008年度の消費者物価の見通しを、1%台半ばと想定。「賃金カーブ分を維持したうえで、物価上昇(2008年度の見通し)に見合うベアによって、勤労者の実質生活を維持・確保することを基本とし、マクロ経済の回復と内需拡大につながる労働側への成果配分の実現をめざす」ことなどを明記。さらに、賃金水準(絶対額)重視の考えから、産業や企業間の基本賃金の水準が比較できる指標(高卒35歳標準労働者)を策定することで、産業・企業間格差是正の目安を示している。連合が統一的なベア要求を掲げるのは8年ぶりとなる。

中小組合やパート労働者の目安も提示

中小・地場組合の賃金改善については、賃金カーブの算定が困難な組合の賃上げ要求目安を「9,000円以上(賃金カーブ維持分4,500円を含む)」に設定。パートタイム労働者等の待遇改善に関しては、地域最低賃金の引き上げや物価上昇、正社員との格差是正などを勘案して、 (1) 絶対額1,000円程度 (2) (埼玉県で時間給920円などとしている)連合リビングウェイジの水準を上回る (3) 時間額30円程度の引き上げ(定期昇給込み)――のいずれかに取り組むことを提示した。さらに、09春闘からは「昇給ルールの明確化」や「一時金の支給」も求めていく。

このほか、すべての組合が取り組むべき課題(ミニマム運動課題)として、企業内最低賃金の協定の締結や総実労働時間の短縮、時間外・休日労働の割増率の引き上げなども示している。

労働側への分配不足は明らか

高木会長はあいさつで「経営側は『賃金より雇用』『非正規雇用のカットもやむなし』といったニュアンスの発言に傾斜し始めているが、データを客観的に見る限り、『労働』への分配不足は明々白々で所得格差も拡大を続けている」などと指摘。「賃上げこそ景気対策の第一の柱だという認識を共有し合い、労働運動の連帯の絆を強めるなかで、分配率を高め、経済を改善していこう」と訴えた。

また、討議でも、「消費者物価指数は、食品やエネルギー価格などの生活必需品に関係する基礎的支出項目が2008年10月時点で2.9%の上昇となっており、実質生活に与える影響は極めて深刻。賃金改善の必要性は論を待たない。連合方針に沿う要求を策定し、産別としての役割を果たしていく」(電機連合)、「足下の業績は非常に厳しいが、この間の物価上昇で生活は厳しくなっている。生活水準の維持・向上をめざして、実質賃金の確保に向けて、しっかりと要求を掲げていきたい」(サービス・流通連合)、「09春闘は、連合や産別の構えが単組交渉への支えにならねばならない。社会的分配のあり方に労働組合として積極的に関与していく」(JAM)などの積極的な意見が目立った。

なお、連合は中央委員会終了後、第一回拡大戦術委員会を開き、回答引き出しの最大のヤマ場を3月17~19日とすることなどを確認した。12月24日の中央闘争委員会で正式決定する。