来春闘はベアの検討を/JAM中央委員会

(調査・解析部)

[労使]

中堅・中小の金属機械メーカーを多く組織するJAM(河野和治会長、38万7,000人)は5月30日、都内で中央委員会を開き、「2008年春季生活闘争総括」を確認した。連合の進める賃金改善の取り組みが、「中小の健闘に牽引され、全体として一定の底上げを図れた」などと評価。この流れを「今後も継続していく必要がある」としつつ、「実質賃金を確保する観点からのベアを検討する」との考えも示している。

共闘が定着・前進

総括は、「3年目となった賃金改善の取り組みでは、とりわけ中小の健闘に牽引され、全体として一定の底上げを図ることができた」と一定の評価をしながらも、「これまでの成果は内需の縮小を食い止める程度に止まっており、内需拡大は今後もめざすべき大きな課題だ」とした。そのうえで、連合の有志共闘や金属労協の中堅・中小共闘を、「運動の定着と拡充が一歩前進した。JAMも登録組合を昨年より増やし、影響力を発揮することができた」と総括している。

共闘の前進に関しては、河野会長もあいさつで「5年目を迎えた連合中小共闘は昨年実績を上回る成果を残したし、2年目となる有志共闘やJC中堅・中小共闘も前年より参加組合を増やして、運動の定着と前進をはかることができた」と強調。今後については、「中小や内需型産業においても、自分たちの賃金は自分たちで要求し、交渉し、決定していくという運動スタイルが浸透しつつある。こうした労働界全体を視野に入れた共闘を一層発展させ、そのなかでJAMが主導的役割を果たしていくことが重要だ」としている。

賃金実態の把握に基づく要求を

JAMがまとめた4月末段階の妥結額をみると、全体平均5,092円で、同一単組の前年同時期比50円増となった。これを組合規模別にみると、300人未満が前年同期比54円増、300~499人規模が同127円増など、1,000人未満規模では全体平均を上回っている。また、今春闘では、1,000人未満の組合の妥結額が3月後半なっても下がらなかった。

こうした特徴について河野会長は、「注目すべきは、3月最終週を迎える段階で、妥結金額の下降に歯止めが掛かり、昨年実績を上回って推移するようになったことだ」と指摘。「中堅・中小、とりわけ100人未満の単組の粘り強い交渉による追い上げが、JAM全体の相場を押し上げた結果」であり、「賃金実態の把握に基づく要求を行った場合とそうでない場合とでは、交渉結果に際が生じている」として、「中小では経営分析や賃金実態の分析を十分に行い、経営に対する提言活動の一環として賃金改善に取り組むことの重要性が改めて示された」と分析した。

実質賃金確保の観点からベアを検討

一方、来春闘に向けた課題について総括は、人材不足が企業の重要課題になっているなか、「企業の人材確保への対応が問われる状況が急速に広がりつつある」として、「人への投資」の観点からの賃金改善の継続の必要性を指摘。要求を組み立てる際には、「賃金実態の分析に労組が積極的に関わり、経営に対する提言能力の一端としていくことが重要」などと訴えている。

さらに、消費者物価の上昇が予想されるなか、「実質賃金を確保する観点からのベアを検討していく必要がある」と強調。今後、機械金属産業で働く労働者のめざすべき賃金水準の目標設定についても、金属労協などとの連携を進めていく考えだ。

時間外割増率の要求も継続

なお、時間外割増率の引き上げについては、JAM全体で349組合が要求し、4月末時点で43単組が具体的な前進回答を引き出した。総括は、「多くの組合が要求し、その過程を通じて、自らの労働時間の実態を見つめ直し、働き方や労働時間に対する意識を高めた。前進回答を引き出した単組の存在は、今後の取り組みに『弾み』をつけるものだ」などと評価。今春闘での交渉を通じて、「ワーク・ライフ・バランスに対する労使の共通認識は広がった」として、来春闘も継続して取り組む姿勢を明らかにしている。