「家計の改善という役割は不十分」/連合会長、08春闘大手回答受け

(調査・解析部)

[労使]

08春季生活闘争(春闘)は12日、自動車、電機、鉄鋼など金属関係のなど大手メーカー組合に一斉に回答が示され、同日、金属労協(IMF・JC)や連合が記者会見した。金属労協の加藤裕治議長は、06年から復活させた賃上げの流れを継続させることを重視してきたため、「少しでも上向かせたかった。賃金の部分ではこれを果たすことができた」と評価。一方、連合の高木剛会長は、多くの組合が前年並みとなったこともあり、「家計の改善という社会的役割に十分こたえられたかというと残念さを感じる」なとど語った。

この日経営側から示された賃上げ回答の中身をみると、前年並みか微増が大半で、ベースアップなど06年から復活した賃上げの流れ自体は確保したものの、最後まで「昨年以上」を目指した労働界にとっては厳しい結果となった。

同日正午、記者会見に臨んだ加藤議長は今季交渉の特徴について、「労使とも企業と家計の両輪で内需中心の成長に切り替える必要があるという総論では一致していた」と振り返りつつ、「年明け以降の株の下落、円高などにより交渉が難航した」と分析。こうしたなか、3年連続して賃金改善の流れを形成できたことについては一定の評価を下した。もう一つの柱に掲げていた長時間労働の是正に向けた時間外割増率の引き上げについては、鉄鋼と機械・金属関係の組合の一部で休日割増率の引き上げあったものの、大半が継続協議となったことを踏まえ、「息の長い課題ということで今後につなぐことができた」などと総括した。

連合の高木会長は金属労協関係の回答を受けて、同日夕に会見。「株安や円高が交渉を詰める時期に急激に進み、経営側の対応がここ10日から1週間で急激に厳しくなった。こうしたなか、組合は懸命な努力をし、多くの組合で昨年を上回る賃金改善を獲得したことについてはその頑張りを評価したい。3年連続して賃金改善に応じさせることができたことは評価いただけるのではないか」との見解を示したうえで、大半の組合が昨年並みか一部で下回る結果に終わったことから、「国民の期待は非常に大きかったが、昨年を大きく上回ることができず残念」との感想を述べた。一方、経営側の対応について「厳しい経営環境下ということは理解しても、もう少し大局的に判断してほしかった」と批判した。

また、連合内の16産別で共闘組織を立ち上げ取り組んだ時間外割増率については、具体的な回答を引き出した基幹労連(鉄鋼部門)やJAMの一部の組合に対して「頑張ったと評価したい」としつつも、大半が継続協議となったことから、今後どのように合意していくかなど共闘内で相談していきたいと語った。

また、パートなど非正規雇用の処遇改善については、昨年より100以上取り組む組合が増加していることから、「企業内最低賃金協定の引き上げが拡大しており、その効果が波及することを期待したい」と述べ、息の長い問題としてより多くの組合の関与が必要だとした。