05年春の労使交渉が本格スタート/鉄鋼・造船、自動車メーカー関係労組が要求提出

(調査・解析部)

[労使]

三菱重工業など造船重機大手の主要労働組合が15日に、またトヨタ自動車や日立製作所など大手自動車、電機メーカーの労組は16日に一斉に要求書を経営側に提出し、2005年春の労使交渉が本格的にスタートした。金属関係の大手労組は大半がベースアップ要求を見送ったため、一時金交渉が注目点となる。金属関係をはじめ大手労組は3月16日を集中回答日に設定している。

自動車大手5労組、過去最高水準の一時金要求

国内外の厳しい経営環境を背景に、素材関係や自動車など業績好調の業種でもベア要求見送りが相次ぐ一方、一時金については業績回復分を反映させるため過去最高水準を要求する労組が多い。

二極化は目立つものの業績好調の自動車関係では、トヨタ自動車が5カ月プラス62万円、日産自動車が6.2カ月といずれも過去最高水準の要求を掲げた。このほか、大手自動車メーカーでは合計で5労組が過去最高水準の要求を設定している。

一方、経営再建中の三菱自動車労組は、過去最低の年間3カ月を要求。また、単独ベースで3割程度の減益を見込むホンダの労組も、前年実績を0.15カ月下回る6.4カ月とした。

自動車関係労組でつくる自動車総連(約70万人)の加盟組合約1,200組織のうち、「ベア」の表現は使わないものの、産業・規模間格差の是正や賃金体系の是正などの目的で実質的な「ベア要求」を掲げる組合は2004年の484組合、2003年の555組合を超えるものと本部はみている。このうち、大手組合の多数はこうした形の「ベア要求」も見送るが、日産労組は「賃金改定原資の確保」、ヤマハ発動機労組も「賃金改定原資相当分」の位置づけで、経営側に給与総額原資の増額を求める。ストレートに「ベア要求」を掲げにくくなったのは、各企業の賃金制度が、脱年功型の成果主義的制度に移行したことが影響している。日産は昨年4月から定期昇給を廃止している。なお、日産グループ関係企業の約450組合で構成する日産労連は自動車総連傘下で唯一、格差是正を眼目に「ベア1,000円」の統一要求を設定している。

三菱重工など造船大手、「3.5ヵ月プラス50万円」を要求

鉄鋼・造船・非鉄などの関係労組でつくる基幹労連の傘下組合は、鉄鋼メーカーが2年ごとの協約改定となっているため、大手鉄鋼の労使間で賃上げ交渉は実施しない。一時金も新日鉄、JFEスチール、神戸製鋼が業績連動方式を採用しているため、大手では唯一、住友金属が一時金交渉を行う。組合は過去最高益が見込まれる企業業績を踏まえ昨年より40万円増額の190万円を要求した。

造船重機関係は原材料価格の上昇などで採算が悪化しているため、ベア要求は見送る。一時金は業績連動方式を導入した川崎重工業を除く三菱重工業など大手はほぼ横並びで3.5カ月プラス50万円を要求している。ただし、新キャタピラー三菱労組は、業績好調を背景に「3.5カ月プラス60万円」の獲得をめざす。

連合、「格差是正に力点を」

一方、連合は17日の闘争委員会で規模間格差の是正を最重視する当面の方針を確認。経営側からの「中小だけがベースアップを求められるのは容認できない」(日本商工会議所会頭)「数字を見る限り(規模間)格差が広がっているとは思っていない」(日本経団連会長)などの発言に対して「絶対に容認できない」という立場から、中小・地場共闘を強化し、格差是正に向けた交渉に力点を置くよう、「意思統一」を図るとしている。