2,000円以上の水準引き上げを要求/電機連合

(調査・解析部)

[労使]

電機メーカーなどの労組でつくる電機連合(中村正武委員長、64万人)は24,25の両日、横浜市で中央委員会を開き、「2008総合労働条件改善闘争方針」を決めた。賃金はホワイトカラー層の「開発・設計職基幹労働者(30歳相当)」の水準を2,000円以上引き上げるよう求める。時間外手当の割増率についても、1カ月の残業が40時間を超える場合に50%以上とするなどの水準向上を要求する。

「開発・設計職」を統一要求基準に

電機連合は、07年春闘から「職種基準による個別賃金要求方式(職種別賃金要求方式)」に移行した。具体的には、ストライキなどの闘争行動の対象となる統一要求基準について、代表的職種として30歳に相当する「開発・設計職基幹労働者」と35歳相当の「製品組立職基幹労働者」の2つの銘柄を設定。加盟組合がいずれかを選択して現行水準をエントリーしたうえで、水準の引き上げを追求する形だった。

それを08年春闘では、統一要求基準から「製品組立職」を外し、「開発・設計職」に一本化して、2,000円以上の水準の改善を求めることとした。昨年同様、月額31万円の「めざすべき水準」も設定して取り組む。銘柄を統一した理由について中村委員長は、「開発・設計職は、グローバル化が進展するなかで、高付加価値を生む人材群の要の職種であり、企業にとっても優秀な人材を確保するための人材戦略面で重要な位置づけにある」と説明した。なお、「製品組立職」についても、2,000円以上の水準引き上げを求めるが、闘争行動の対象としない統一目標基準とする。

ワーク・ライフ・バランスの観点で割増率アップを要求

一方、長時間労働の解消やワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、時間外手当の割増率についても統一目標基準として盛り込んだ。時間外割増率の改善要求は15年ぶり。内容は、(1)1カ月40時間までの残業は30%以上(2)1カ月40時間を超える残業は50%以上(3)休日割増率は50%以上(4)深夜割増率は30%以上――を求める。現行の水準が、月40時間超30%、休日45%など比較的高いことから、「1カ月の残業時間が45時間を超えた場合に50%以上」などとする連合要求よりやや高いレベルに設定している。これについて中村委員長は「ワーク・ライフ・バランス実現の大前提となる長時間労働の是正の有効な施策の一つとして時間外割増率の引き上げを求める。このことで、経営者が労働時間管理や時間外労働の抑制に真摯に取り組むことにつながる。企業にとってコストとしてではなく、明日への投資として積極的に捉えることが肝要だ」などと主張した。なお、中村委員長は連合が立ち上げた「割増共闘」の代表を務めている。電機連合は賃上げとともに割増率の取り組みでも牽引役を担うことになりそうだ。

このほか、一時金は昨年同様、年間5カ月分を中心に要求。18歳最低賃金については、統一要求基準として1,500円引き上げて15万2,500円の実現を求める。

なお、闘い方では、これまで17組合で構成してきた「中闘組合」を見直し、岩通とC&D労協を除く15組合とする。

柔軟な対応で統一闘争の発展を

論議では、賃金要求について、統一闘争の進化・発展を求める意見が相次いだ。電機連合は07年春闘でも2,000円以上の水準改善を要求したものの交渉が難航。回答日の2日前に、スト回避基準を「水準改善500円」にしたうえで賃金制度の補正などの「賃金体系是正分等」で上積みを図る戦術に切り替えた。目標水準を上回る単組に限っては、回答のすべてが「賃金体系是正分等」の配分でも了承することとし、闘争戦術も残業と休日出勤の無期限拒否で対応した。こうした流れについて、「07闘争を振り返ると、ストの設定など従来の枠を超えた幅のある戦術を組み込んだ時代にマッチした判断だった。08春闘もこの戦術を有効活用すべきだ」(日立グループ連合)、「要求方式(の一本化)は大きな前進だが、従来から開発・設計職を選択している側からは大きく変わったとの意識は希薄だ。(31万円の)目標水準を超えている立場からすると、進化のスピードを上げて欲しい」(松下電器労連)、「07闘争では、スト設定などの柔軟な対応を行い、新たな息吹が実感できた。この潮流を後退させず、より発展させよう」(三菱電機)などの声があがった。

時間外割増率に関しては、「割増率は単組交渉で展望が描けない。経営側も自力で判断できないことが予想され、最終的にゼロ回答の危険もある。(連合の)割増共闘と産別交渉、単組交渉の連携など相当な努力が必要だ」(日立グループ連合)、「要求して何も取れないというわけにはいかない。どう進展させていくか。賃金と違う難しさがある」(NEC労連)などの意見が出た。

今後、各労組は2月14日までに会社側に要求書を提出。3月12日の集中回答日に向けて交渉を展開する。