立候補した高木、鴨の両氏が揃って会見/連合の次期会長選挙

(調査・解析部)

[労使]

連合の次期会長選挙に立候補しているUIゼンセン同盟会長の高木剛氏(62)と全国コミュニティ・ユニオン連合会(全国ユニオン)会長の鴨桃代氏(57)が29日、連合本部で揃って記者会見した。高木氏は、19.2%に落ち込んでいる労働組合組織率を20%に回復させることは「この先2年間でできると思っている」と強調。鴨氏は非典型労働者などに「労働組合が悩みや問題を解決できる場だというメッセージを出すことが大事だ」と話した。

選考過程が不透明

会見ではまず、会長選に立候補した理由をそれぞれが述べた。鴨氏は理由として3点をあげた。第1は、非正規労働者が増える一方、労働条件が悪化していること。「『仕事は一人前なのに扱いは半人前』が固定化することを危惧している。この事態に歯止めをかけられるのは連合しかない」とし、「連合会長になった際は、働いているいろんな方たちが希望をもって働けるようにしていきたい」と抱負を語った。第2の理由としては、会長候補を高木氏に絞った役員推薦委員会の検討プロセスに対する不満をあげた。推薦を決めた経緯は「不透明だと強く思った」と言い、「選挙することが『開かれた連合』の意味となる。さまざまな意見があるのにまとまったかのようにするのは民主主義ではない」と述べた。

第3の理由には平和の問題をあげた。連合は大会に向けて、国の基本政策をめぐる議論を行ってきたが、鴨氏は、憲法は変える必要はないとの見解を示した上で、「労組は平和運動の先頭に立つべきだ」と強調。立候補について「本当に悩んだが、これまでの17年のユニオンでの活動で、相談に来てくれた人たちに対して『立ち上がろう』と言い続けてきた責任を思って決断した」とつけ加えた。

連合が弱いと労働運動も弱くなる

一方、2年前、会長選に立候補した高木氏は、今回は立候補の意思もなく、役員推薦委員会での調整を注視してきたが、8月下旬に委員会から「組織拡大、中小の労働条件、非典型労働者をめぐる課題などに今までの経験を生かして取り組んで欲しい」と立候補の要請があった、とこれまでの経緯を説明。これを断れば、「連合運動の発展・強化を望んできた思いと整合性を欠くことになることから立候補を決断した」と語った。また、よく先輩から「ナショナルセンターの弱い労働運動は弱い」と教えられてきたとし、「この教えに応えるためにも、大役を果たすべく、精一杯努力しようと決意を固めた」と述べた。

会長に選出された場合、どう連合を変革させるかを問われた鴨氏は、かつてパートタイマーや派遣労働者、有期労働者を組織する立場から、「非典型労働者に連合に入ってもらうのではなく、連合から近づいていく努力ができるかが問われている」と語った。高木氏は、第1に透明性の高い組織運営、第2に未組織労働者も含めて広く勤労国民の労働条件や生活実態を踏まえた迅速な対応をあげ、第3にリーダーの養成が重要だと強調した。

組織率20%回復「困難ではない」

連合が最重要課題とする組織拡大について、鴨氏は「組合が悩みや問題を解決できる場だというメッセージを出すことが大事だ」と主張。高木氏は、今後2年間で組織率を20%台に回復させることが可能だとの見通しを語った。組合員を54万人純増させれば、1%組織率を上げられるとし、「構成組織、地方連合の連携を重視して、産別が互いの責任分担を詰めて組織拡大を積み上げれば、困難だと思っていない」と組織率低下の歯止めと反転攻勢に自信を見せた。

一方、「労組離れ」とも言われる民主党との関係について、鴨氏は「民主党が働く人の立場に立たない場面が出てくれば連合としても対応を考える場面は出てくるだろうが、立法面などでは連携しないと解決しないものもある」とした。高木氏は、「民主党に限らず、連合のことをもっと彼らに理解してもらうメッセージ発信が十分できていたか、という印象もある」と述べ、政策1つひとつについて腹を割ってよく話し合う必要があるとの認識を示した。

また、民主党の前原代表が憲法改正を主張していることなどについて、鴨氏は「今の憲法を守る立場で民主党とも話し合う」とあくまで護憲の立場を強調。高木氏は「連合内でもいろいろ意見がある。組織内のコンセンサスをただちに得られるとは思っていない」と連合としての見解を早急に出すことは難しいとの見方を示した。

組織化、平和問題の具体論で相違

互いの運動に対する共通点、相違点を聞かれた鴨氏は「連合方針に対しては同じ方向を向いているが、具体的な運動では違いがある」とし、特に組織化と平和の問題をあげた。高木氏は「パートの関係ではお互い、関わりあってきたというキャリアは共通している。感覚の違いはあるかもしれないが」と語った。

また、現執行部の運動方針のなかで特に変えたいところがあるかとの質問では、鴨氏は「笹森体制がつくった均等処遇実現に向けた運動を継承することが執行部には望まれている」と答え、笹森路線を継承していく考えを表明。一方、高木氏は、パート等を職場に抱える構成組織でつくる「パート共闘会議」を新たに設置し、パート等の処遇改善に取り組んでいきたいとの考えを示した。