楽員身分、終身から有期雇用へ/東京都交響楽団の労使が合意

(調査・解析部)

[労使]

今年創立40周年を迎える東京都交響楽団は、5月1日から原則3年の有期雇用契約である「契約楽員制度」を導入した。約80人の団員の9割が加盟する「日本音楽家ユニオン関東地方本部東京都交響楽団」(ユニオン都響)が6日に記者会見し、明らかにした。

契約楽員制度の導入は、都の財政再建策の一環として同楽団を運営する財団法人・東京都交響楽団から2003年11月に提案されたもの。当初、ユニオン側は制度の導入阻止を掲げ、支援ネットワークなどを立ち上げて反対運動を展開してきたが、交渉の結果、「雇用継続の意思表明がなされた」(ユニオン都響・松岡陽平委員長)として、3月下旬に楽団側と協定を取り交わした。

協定書によると、雇用形態の変更内容は、 (1) 「終身雇用制」から「期間の定めのある労働契約」への転換を図る (2) 契約期間は原則3年間とする (3) 首席・副首席はすべて契約楽員とする (4) 一般楽員は終身雇用と有期雇用のいずれかを選択できる。ただし、新規採用者はすべて有期雇用の契約楽員とする――など。また、「能力・業績評価制度」の導入も盛り込まれており、契約楽員については評価の結果によって、契約更新時の年俸額が決定され、契約更新されないこともある。一方、終身雇用楽員についても、評価結果で次年度の年俸額が決定されるほか、「一定期間による能力・業績評価の結果により、退職勧告を行うことがある」との規定も盛り込まれた。

ユニオンによると楽団員の7割が契約楽員を選択。契約楽員の年俸額は1号(500万円)~9号(770万円)まで、一方、終身楽員の場合は1号(380万円)~25号(700万円)まで、それぞれ区分されている。

契約楽員制度運用の前提となる評価制度については、楽団側からは「音楽的調和に努め、自己の演奏能力を最大限発揮した」「セクション内での役割を確実に達成した」「聴衆に不快感を与えないステージマナーを励行した」などの「能力」「業績」「態度」を評価要素にする内容の提案を受けている。しかし、ユニオン側はこれらがオーケストラ楽団員の評価に関する合理的基準になるかどうかについて、検討を深める必要があるとし、労使協議を続ける方針。このため、評価制度に関する労使合意は8月以降にずれ込みそうだ。

「契約楽員制度導入」を受け入れた背景について松岡委員長は、「能力・業績評価の結果により、契約楽員の雇用契約の更新を行わないことがある。それ以外の理由により雇用契約の更新を行わないことはない」との確認書を取り交わしたことをあげ、「雇用継続の意思を確認したため」と説明している。

なお、従来の退職金制度は全楽員の給与が年俸制に移行したことから廃止され、これまでの勤続年数に応じた退職金が支払われた。