昨年に続きベア1%以上を要求、JSDとの組織統合は断念へ/UIゼンセン

(調査・解析部)

[労使]

繊維や化学、流通など幅広い産業の労組で構成する民間最大産別であるUIゼンセン同盟(落合着四会長、約100万人)は24日、千葉市幕張で中央委員会を開き、今季交渉に向けた賃上げの統一要求基準を、昨年と同じ「賃金体系(カーブ)維持分プラス組合員一人平均1%または2,500円」などとする08労働条件闘争の方針を決定した。落合会長は挨拶で、「可処分所得が下がり続けている現実に怒りを持つところから出発しなければならない。少々業績が思わしくない組合も果敢に取り組んでいただきたい」などと訴えた。

昨年上回る成果をめざす

中央委員会では、08統一賃闘の考え方として、昨年に続き可処分所得の改善を図る観点から、「制度に基づく昇給昇格(賃金体系維持分)とは別に1%または2,500円」あるいは「賃金体系維持分の社会的水準を含めて7,000円以上」――を賃上げ要求の基調に設定。その上で、業種別に「腹に落ちる要求を創り上げ、腹を据えた交渉を行う」ため、具体的な要求基準は昨年同様、繊維、化学、流通、フード・サービス、生活産業、地方――の6部会ごとに設定する。

流通部会では、 (1) 社会水準相当分の定昇を確保している組合の場合は標準グループで1.5%基準(または3,000円基準)、上位水準グループで1.0%以上(または2,500円以上)、水準未達グループで1.5%以上(または3,000円以上) (2) 確保されていない場合はそれぞれ3.5%基準(または8,000円基準)、3.0%以上(または7,500円以上)、3.5%以上(または8,000円以上)――といった具合だ。

闘い方は、昨年同様にスト権の確立、時間外労働の拒否(三六協定の破棄あるいは三六協定の新たな締結の拒否)――等を背景に交渉を展開する。また、昨年に引き続き自動車、電機といった交渉リード役の動向に左右されず主体的な相場形成をめざす連合の「有志共闘」に参加。 (1) JC回答(集中回答日3月12日)を横にらみしつつ3月12~13日に回答を引き出すリード組 (2) その結果を見ながら交渉し3月18日までに回答を引き出す追随組 (3) 以上の動向をふまえて3月末までに全組合が妥結する――という梯団方式をとって、昨年を上回る賃上げをめざす。

4割を占める短時間組合員も正社員に準じて要求

組合員の約4割を占めるパート等の非正規雇用の「短時間組合員」の要求基準については、昇給・昇格制度がある場合は「1%以上の賃金改善」、同制度がない場合は、正社員の平均的な賃上げ要求率に準じつつ均衡を考慮して、タイプA(正社員と職務も人材活用の仕組み・運用も同じ)は30~40円目安、タイプB(正社員と職務は同じだが人材活用の仕組み・運用が違う)は3%または25円目安、タイプC(正社員とは職務も人材活用の仕組み・運用も違う)は主旨を踏まえて要求額を決定――などとした。

パート等非正規雇用の賃金をめぐっては、昨秋に地域別最低賃金が大幅に引き上げられ、労働力需給の逼迫から採用時給が上昇していることもあり、短時間組合員の賃上げは、昨年賃闘後の通年的な上昇分をすべて集計し、今春の回答に含めて公表する。

時短闘争は賃金交渉とは別立てで

UIゼンセン同盟は連合の時間外割増率共闘に参加する予定だが、労働時間短縮に関連する統一交渉は、賃金など春に実施する労働条件交渉とは別立てで行うことも決めた。昨年の定期大会で、「2012年までの年間総実労働時間1,800時間の実現」などを盛り込んだ労働政策を決定しており、これを踏まえ、09年度末までの当面の最低到達目標として、 (1) 年間所定労働時間を2,000時間未満とする(最低でも年間40時間以上の短縮を要求する) (2) 時間外労働等割増率が法定水準にとどまる組合をなくす(週40時間内でも所定労働時間を超えた分から時間外35%、休日45%、深夜35%へ)――などとし、今春の賃上げ要求とは切り離して(労働協約改定に絡む要求として)設定、一斉に取り組んでいく方針を決めた。

UIゼンセン同盟の調査によると、年間所定労働時間の実態は2,000時間以上の組合が流通で72%、フード・サービスで46%となっており、時間外労働の割増率も、大半の組合で法定に張り付いている。中央委では「なぜ今、あえて別立てで統一闘争しなければならないのか。成果を獲得できる自信はあるのか」(日清紡)――などと戦術を疑問視する声も出た。議案は賛成多数で可決されたものの、要求書の提出時期、解決目標といった具体的な闘い方については、今後、部会ごとに意見を集約しながら進めることを確認した。

JSDとの産別再編統合は断念へ

中央委員会ではまた、百貨店、スーパー等を組織するサービス・流通連合(JSD、20万人)と2年越しで進めてきた統合協議を断念することも確認した。昨年の大会では統合スケジュールを1年先送りしたものの、08年秋には準備段階へ移行することを確認していた。落合会長は挨拶の中で、「運動理念、組織運営、統一闘争、政治活動等のあり方についてはおおむね合意形成できたが、名称と会費水準については合意に至らなかった。責任者として深く反省している」――と述べた。

中央委員会では、UIゼンセン同盟とJSDが昨年12末に交わした、「両組織は今後とも友好関係を維持・発展させる。そのため、定期的な組織間交流と政策協議の実施も具体的に検討する」「産別再編統合協議を再開する場合は、改めて両組織間の合意形成の上で再開する」――などとする共同文書のほか、『新産別の姿』と題する新組織構想を含む、産別再編統合の考え方が報告された。