時間外労働削減に向け「割増率共闘」立ち上げ/連合08春季生活闘争方針

(調査・解析部)

[労使]

連合(高木剛会長、650万人)は4日、都内で中央委員会を開き、賃上げ要求について「賃金カーブ維持分を確保したうえで賃金改善に取り組む」ことを前提に、マクロ的には労働側に「実質1%以上の配分の実現」を求めるほか、労働時間短縮を進めるため、時間外割増率の引き上げを要求に盛り込む産別を中心に「割増率共闘」を立ち上げ、社会的な運動を展開することなどを決めた。また、向こう2年間の組織拡大の目標として、65万人を組織化し、700万組織回復を目指すことも確認した。

月例賃金を最優先、中小、パート等を含め全体底上げを

08春季生活闘争の基本スタンスとして、「社会的な分配のあり方に積極的に関与し、内需拡大などマクロ経済への影響力を発揮する」と強調する。賃上げについては、月例賃金を最優先しつつ、中小企業労働者の格差是正やパート等の非正規社員も重視し、「全体的な底上げを図る」との基本的な取り組みの枠組みを提示。中小共闘やパート共闘などを強化し、相乗効果が発揮できる闘争体制を構築する考えだ。

すべての組合が取り組むミニマム運動課題は、 (1) 賃金カーブを維持したうえで賃金改善に取り組む (2) パート労働者なども含めた全従業員を対象に賃金をはじめとする処遇改善に取り組む (3) 連合リビングウェイジ(誰にでも最低限の生活を保障できる賃金としての「生活保障水準」。到達目標は時間額850円、月額14万8,000円)の水準を踏まえた企業内最低賃金協定を締結する (4) 長すぎる労働時間を是正するため総実労働時間の短縮に取り組む (5) 時間外・休日労働の割増率の引き上げに取り組む──の5点を掲げた。

中小・地場組合の賃金改善については、賃上げ要求目安を、 (1) 賃金カーブの算定が可能な組合は2,500円以上(賃金改善分) (2) カーブ算定が困難な組合は賃金カーブ確保相当分4,500円(目安)+2,500以上(賃金改善分)に設定。要求目安は昨年から据え置いたが、格差是正の視点から、中小企業の労組も到達すべき絶対水準にこだわる交渉を強めるため、初めて年齢別の参考値として、25歳 18万5,000円、30歳 21万円、35歳 24万円、40歳 26万5,000円を示した。パートの待遇改善に向けた取り組み項目は、パート共闘会議で別途検討し、設定する。

高木連合会長はあいさつで「余りにも過度に個別企業の論理に傾斜した判断が続けば、日本のマクロによくない影響をあたえかねないこともある」「労働運動の社会的責任という観点を大切に、賃金等の相場形成、波及を高めるために共闘体制の強化を図り、構成組織と地方連合会のタテ・ヨコの連携を深めて08春季生活闘争を闘い抜きたい」との決意を表明し、個別交渉における組合の奮起を促した。

「割増率共闘」には15産別が参加

今年策定した「中期時短方針」に盛り込まれている時間外労働割増率の改定目標である時間外50%、休日100%(法定・時間外25%、休日35%)実現の第一歩として、方針では「各産別の参加によって共闘組織を立ち上げ、全体の合意によって運動を具体化し強力に取り組みを推進する」と明記した。

時間外割増率アップを要求項目に盛り込む予定の産別が11月29日に集まり、基本的な取り組み内容として、中期方針の50%、100%は目標として堅持した上で、来春交渉では、 (1) 月45時間未満の時間外の場合30% (2) 月45時間超の場合50% (3) 休日労働50%―を運動の中心に据えることを確認。共闘代表に中村正武電機連合会長を選んだ。年明けに第一回共闘会議を開催し、具体的な方針を提起する考えだ。冒頭のあいさつで高木会長は、「割増率引き上げの交渉は難しい交渉だが、労働の尊厳を回復する視点も含めて交渉して欲しい」と呼びかけた。現在共闘に参加の意志を表明しているのは15産別となっている。

2009年に「700万人連合」を目指す

中央委員会ではこの他、結成20周年を迎える09年秋までに「700万人連合」を回復するため、向う2年間で65万人の増加を目指す組織拡大目標を決めた。各構成組織は現行構成組織人員の10%増を目安とし、 (1) 加盟組合の関連企業の組織化 (2) パート・派遣・契約・請負労働者の組織化―を重点対策とする。65万人の内訳は、43産別から拡大目標の報告があった47万9,893人( (1) 未組織・未加盟組合で19万9,091人 (2) 加盟組合の関連企業で12万5,735人 (3) パートタイマー等で15万5,067人)と地方連合会独自手の拡大目標である14万2,747人に加え、連合本部が重点的に取り組むマスコミ、建設、食品、金融・商社などの拡大が目標2万人となっている。

高木会長は組合員の減少は下げ止まりつつあるものの、非正規労働者の増加など雇用者数が増えていることから、12年連続で低下している労働組合組織率(昨年18.2%)に、今年も歯止めをかけられなかったのではないかとの見通しを示した上で、「組織率低下による運動力の劣化を座視すれば日本の労働運動の近未来はどのようになるか心配でならない」などと述べ、組織拡大の運動強化を訴えた。