公務員制度改革の基本方針を公表/連合

(調査・解析部)

[労使]

連合(高木剛会長)は19日、公務員制度改革の基本方針となる「公共サービス・公務員制度のあり方に関する連合の考え方」を公表した。公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院および都道府県の人事委員会の勧告制度を廃止し、原則として争議権を含む労働基本権を付与することを提起。労使協議で賃金などの労働条件を決めるシステムの構築を訴えている。

適切な公共サービスの提供と労働基本権の保障を

連合の方針案は、新しい公共サービスの在り方を問い直し、労働基本権を保障することを前提に、労使協議で労働条件を決める方式などの基本方針をまとめたもの。「政府が『民間でできることは民間に』という合い言葉だけを先行させ、本質的な議論が欠如したまま公共サービスの削減を一層進めようとしていることは問題」と指摘したうえで、「格差が拡大し、二極化が進んでいる社会だからこそ、適切な公共サービスが公正かつ効果的に提供される仕組みが必要だ」とした。公共サービスは国民に安心と安全を提供できるものとすべきであり、市民参加の全面的な保障と監査制度の確立が必要だと強調。サービスの質の確保やチェック機能の強化を図ることで、環境汚染や食品安全といった新たなリスクにも対応できる体制づくりを提言している。

民間並みの人事制度構築を

方針案によれば、公務員のあり方については、労働基本権を付与して能力・実績に基づく人事制度を構築するなど基本的に民間並みにする考えだ。現在、国家・地方公務員は労働基本権のうち団結権は認められているが、争議権はない。団体交渉権も制約され、警察官や消防職員などには団結権も認められていない。

そこで方針案では、労働基本権を基本的に保障したうえで、人事院・人事委員会の勧告制度を廃止して、賃金や勤務条件などを労使協議で決める形式を提案。雇用保障制度の一環として、公務員に雇用保険制度を適用することも検討事項とした。

消防職員についても労働組合を結成する権利を保障。管理職や裁判官、検察官は職員団体をつくることができるとした。ただし、自衛隊員や警察官などの団結権に関しては、当面、現行法を適用して長期的な課題として検討すべきだとした。なお、管理職に加えて、自衛隊員や警察官、消防職員、裁判官、検察官などは、職務の性質上、引き続き争議行為を禁じている。

年功から仕事と実績を反映した給与体系に

公務員制度では、現行のⅠ種・Ⅱ種の試験区分を廃止し、学歴区分に限定するとともに、新たな幹部職員養成制度の構築を提起。キャリア・ノンキャリア別、中央省庁や地方機関などの組織段階別、年次別のローテーション人事制度は抜本的に改め、勤務評定制度も廃止して、公平・公正、透明で納得性のある新たな評価制度の導入を求めている。

処遇面でも、現行の職務給制度を基本的に維持しつつ、仕事の種類、職務・職責の内容をより明確にした制度の確立が重要だと指摘。「組織段階」や「職位」に偏重した格付けシステムから、職務価値を客観的に評価したシステムに改め、年功的な給与体系を、より仕事と実績を反映した体系にすべきだとした。

必要があれば手当の改廃も

公務員の賃金・労働条件面に関しては、「事実誤認に基づく指摘、公務における労使関係の形骸化・否定につながる考え方等は容認しない」との立場を明確にしたうえで、「市民・納税者の理解を得られにくい問題には、必要な是正・見直しを図る」として、公務員の自己改革も辞さない姿勢を示した。公務員の厚遇が問題視されている特種勤務手当などの各種手当についても、手当の性格を踏まえて労使でその妥当性を検証し、必要があれば改廃するのは当然だ、とした。

この他、方針案は、総務省人事・恩給局、行政管理局、財務省給与共済課を統合した「人事管理庁(仮称)」を創設も提起。管理庁長官を閣僚とし、労組との交渉や人事・組織管理などの機能を持たせる構想などを示している。

連合全体でアプローチ

16日に1年8カ月ぶりに開かれた政労協議では、公務員の削減に伴う解雇はしないことや配置転換の協議を行うことなどを確認している。3月を目途に改めて協議の場を設けることになっており、連合はその場で改革案の実現を訴えていく考えだ。

高木剛会長は「行政サービスとそれを担う公務員制度の2つの観点から抜本的改革が求められている。大きなポイントは公務の労使関係を抜本的に改革することが求められている。この問題は公務労組だけの問題というアプローチではなく、連合全体としてこの問題にアプローチしていく。公務員の仕事の本質的な内容を吟味し、筋を通すところは通し、柔軟に対応するところは柔軟に対応する両面を踏まえて方針を決めた」などと述べた。