今年の新入社員は「安定優先・きずな型」/日本能率協会調査

(2008年4月25日 調査・解析部)

[動向]

日本能率協会が23日に発表した「2008年度新入社員・会社や社会に対する意識調査」によると、今年の新入社員は上司や先輩との人間関係づくりに飲み会や社員旅行、運動会への参加が有効と考えている、ということが明らかになった。同協会では、「将来不安の高まりを反映してか、新入社員の意識は安定志向が進んでおり、それ故に上司や先輩と良好な関係を持ちたいと考えているのではないか」と分析している。

将来不安で就職すること自体を第一に

調査によると、「10年後の日本社会がより良い社会になっている」と考える新入社員は4割弱にとどまり、過半数が「なっていないと思う」と回答した。そんな将来不安を抱えて就職活動に臨む気持ちは、「気に入った会社や仕事に就けるかどうかより、就職することを最優先に考えた」が76.3%を占め、「気に入った会社・仕事に就けなければフリーターになる覚悟だった」(20.8%)、「できれば就職せずフリーターになりたかった」(1.6%)は少数派だった。

就職活動の姿勢をみても、「自分のやりたい仕事ができる業種・職種」を基準に会社を選んでいる人が多いものの、実際に入社を決めた理由は「雰囲気の良い会社」を選んだ人が最多だった。仕事の中味へのこだわりよりも、就職することを第一に考える傾向がうかがえる結果だ。

飲み会、社員旅行で人間関係の構築を

上司・先輩との人間関係構築に有効だと考えること(複数回答)は、「飲み会への参加」が約9割でダントツ。このほか、「社員旅行」、「昼食をともにする」、「運動会」が過半数を超えた。この問いは上司・先輩にも尋ねており、こちらも「飲み会への参加」や「昼食をともにする」「社員旅行」が上位なのは変わらないが、「運動会」は1割台にとどまった。

新入社員が仕事や職場の悩みを相談したい相手(3つまで選択)については、「社外の友人・知人」(56.4%)がもっとも多く、以下、「同僚」(54.0%)、「社内の先輩」(47.3%)、「家族」(42.8%)の順。他方、上司・先輩の回答をみると、「社内の先輩」(74.1%)がトップで、新入社員の回答を26.8ポイントも上回った。

実力主義を容認しつつも長期雇用を志向

一方、「転職・独立志向」の有無を尋ねると、就職した企業に「定年まで勤めたい」とする人が33.4%と一番多く、次いで「場合により転職したい」(27.3%)、「いずれは家庭に入りたい」(10.6%)、「いずれは転職したい」(9.3%)となっている。これを、「就職氷河期」といわれた2004年の調査と比較すると、当時は「場合により転職したい」(36.4%)、がもっとも多く、「定年まで勤めたい」(24.0%)、「いずれは転職したい」(12.6%)、いずれは独立したい」(8.9%)の順で多かった。「定年まで勤めたい」(9.4ポイント増)や「いずれは家庭に入りたい」(同5ポイント増)の増加が目に付く。

そこで、実力・成果主義と年功主義のどちらが魅力かを聞くと、前者が56.8%で後者は39.9%。会社の魅力を実力主義とする人は、ここ数年減少傾向にあったが、今年はやや増加に転じている。こうした結果について日本能率協会では、「企業内の実力主義を容認するものの、独立志向は減少傾向にある。就職した会社でキャリアを築いていきたい傾向がうかがえる」と話している。

調査は同協会の研修に参加した今春の新入社員とその上司・先輩を対象に実施。新入社員1,334人と、上司・先輩54人からの回答をまとめたもの。新入社員の男女比はほぼ7対3で、企業規模は半数近くが従業員規模300人未満だった。