非正規労働者などの処遇改善に重点/連合定期大会

(調査・解析部)

[労使]

連合(高木剛会長、650万人)は11,12の両日、都内で定期大会を開き、中小・非正規労働者への支援の強化などを柱とする向こう 2年間の運動方針を決めた。高木会長はあいさつで、「非正規労働者の正規化や働き方のルールの適正化、非組合員の利益も踏まえて公正に交渉するという処遇改善にも力を尽くさなければならない」と強調した。

「連合運動のかなえの軽重が問われている」

今定期大会で確認した「2008~2009年度運動方針」は、 (1) 非正規労働者や中小零細企業で働く労働者への支援・連携の強化、組織化の推進 (2) 企業や経営者団体の社会的責任と、政治・行政の本来的機能の追求 (3) 「地域に根ざした顔の見える運動」のさらなる前進による、地域で信頼され頼りがいのある運動の構築――の3点を重点項目に設定。なかでも「中小・非正規労働者とも連帯する運動の再構築が急務だ」として、非正規労働者などへの支援・連帯のための専門部局「非正規労働センター」を設置する。

高木会長はあいさつで、これまでの非正規労働者や中小企業労働者への取り組みを、「中小の格差拡大の阻止やパートタイマー等の処遇改善にも力を尽くしたが、結果として目標を完全に果たすことができたとは言えない」などと総括。そのうえで、「非正規労働者の現状の改善に対する感度が鈍いと批判されている連合運動のかなえの軽重が問われている」と危機感を表明。「1,700万人を超える人たちが、パートタイマーや派遣、請負等の雇用形態で働き、その多くが総じて低所得という状況は、格差社会への懸念を強める最大要因であり、放置できないレベルに達している。非正規労働者問題を連合運動の柱の一つにすえ、『非正規労働センター』を設けて活動の一歩を踏み出していこう」と呼びかけた。

また、労働関係法制への対応についても触れ、「労働ビッグバンと称して働き方のルールなどの一層の規制緩和を求める動きがある」と懸念を示した。そのうえで、「労働は生身の人間の営みであり、人間としての尊厳、労働の尊厳を求めて先人が積み重ねてきた労働ルール形成の歴史などを想起し、(今の)市場原理主義的な労働ビッグバンの流れを粉砕しなければならない」と強調した。労働者派遣法の見直しも急務だとして、「日雇い派遣の禁止など検討を加えながら的確な対応をしていきたい」と述べた。

政策課題として労働3法を重視、「700万連合」復活も

最低賃金法案など労働3法案への対応について高木会長は、「最賃法改正案は、政府案と民主党案の調整のうえ一部修正して早期に成立を期す。労働契約法案についても、民主党案と政府案の調整協議を経て、政府案に加筆・修正を加え、できれば成立をはかる。時間外・休日割増率に関する労働基準法改正案は、最賃法案などの修正の動向も見守りながら対処していきたい」との考えを改めて表明した。

一方、来春闘の労働時間関連の取り組みとして、高木会長は時間外割増率が世界で最低水準にあるとして、「来年の春の交渉では、時間外・休日労働割増率の引き上げをめざし、一斉に交渉できないか」と提起。「何としても連合組織内の合意をはかり、割増率の改善を実現したい」と述べ、割増率の統一要求を掲げることに強い意欲を示した。

組織拡大に関しては、「推定組織率は18.2%で労働運動の死活ラインすれすれのところまで低下した認識を持たねばならない。700万人連合への復活を、この2年間で何としてもやり遂げたい」と構成組織に奮起を促した。

加盟組織も非正規・格差是正の取り組み強化を要請

方針討論では、非正規労働者の問題に関し、「派遣、請負、パート等の賃金の底上げを図ることについては、労働組合の責務として企業内最低賃金の締結と水準の引き上げに取り組んで行かねばならない」(JAM)、「これまで組織化の対象外だった非正規労働者が個人加盟できる新たな組織について検討を始めた。課題によっては、非正規労働センターと連携して取り組んでいきたい」(サービス・流通連合)、「全国産別統一要求として、3年勤続した非正規労働者の正規化の取り組みを決めた。非正規労働センターは、各産別の様々な取り組みを活かしながら、積み重ねの上での取り組みを考えて欲しい」(私鉄総連)などの意見が出た。また、格差問題については、「日本学生支援機構の奨学金制度の選考で10万人があぶれるなど、保護者の経済力で教育の機会均等が崩れている。雇用労働者の子どもたちが、その可能性を開花できる教育改革が必要だ」(日教組)などの声もあった。

なお、非正規労働センターは大会直後の15日から本部内に開設された。2年前に発足したパート共闘の事務局となるほか、インターネットを活用した労働者間のネットワークづくりや労働条件の底上げキャンペーン(誰でも時給1,000円など)の実施、さらに地方連合会と連携した労働相談活動などを展開する。

福田首相が来賓あいさつ、「ご指導、ご提案いただきたい」

大会には来賓として、福田首相、舛添厚生労働相、小沢民主党代表、福島社民党党首、亀井国民新党幹事長らが出席。福田首相は年金を含む社会保障、環境、雇用などの問題をあげ、「いま労働者に関するいろいろな問題が顕在化しており、連合のみなさんと協力して解決にあたらねばならない。高木会長の人柄にもすがっていきたい。みなさんにご指導とご提案をいただき、若者が希望を持って、労働者と高齢者が安心できる国にしたい」などと述べた。舛添厚労相も労働3法について「成立させたいので協力をお願いしたい」と述べた。

大会終了後の記者会見で高木会長は、連合に対して福田首相から協力を求められた発言について、「素直に受ける面ときわめてデンジャラスな面もあるので、応えられる面とそうでない面の筋を通して対応していく」と述べた。また、非正規の関係で今後大きな課題となる派遣労働法の改正をめぐって古賀伸明事務局長は、審議会での議論は尊重しつつも、民主党などを通じた「法案提出も視野に入れていくべきではないか」との見解を示した。

なお、役員改選があり、高木会長(64歳、UIゼンセン同盟出身)、古賀事務局長(55歳、電機連合出身)が再選された。