賃金改善千円からゼロまで回答にばらつき/自動車大手の賃上げ交渉

(調査・解析部)

[労使]

自動車メーカー11社の労使交渉は14日に経営側から一斉に回答が示され、賃金改善分1,000円を回答したトヨタやダイハツから富士重工や日野のゼロ回答まで100円単位で回答がばらついた。一方、一時金については海外市場で業績好調な企業を中心に軒並み昨年を上回る水準で妥結した。

トヨタ1,000円、ホンダ900円、日産700円

自動車労使の賃金交渉は、競争力の確保に向けた職場のモチベーション向上などの面から賃上げを求める労働側に対して、賃上げによる「コスト」増は国際競争力の低下につながるなどとする経営側が真っ向から対立したまま回答日直前までもつれた。交渉リード役となったトヨタの労使協議でも経営側は、組合の昨年より500円増額し1,500円(賃金制度維持分込みで8,400円)とした賃上げ要求に対して、「きわめて困難」との姿勢を崩さなかった。しかし、3月8日の3回目の協議の中で、経営側から「そのまま答えることは困難」との発言があり、組合側はゼロ回答から脱したと判断。昨年妥結額の1,000円からの上積みを図ったが、最終的には昨年同額で決着した。しかし、一時金は組合要求どおりの5.0カ月プラス79万円(258万円)の満額回答を提示した。

カルロス・ゴーン社長の下で初めて営業減益となる日産は、昨年マイナスの300円の700円(平均賃金改定額6,700円)で妥結。一方、ホンダは前年比300円増の900円で妥結した。メーカー11社の賃上げ回答の内容をみると、昨年と同額がトヨタ、ダイハツなど3社、減額が日産、富士重工など4社、増額がホンダ、マツダなど4社となっており、内容もゼロ回答のほか有額回答の場合も500円から1,000円まで百円単位で異なるなど、ばらつきが目立つ回答となった。

業績反映は一時金で還元

固定費となる月例賃金の改定に最後まで難色を示した経営側だが、企業業績の反映については、一時金で還元する傾向がさらに強まった。06年の自動車産業の動向をみると国内市場は需要回復の基調にいたらないものの、主力の北米をはじめとする完成車の輸出は好調。各社とも高水準の生産が続いている。こうした動向を反映し、一時金については、メーカー組合11組合中6組合で、要求どおりの満額回答を得た。水準もトヨタ、日産、ホンダで6カ月を超えたほか、三菱自工、日野を除いてすべて5カ月以上の高水準で妥結した。

自動車総連は格差是正に期待

メーカーのほか部品、販売などの組合でつくる自動車総連は、同日談話を発表し、「昨年に引き続き賃金改善分を獲得したことは『賃金改善の流れ』を作り出すものとして、金属労協(IMF・JC)共闘の一翼を担いえたと確信する」などと評価。自動車総連全体でみるとメーカー11組合を含め全体で905組合が賃金改善の要求を行っている。その要求水準も昨年に比べて1.5%、140円程度上昇していることを踏まえ、メーカーとの格差是正を重視する同総連としては後続の組合の取り組みに期待を寄せている。今季、大手メーカーと並んで登録組合として取り組んだ曙ブレーキ労組は2,000円の賃上げ要求で臨み、トヨタを上回る1,100円の回答を引き出している。同総連によるとこのほか部品、販売など数多くの組合がトヨタ労組(1,500円)を上回る要求を提出しているという。