収益構造の転換を踏まえた向こう2年間の運動方針を決定/NTT労組大会

(調査・解析部)

[労使]

NTT東・西やドコモ、データなどNTTグループの労組で構成するNTT労働組合(約18万人)は8~9日、都内で定期大会を開き、「新中期経営計画」を軸に2010年以降の運動・組織のあり方を展望した08~09年度の運動方針と新役員体制を決めた。

NTT労組に改称後、10年間の運動を総括

99年のNTT再編成を機に全電通から改称した、NTT労組の結成から10年というふし目に当たる大会であいさつした森嶋正治委員長は、この間の経営環境の変化について、「固定電話の大幅な縮減の反面、携帯電話とインターネットが爆発的に普及するなか、政府の規制環境が時代変化への対応を阻害し、とりわけNTT東・西を中心に、事業の大転換を図らなければ、収益構造の抜本的な改善は望めないところまで追い込まれた。当然の帰結として、NTT労組には雇用か労働条件かの極めて厳しい選択が求められ、苦渋の選択の結果、いわゆる退職・再雇用制度など構造改革を受け入れ今日に至っている。この間、まさに試練の連続だった」などと総括。

そのうえで、「今これら苦難を乗り越え、新しい時代を迎えようとしている。事業の反転・攻勢を掲げた中期経営計画(04年)の実現に取り組んだ結果、3月からNGN(次世代ネットワーク)商用サービスが開始され、また、2011年には光サービスの黒字化を打ち出すところまできた。いよいよ本格的な光・IP時代に突入するわけだが、政府は2010年にNTTの経営形態を検討するとしており、今度こそ周回遅れの規制政策で、日本の情報通信の発展が阻害されないようにしなければならない」などと強調した。

新中期経営計画に基づき、2010年以降を展望した運動方針を策定

大会では、今後の雇用の安定と労働条件の維持・向上のためには、持株会社が5月に発表した「サービス創造グループを目指して」(新中期経営計画)における、 (1) レガシー系中心からIP系、ソリューション・新分野等中心への収益構造の転換 (2) 2011年度の光サービス収支の黒字化――などが必須であるとの認識のもと、 (1) 情報通信政策への対応と新中期経営戦略の達成 (2) 労働条件諸課題に対する取り組み (3) 中・長期を展望した組織運営体制の確立 (4) 非正規労働者の課題への取り組み (5) 働く仲間づくり (6) 政治活動の推進――を重点とする向こう2年間の運動方針を決定した。

政策面では、2010年の国会上程をめざしている「新情報通信法案」(仮称)や、中期経営戦略の動向等を見極めつつ2010年時点での検討が予想される組織問題への対応を強化。また、経営側に提起していた人事・賃金制度の改善について、 (1) 多段階の資格等級構成に起因する課題への対処 (2) 評価に対する納得性の向上 (3) 制度設計における各社のカスタマイズ範囲の拡大 (4) 65歳までの雇用をトータルで捉えた制度等の検討――に着手する必要があるとの認識で一致したことから、大会以降、本格的な論議に入る。

組織体制面では、組織人員の減少による繰越金依存の支出超過から転換するため、27支部体制から18総支部体制へ移行することや、増加する60歳超え組合員※1、非正規労働組合員※2 に対応した組織運営のあり方を検討する。さらに、昨年初めて実施した「非正規労働者の意識実態調査」で、「労組は非正規の悩みや課題を十分把握していると思わない」との回答が半数超にのぼったことなどを受け、対話活動の展開や相談窓口の設置等に取り組む方針だ。

委員長に加藤氏、事務局長に野田氏を選出

このほか、大会では三役を一新。委員長に、加藤友康・元東日本本部執行委員長(56歳、東京)、事務局長に野田三七生・元情報労連中央本部書記長(47歳、熊本)――などを選出した。

※1 ピーク時約2.5万人に達する予想。

※2 パート・有期契約約3.5万人、派遣約5.5万人の計約9万人にのぼる非正規のうち、これまでに約2,000人を組織化済み。今後は、派遣元がNTT労組に対応する企業に所属する、派遣労働者の組織化にも着手する。