労働弁護団が全国一斉ホットラインを実施/弁護士が707件の相談に対応

(調査・解析部)

[労使]

日本労働弁護団は5日を中心に、全国25カ所で「全国一斉残業・賃金・リストラ110番」を開き、700件を超える相談を受けた。サービス残業など労働時間関係絡みの相談が後を絶たないことから、同弁護団では9日より残業・長時間労働の専用ホットラインを東京本部に開設し、相談に臨む予定だ。

労働弁護団主催の全国(または首都圏)一斉電話相談は、今回で23回目。相談件数は全体で707件と、前回(昨年12月)に比べ269件も多かった。サービス残業や長時間労働に伴う健康不安など労働時間絡みの相談が多く、全体の約6割。このほか、賃金不払いやメンタルヘルス不全、成果主義賃金を口実とした賃金切り下げなどの相談も目立った。

東京本部では、午前10時から午後5時までの7時間、弁護士15人体制で受け付け、209件の相談が寄せられた。東京本部の相談が200件を超えたのは初めてのこと。「当日はほぼ終日、電話が鳴りっぱなしの状態だった」(同弁護団)という。労働時間関連の相談が4分の3近くを占めた他、希望退職・退職強要の相談も10件あった。

同弁護団によると、今回の相談内容の特徴は、悪質な事例が目立ったことだ。サービス残業関連では、労働基準監督署が調査に入ったにもかかわらず、問題が解決できなかったケースや、使用者が証拠を偽造したり、基本給を削って残業代につけかえる脱法行為もあった。中小企業では、「資金繰りが悪い」との理由で労働者にただ働きを強いるなどの単純不払い賃金の相談が激増しているという。

さらに、長時間労働に悩む相談者の職場では、労働時間管理が厳正になされている事業所はほとんどなく、タイムカードの改ざんや打刻妨害、自己申告制による残業代申告制限が横行するなど、その大部分が労働基準法違反に該当した。技術系労働者や専門職、高学歴労働者からの相談では、「毎月100時間以上の残業で体が壊れる」(41歳の男性技術者)、「残業代を請求すると仕事ができないと思われる。働き過ぎで血便が出る」(34歳の男性銀行員)など長時間労働による健康不安を訴える事例も多く見られた。同弁護団では、「業務があまりに過大であり、必然的に長時間労働を余儀なくされている。企業の労働時間法制に対する遵法意識の著しい低さが露呈されている」と指摘している。

残業問題をテーマにしたホットラインは今回で5回目。同弁護団は「違法残業問題が深刻化していることを実感した」として、長時間労働の相談に絞った「残業ホットライン」の常設を決めた。内容に応じ、労働基準監督署への申告や法的助言、提訴など法的手段の相談にのる。電話番号は03-3251-5363。受付は毎週水曜日の12時から13時半まで。