「通年春闘」の路線を転換、来春は賃金目標を統一要求へ/JSD定期大会

(調査・解析部)

[労使]

百貨店やスーパーなどの組合でつくるサービス・流通連合(略称:JSD、桜田高明会長、20万6,000人)は19、20の両日、都内で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。方針では、小売・流通業界が他産業に比べて長時間労働のうえ、賃金水準も低位にとどまっている現状を踏まえ、03年から移行した通年春闘路線を転換し、08春闘では賃金の統一的な目標を設定した運動に切り替えるとしている。

賃金目標を設定し統一的運動へ

JSDは03年の春闘から、産別の統一要求から賃上げ要求基準を外し、総合的な労働条件についてミニマム重視で、個別組合が通年で交渉・協議する方式に移行していた。今大会では、こうした運動スタイルの転換を提起。その背景について方針は、「この5年余りで我々の産業と他産業の賃金格差が顕在化してきた。加盟組合の労使自治・自決の取り組みを補完・支援する対応が不充分で、賃金交渉に対する産別としての機能を希薄化させてしまった」などと反省。そのうえで、「改めて産別としての意思を持ち、社会との連帯のもと、その水準を引き上げる取り組みを運動の新たな軸に据えながら、『春の交渉』を見直す」としている。

今後は、「春の交渉」を、新たに加盟組合が一斉に要求・交渉し、結果を出す「統一的運動」に位置づける考えで、春と通年の交渉を両輪に取り組みを推進するとしている。統一的運動については、「産別として賃金水準の維持向上や加盟組合の交渉力強化に向けて、賃金の目標水準を提示する」とし、08年の「春の交渉」では例えば、 (1) 一人前賃金を想定し30歳(参考として25歳、35歳)の最低、中位、先行の目標額 (2) 職種別賃金としてマネジャー職、バイヤー職の最低、中位、先行の目標額 (3) 世帯別最賃については2人世帯、3人世帯、4人世帯の目標額――などを示す予定。また、臨時賃金は目標と到達の月数を示すほか、パートについては職務レベルや人材活用の仕組みなどを踏まえた区分に応じ、時間給に焦点をあてた目標設定を検討するとしている。

通年交渉については、引き続き (1) 均等・均衡待遇に向けた概念・基準整理と制度の協定化 (2) 育児短時間勤務制度の拡充 (3) 企業内最賃の協定化 (4) 労働者の健康と生活に配慮した労働時間に関する協定化――に取り組むとしており、とくに (4) はこのほど策定した「JSD労働時間取り組み方針」をベースに、取り組みの優先度を高める。

UIゼンセンとの再編統合スケジュールは一年延期

一方、大会では、UIゼンセン同盟と検討している再編統合について、当初予定していたスケジュールを、「全体的に1年延長する」ことも決めた。両組織の再編をめぐっては、すでに合意している「新組織結成方式」を前提に、今夏のそれぞれの大会で「新産別の姿」と「統合時期」を提示し、決議することをめざして検討を重ねてきた。だが、 (1) 組織機構と運営体制 (2) 財政(会費水準問題含む) (3) 政治活動のあり方 (4) 新組織の名称――といった事項を含む「新産別の姿」のほか、加盟組合での規約変更などの準備を考慮すると、現時点で具体的な統合時期を示すのは「極めて厳しい」と判断。予定していたスケジュールを全体的に1年先送りすることを決め、12月までに「新産別の姿」の最終案等を策定し、加盟組合に提示する方向を確認した。

桜田会長はあいさつの中で、「この産業に働く魅力をどう高められるかなど、労使を巻き込んだオール商業として克服すべき課題は多い。その意味でこの産業には労働組合は一つがいい。私たちが産業人の立場に立って、共通の課題認識が懸念を勝ることさえできれば、両組織間に立ちはだかる壁を越えることができるはず」などと述べ、産別再編統合の必要性を訴えた。

役員選挙では、会長に桜田高明氏、事務局長に八野正一氏をそれぞれ再任した。