来春闘に向けた議論をスタート/電機連合定期大会

(調査・解析部)

[労使]

電機メーカーなどの労働組合で構成する電機連合(中村正武委員長、64万4,000人)は7月3,4の両日、大阪市で定期大会を開き、向こう二年間の運動方針を決めた。大会では、来春闘に向けた対応について議論したほか、「第6次賃金政策」(草案)などの議案も確認した。

物価上昇分と賃金改善の二兎を追う春闘に

冒頭、中村委員長は08春闘について、「連合方針である『昨年を上回る賃金改善の実現』を満たすとともに、中闘組合(大手組合)の大半で改善額のすべてが水準の引き上げとなった。このことにより、後に続く多くの組合で水準改善額を中心とする賃金改善を引き出すことにつながった」と一定の評価をしたうえで、来春闘は、「今後の経済情勢や企業業績、生活実態などの取り巻く諸情勢を踏まえ、連合や金属労協(JC)の方針に基づき、組織内論議を始めていきたい」と述べた。

来賓として出席した連合の高木剛会長は、「ここに来て物価がかなり上がってきている。来年は2%近い物価上昇率が想定される環境があるなかで(春闘を)どうするか」と指摘。「まだ議論の途中で私見だ」と前置きしつつ、「生活は守っていかねばならない。物価高など(の生活面)と賃金改善の二兎を追いかけざるを得ない要求・交渉になるのではないか」と述べ、実質賃金の維持・向上をめざす考えを表明した。

実質賃金の維持・向上をめぐって論議

討論でも、来春闘での実質賃金の維持・向上に関する意見が相次いだ。富士通労組は、「久方ぶりに物価上昇率を背景とした賃金改善の取り組みになる可能性がある。物価が上がるとなると労働分配率以前の問題として取り組まなければいけない。きっちり取り組むことが労働組合の使命だ」と発言。日立グループ連合も、「どうしても気になるのは物価動向。家電製品以外はすべて値上げ基調で、今1.4%程度と見ている物価上昇率は、恐らくそれ以上になる」と指摘しつつ、「賃金要求の基本の第一は実質賃金の維持・向上にあり、このことは労働界共通の認識。相当厳しいのは明らかだが、統一闘争のさらなる強化に取り組むことが重要だ」と訴えた。

松下電器労連からも、「我々電機業界は原材料費の値上げを受け止めながら、出荷する最終製品は値下がりしており、極めて厳しい立場に置かれている。大変難しい環境での来年の闘争だが、しっかりした論理構築の下、組織内の論議を尽くした取り組みを行っていきたい」と語った。

総括答弁した中村委員長は、「物価の動向をどう捉えるかが極めて重要な課題になる。我々は実質賃金の維持・向上を図るのが基本的な考え方。物価の動向は連合の三役会議、さらにはJC内でも論議を始めている。論議を踏まえ、電機の考え方を発言していく」との姿勢を表明。他方で電機産業の業績動向にも触れ、「大手中闘企業の来年3月期の業績見通しは微増収・微増益にとどまる見通し。これがどう変化するかも十分踏まえたうえで要求立案していく必要がある」と述べた。

第6次賃金政策で新たな目標水準を設定へ

また、今大会では、「第6次賃金政策」(草案)を確認した。新しい賃金政策は、基幹労働者(30歳相当の開発・設計職)について定めている産別目標水準(月額31万円)を新たに設定。そのうえで、 (1) 現行の賃金水準がそれを上回っている場合は、各組合の自主的な対応を基本とする (2) ただし、物価上昇や可処分所得低下など必要な場合は全組合が統一した取り組みを行う――ことなどを掲げている。今後、組織内討議を経て、来年の大会で正式決定する予定。

なお、大会では、派遣・請負労働者の労働条件の改善と組織化に本格的に取り組むことも決めた。電機連合によれば、電機産業で働く派遣・請負労働者は52万人を数えるが、組織化は遅れている。そこで、本部に「派遣・請負問題プロジェクト」を設置。「複数の担当部署にまたがる課題にもワンストップで対応する体制を整える」(泉田和洋書記長)考えだ。