絶対水準重視の共闘を/金属労協定期大会

(調査・解析部)

[労使]

金属労協(IMF-JC、195万4,000人)の定期大会が4日、東京・日暮里で開かれ、昨年決めた向こう2年間の運動方針を補強するための2008年度活動方針を決めた。これまでの春闘で主流だった「賃金の上げ幅による相場形成」から軸足をより「絶対水準を重視した共闘」に移したい意向。ワーク・ライフ・バランス実現に向けた長時間労働の是正や、非典型労働者の処遇改善を図るための企業内最低賃金協定の締結促進にも力を入れる。

大会の冒頭挨拶した加藤裕治議長(自動車総連会長)は、春闘の取り組み方について、「JCは2度にわたる賃金政策で、格差拡大防止には賃金の上げ幅ではなく、絶対水準を重視した交渉が大切だと主張してきたが、連合の中ではこの考え方は浸透しなかった」などと振り返り、その上で、「多様化した雇用形態をカバーし、格差縮小をめざすには職種別賃金の導入が不可欠。絶対額水準によるおおくくり職種別賃金での賃金交渉は、今後の日本の春闘のあり方を提案するものだ」と強調。絶対水準に重きを置いた共闘を進める意向を表明した。

賃金水準の底上げと労働条件格差の解消を

活動方針は、この2年間の春闘の成果について、「他産業を含めて運動全体に『賃金改善』の流れを定着させ、ベアそのものを否定する相手側を交渉テーブルにつけさせることには有効に機能し、一定の交渉成果を引き出した」と評価する一方、「産別毎あるいは産別内においても回答内容に幅が出たことは、JC共闘に対しても改革課題を突きつけることになった」などと指摘。大手組合の回答を波及させる取り組みだけでなく、中堅・中小組合が賃金水準などを底上げすることで労働条件の格差解消に臨む共闘の確立を訴えている。

具体的には、07年春闘で初めて取り組んだ「中堅・中小労組登録組合」の情報開示の精度をあげ、賃金闘争の新たな共闘軸である「大くくり職種別賃金水準の形成」を前進させる。産業・業種別、企業規模別に設定した大くくりの職種別賃金について、その実態を把握。幅と絶対水準を産業・業種内における相対的な位置づけを判断するため、「比較指標」を示す考えだ。産別や企連、単組は要求策定や交渉時の参考指標として、このデータを活用することになる。

情報の共有で相乗効果の発揮を

大会の論議でも、「各産別の取り組み方やおかれている環境、今までの取り組み経緯に大きな違いがあるなかで、絶対水準を重視した共闘への改革には難しい課題があるが、大くくり職種別賃金の形成を進めていく上では避けて通れない課題だ」(電機連合)、「今年は連合の有志共闘、JCの中堅・中小登録組合、連合の中小共闘といったそれぞれのくくりのなかで情報が開示され、その後の中小における交渉の支援・相場波及について、その成果が確認された。しかし、その内容は必ずしも互いに共有できる情報にはなっていない。互いに共有できる情報の開示の実現ができるようにして欲しい」(JAM)、「賃金水準をはじめとする実態把握、提示をするなかで、金属産業全体の労働条件改善に向けた取り組み強化につながるような効果的な運動をお願いしたい」(全電線)など、より一層の情報開示と共有による相乗効果を求める意見が相次いだ。

07年春闘で、独自の指標提示ができなかった反省を踏まえ、「賃金がどういった実態なのかを拾い出し、(組合員が)自らの置かれた状況がどの程度にあるのか分かるようにしたい」(團野久茂事務局長)としている。

長時間労働の是正も検討

08年闘争ではもう一本の柱として、ワーク・ライフ・バランスを位置づけ、長時間労働の是正を前面に打ち出す。組織内の労働時間のデータを集計して実態把握に務めるとともに、所定労働時間の短縮や時間外割増率の引き上げなど、年間総実労働時間1,800時間に向けた取り組みを検討する。

この他、方針は非典型労働者への影響を念頭に置いた企業内最低賃金協定の推進や、若手人材確保に苦慮するものづくり現場とのマッチングを促す「若年者トライアル雇用制度」の拡充、外国人研修・技能実習制度の見直しなども掲げている。