04春闘スタートで労使トップが火花/連合・日本経団連首脳懇談会

(調査・解析部)

[労使]

連合(笹森清会長)と日本経団連(奥田碩会長)は29日、東京・大手町の経団連会館で首脳懇談会を開き、04春闘をテーマに意見交換した。笹森会長が、「(賃上げ率の)数値は昨年度を底値として反転させていきたい」などと述べ、賃上げを強く求めたのに対し、奥田会長は「企業の存続、雇用の維持が重要」との姿勢を崩さず、議論は平行線を辿った。

両組織の首脳による定期懇談会は年に3回実施するもの。1月に開催する懇談会は、春闘スタート時のトップ交渉の意味合いを持つ。連合の笹森会長はあいさつで、「業績回復の背景にはリストラがあり、働く人の犠牲や現場の努力の上に成り立っている。きちんと回答を出して欲しい」と口火を切った。日本経団連が12月に発表した経営労働政策委員会報告(経労委報告)に触れ、「日本経団連は一律賃下げ、ベースダウンを主張をしていると受け止めざるを得ない。『人を大切にする』などといいながら、それを忘れているのではないか」と批判。頻発するサービス残業問題が「かなりの収益を上げている企業でも発覚しているのが疑問だ」として、不払い残業撲滅のための共同行動をすべきだとした。これに対し日本経団連の奥田会長は、「(リストラは)ダブダブの背広を脱ぎ捨てて、きちんとした服に着替えることだ」などと応酬。リストラで業績が改善したことを認めつつも、その正当性とさらなるリストラの必要性を示唆した。一方、人材について「従来から労働者が大事だと言っており、変わっていない。働く人がいてこそ会社は成り立つ」と反論した。

さらに経団連側は、「経労委報告は、高コスト構造是正の中で賃下げをせざるを得ない企業が出る可能性もあるとしたもので、一律にやれというつもりはまったくない。成果配分は当然のこと」との認識を示す一方で、「日本経済は世界経済に飲み込まれおり、国際競争を考えなければならない」と発言し、連合側に理解を求めるなど、双方とも従来からの主張を改めて繰り返した格好だ。

また、奥田会長は、「生活全般にわたりいびつになっている現状を改革すべきだ」と強調した。具体的には、職がなくても低賃金労働に就きたがらない実情や、重複する生命保険や塾などの教育費が家計を圧迫していることを例にあげ、「家計をみれば、無駄や高コストの改善・合理化が必要。塾にしても義務教育制度がしっかりしていれば不要だ」などの考えを示した。これについて笹森会長は、「家計の見直しは、既にしっかりやっているとの声が女性を中心に強くあがっている。実態を見て欲しい」と反論した。

65才までの継続雇用については連合側が「年金と雇用の連動は必要」と主張したのに対し、経団連側は「年金との連動は理解するが、あくまで経営権問題であり、法制化は反対。中小企業など死活問題だ」と強い不満を訴えた。

このほか、連合側が中小労働者の賃金水準の低下に歯止めをかけるために要求基準を設定したことを説明。次世代育成支援対策推進法の行動計画づくりを、労使が協力して実施することを要請した。経営側は年金をはじめとする社会保障の見直しについて、労使共同で取り組むことが必要だと応じた。