ベア要求見送りを正式決定/NTT労組中央委

(調査・解析部)

[労使]

NTT東西やドコモ、データなど8グループ企業別本部等で構成する単一労働組合で、日本郵政グループ労組に次ぐ民間第二の規模のNTT労働組合(約18万人)は13日、東京・江戸川区で中央委員会を開き、2008春闘はベア要求を見送る方針を正式に決めた。森嶋正治委員長は挨拶の中で、「本来なら他産別と肩を並べ、月例賃金の改善を要求すべきだが、NTTグループはいま、それを許さない極めて厳しい経営状況にある」などと述べ、組合員に理解を求めた。

将来に夢を託す選択をせざるを得ない

挨拶した森嶋委員長は、ベア要求を見送る今春闘方針の考え方について、「とりわけNTT東・西の極めて厳しい財務状況、さらには情報通信政策の動向、07春闘における交渉の経緯(7年ぶりに統一賃上げ要求(組合員一人平均2,000円相当)を掲げ平均500円で妥結)――を踏まえれば、月例賃金の要求は見送らざるを得ないと判断した」などと説明。

その上で、「苦しくとも今は、取り組んでいる事業戦略を着実に実践することにより、将来に夢を託す選択をせざるを得ない。私たちは当面、『労働条件をトータルで捉え改善することで、組合員の生活向上をめざす』考えのもと、優先的に取り組まなければならない課題に集中することで、労組の社会的役割を果たすこととしたい」などと述べ、NGN(次世代ネットワーク)商用サービスを反転攻勢の起爆剤とした収益改善を展望しつつ、当面は労働条件トータルの改善を重視せざるを得ないとの見方を明らかにした。

森嶋委員長はまた、コスト構造改革のため、50歳退職・再雇用制度を導入して6年間を振り返り、「経営側の『反転攻勢をかける』等の明言に組合側も懸命に応えてきたが、その成果は具体的な見返りを得られるに至っておらず、モチベーションも決して高まっていると言えない」などと指摘。その上で、「今春闘をスタートに、中・長期的な視点に立って処遇制度の改善に向けた検討を行うよう会社側に要請し、取り得る最善のものを見出してゆきたい」などと述べ、制度改定を求めてゆく方針も明らかにした。

時間外共闘には参加

中央委員会では、今春闘方針として、特別手当の昨年要求水準を目安にした獲得をめざすほか、(1)60歳超え雇用制度の充実(2)非正規労働者の処遇改善(3)最低賃金協定の締結(4)時間外割増率の改善――等に取り組むことを決めた。

このうち、非正規労働者の処遇改善については、正規社員がベア要求を見送らざるを得ないため、非正規社員の時給改善要求も見送る一方、年俸制・月給制の組合員を中心に「特別手当の制度化」や「通勤費の実費補償」を統一要求に据える。

最低賃金協定については、情報労連が要求する「労連地域最賃」(全従業員対象、法定最賃+10%を基本)等の締結に取り組み、全体的な底上げをめざす。

また、時間外労働等の割増率については、NTTグループはすでに法定を上回る時間外135%、休日145%の現状にあるが、今春闘ではさらに、時間外を月45時間以下135%(現行通り)、月45時間超150%(新たに設定)、休日を150%(現行+5%)――へ引き上げるよう求める。ベア要求は見送るが、時間外割増共闘への参加で連合春闘の一翼を担うほか、光IP化の顧客ニーズを受け休日出勤等が増えている組合員ニーズも反映した格好だ。