新会長にUIゼンセン同盟の高木氏/連合大会

(調査・解析部)

[労使]

連合は5、6の両日、東京都内で定期大会を開催し、パートタイム労働者の組織化などを通じた組織の強化・拡大を最優先課題とする向こう2年間の新運動方針を確認した。笹森清会長の退任に伴う会長選挙では、UIゼンセン同盟の高木剛会長が全国ユニオンの鴨桃代会長を破り、第5代会長に就任。事務局長には古賀伸明・電機連合委員長が就任した。

「正社員だけの労働運動はもうだめ」

笹森清会長はあいさつで、事務局長に就任した1997年以降、進めてきた労働運動の再生・活性化の取り組みを振り返り、「(全都道府県と全構成組織を回ったアクションルートを通して)会話を重ねる中で改革への思いは醸成され、改革の芽は完全に芽生えたと確信することができた」と強調。そのうえで「正社員でユニオンショップに守られた人たちだけを対象にする労働運動ではもうだめだと改めて痛感した」として、勤労者全体を視野に入れた社会性のある労働運動の必要性を説いた。

組織率の低下については、「何が原因だったのかを突き詰めてほしい。雇用を守ることが労働組合最大の生命線だと言いつつ、できなかった」と反省。「企業が生き残らなければ元も子もなくなってしまうといって企業との共存を選択した労働運動が、これからも本当にそのままでいいのか、よく考えて行かねばならない」と述べ、企業との共存を優先しがちな企業別組合の運動を再考すべきとの見解を示した。さらに、中小・零細地場企業の未組織労働者やパートなどの非典型労働者の組織化に「各構成組織が全力投球で取り組めば、組織率も反転できる」と主張。労組加入のメリットの一環として、「全労済や労金、生協連とともに地域の福祉や共済、労働相談などの勤労者へのサポート事業の一体化に乗り出す」ことを提案した。

「民主は支持基盤の拡大を」

一方、政治への関わりについては、「(労組との関係見直しを表明している前原誠司民主党代表の)『脱労組』発言は大いに結構なこと。民主党イコール労組の関係なんて我々も組合員も望んでいない」として、民主党に支持基盤の拡大を求めた。さらに、前原代表に対し「代表の発言は選挙戦で(民主党候補の応援に)全力を尽くした組合員に対してデリカシーのない言い方ではないか」と苦言を呈したことを紹介した。

批判を受けた形で来賓あいさつした前原代表は「不愉快な発言、デリカシーを欠いた発言と言われても仕方がない」と前置きしたうえで、「(選挙戦で)応援をいただいた皆さんに対しては感謝に堪えない」として、選挙支援など協力関係の継続を訴えた。同時に「しっかり議論し、意見が合わないときは是々非々の対応をするのが本来の政党の姿だ」とも述べ、労組との協力関係は保ちつつも、最終的な政策決定は党の主体的判断で行う考えも改めて主張した。

なお、大会には小泉純一郎首相や社民党の福島瑞穂社民党党首なども来賓として出席した。

組織拡大が最優先課題

大会で確認した向こう2年間の新運動方針の柱は、組織強化・拡大や均等待遇の実現、税・社会保障制度の抜本改革など。なかでも最優先課題の組織拡大では、組織拡大の具体的な戦略である第3次アクションプラン(期間は2年)を新たに策定し、実施する。同プランでは、重点ターゲットをパート、派遣、契約労働者などにおき、構成組織はこれらの労働者の組織化方針を確立するとともに、傘下の単位組合(単組)の役割を徹底的に指導する。一方、地方連合会はこれらの労働者の地域ユニオンへの組織化に取り組む。2年間での具体的な組織拡大目標については今年11月に開催する中央委員会で設定する予定だ。

パート、有期契約、派遣、請負労働者などの均等待遇の確立では、「パート労働プロジェクト会議」を改編し、通年的にパート労働者への取り組みを強化するほか、民主党が国会に提出している「パート労働者均等待遇推進法」の早期成立をめざす。なお政治活動については、引き続き民主党を支援する。

運動方針の討論では、公務員の問題について「意図的、政治的な官公労や労働組合権に対する攻撃に対しては(連合が)今後とも毅然とした態度で対峙してほしい」(日教組)、「労働基本権の付与を含む公務員制度の改革を強く望む」(自治労)、パートの組織化については「産別や単組が連合に言われたからやるのではなく、現場の実情を踏まえ、自らが運動のあり方を提案し、具体的に実践していくことが極めて大事」(サービス・流通連合)といった意見が出た。また、連合のこの2年間の運動に対して、「分析や方針に問題があるのではなく、行動力、具体的な実行に問題点があるのではないか」(全国一般)との苦言も出された。

高木新会長就任、「2年以内に組織率20%回復めざす」

笹森会長の退任に伴う会長選挙では、UIゼンセン同盟の高木剛会長と全国コミュニティ・ユニオン(全国ユニオン)の鴨桃代会長が立候補した。代議員による投票では、代議員総数486人のうち472人が投票し、高木氏が323票、鴨氏が107票を獲得(白票39票、無効3票)。過半数を制した高木氏が新会長に選出された。会長代行には日教組の森越康雄委員長が新たに就き、事務局長には電機連合の古賀伸明委員長が就任した。

大会終了後、高木会長ら新役員は都内のホテルで就任記者会見を開き、組織拡大と政治活動の強化を公約に掲げるなど、労組の社会的影響力の復活を新体制の重点課題に据える考えを示した。

高木会長は大会で「(19.2%に低迷している労組組織率を)2年以内に20%に回復させることをめざす」とアピールしたことについて、会見でも「 03~05年度に20数万人の新組合員を入れているが、この3倍は増やす努力をしなければ達成できない。半ば公約的に言ったことであり、今後汗をかく」と強い意欲を見せた。政治活動では「集票力が劣化している」として労組の影響力低下に危機感を表明した。

また、高木会長が「06春闘では可処分所得の改善をめざす」としたことに関して、古賀事務局長は「昨年より強いトーンで月例(賃金)の増(額を求める)という大きな流れがある」などと述べ、月例賃金の要求を検討していくことを明らかにした。