昨年上回る「賃金改善分」を要求/自動車総連中央委員会

(調査・解析部)

[労使]

自動車総連(加藤裕治会長、組合員数69万5,000人)は11日、名古屋市内で中央委員会を開き、今季交渉にのぞむ「2007年総合生活改善の取り組み方針」を確認した。要求基準に「賃金改善分を設定することを基本とする」と盛り込み、昨年以上に賃金のベースアップ(ベア)なども含めた賃金改善に取り組む姿勢を強く打ち出した。同方針を受け、傘下の大手自動車メーカー労組のほとんどが賃金改善分の要求に踏み切る見通しだ。

賃金改善に取り組む姿勢を強調

自動車総連の具体的な要求基準は、「平均賃金引き上げ」と「個別ポイント絶対水準要求」の並列方式による2本建て。平均賃上げでは、要求基準を「各組合は、経済指標の好転等を踏まえた水準向上や格差・体系是正に向け、賃金改善分を設定することを基本とする」と表記した。今回は、昨年方針に明記していた「賃金カーブ維持分を大前提とし」との文言はすでに定着したと判断して省き、産業情勢や物価上昇などのマクロ情勢を勘案した「水準向上」を強く打ち出した。賃金改善に取り組む姿勢を、一層強く滲ませたのが特徴だ。

ただし、賃金改善分の統一的な金額は示さず、要求設定は各単組の判断に委ねることにした。自動車総連は02年の交渉までは統一要求額を掲げていたが、その後は企業間の賃金格差の解消を重視して設定を見送っている。

一方、個別ポイント絶対水準要求では、「技能職中堅労働者(中堅技能職)」を共通の銘柄として、各単組が絶対額で要求する。水準については、牽引役のトヨタ、日産、ホンダのトップ3労組が目指すプレミア水準は36万6,000円、全組合が目指す目標基準は32万7,000円などと設定した。

月例賃金の改善で格差拡大に歯止めを

あいさつした加藤会長は「06年は個々の企業における組合員の働きぶりや成果などを中心とした要求根拠を掲げたが、07年はこれらに加えてマクロ情勢もプラスになっている。立ち後れた個人消費活性化に向けて、賃金引き上げの流れを主導する社会的役割を果たすべきだ」と強調。加盟労組に対し、昨年を上回る賃金改善要求に取り組むよう求めた。

企業が業績反映を一時金で行う傾向が強まっていることにも触れ、「非典型労働者には一時金はほとんどないと言っても良く、あっても僅か。そういう形での成果配分は、社会全体に配分がなされないことを意味する」と指摘。「月例賃金を重視して、上げる流れを作っていくことが配分構造の是正につながる」と述べ、月例賃金の改善で経済格差の拡大に歯止めをかけたい考えを示した。

また、加藤会長は中央委員会に先駆けた記者会見で、前年水準を500円上回る1,500円の賃金改善を要求する方針を固めたトヨタ自動車労組について、「執行部として腹固めした数字として聞いているが、昨年を上回る要求としてトヨタ労組として最大限考えていただいたものだと受けとめている」と評価した。

昨年の春闘では自動車総連全体で、914組合が賃金改善を要求し、426組合が獲得した。自動車総連では、「賃金改善分を要求する組合数を増やしていくこと大きな目標だ」(加藤会長)としている。大手メーカーは今月中に要求を決め、2月15日に一斉に要求を提出する。