全郵政とJPUが組織統合の検討へ/両大会で方針固める

(調査・解析部)

[労使]

来年10月の郵政民営化をひかえ、日本郵政公社内の競合組合である、「全日本郵政労働組合」(全郵政)と「日本郵政公社労働組合」(旧全逓、JPU)は6月14~16日、それぞれ定期大会を開き、両組織の統合を検討する協議に入る方針を固めた。

協議の場の設置を正式申し入れへ/全郵政

全郵政(宮下彰委員長、約8万3,000人)は、北海道・札幌市で開いた定期大会で、「大会後速やかにJPUに対し組織統合を協議する場の設置を正式に申し入れる」ことを含む、06・07年度運動方針を決定した。

組織統合の検討に当たっては、 (1) 生産性向上に寄与してきた全郵政の綱領を基本にする (2) 連合運動を基軸に左右の全体主義を排除し、自由で民主的な労組の発展をめざす (3) あくまで対等合併とする (4) JPUが自ら過去の運動総括を行うよう求める――ことを基本スタンスに、協議に臨み到達点については来年の大会で報告するとした。

組織統合をめぐっては、今年2月の中央委員会で宮下委員長が、郵政民営・分社化後の労組の姿を考えるうえで、「JPUとの組織統合も視野に入れた組織のあり方について検討に着手したい」などと提起したことから、現実味を帯びた課題として急浮上してきた。

大会で挨拶した宮下委員長は、中央委員会での発言について、「組合員に大きな衝撃を与えたことにお詫びするが、民営化という大変革時代で組合員の雇用、労働条件、生活を守るには、タブーのないあらゆる選択肢を持った中での検討が必要と考えた」などと述べ、統合提起の理由を説明した。

またこの発言以降、組合員から『全逓に踏みつけられた痛みは忘れられない』といった声が寄せられていることに触れ、「誤りなき冷静な判断をするには、痛みを『恨み』にしてはならない」などと主張。今後、組織のあり方を検討するうえでは、「正しい運動を続けてきた者、つまり全郵政がリードする」ことなどが重要だと指摘した。

大会では新執行体制として、委員長に山口義和・前書記長、書記長に轆轤誠・前公務労協副事務局長らを選出した。

組織統合を現実的課題として認識/JPU

一方、JPU(菰田義憲委員長、約13万5,000人)は、神奈川県・横浜市で定期大会を開き、06年度運動方針の中で、「改めて組織統合を現実的課題として認識し、その具体化への環境整備に入る」こととし、協議に際しては、 (1) 組合員が『生きがい・働きがい』を持てるよう一人ひとりの自己実現を支援する (2) 労使協議制を確立し、郵政事業の成長・発展と社会的使命の達成、および生産性向上に寄与する (3) 『人間の尊厳』と『公正な分配』を基調とした社会正義を追求し、持続可能な経済・社会システムを構築する――など5項目からなる、『私たちが目指す組織統合の基本的考え方』をベースに対応する方針を決めた。

挨拶した菰田委員長は、「2月の宮下委員長の挨拶は、郵政民営化という歴史的な変化を展望し、労組の責任として民営郵政時代を切り拓いていく決意を表明したもの。その英断に心から敬意を表する」などと述べた。そのうえで、「郵政労働運動の歴史は、激しい労労対立があったことも事実。その後、政策制度を基軸とした運動の見直しや30年総括など、自らの運動の反省と新時代に向けた方針づくりを進めてきたが、今なお感情論が残ることも理解できる」と指摘。今後について、「全郵政の主体的な決断と組織内議論の経過を真摯に受け止め、過去ではなく未来へ、組合員や事業にとって何が大切かを心にとめ、誠意を持って議論を進めていきたい」などと述べ、組織統合に向けた意気込みを語った。

役員選挙では、菰田委員長、難波奨二書記長らが再任された。