ベア要求を断念/基幹労連の04春闘方針固まる

(調査・解析部)

[労使]

鉄鋼労連、造船重機労連、非鉄連合の3産別が統合して今年9月に発足した日本基幹産業労働組合連合会(略称:基幹労連、宮園哲郎委員長、約25万人)は11、12の両日、岩手県花巻市で統合後初めての討論集会「アクティブプラン2004」を開き、04春闘でベースアップの統一要求を断念する方針を固めた。2月の中央委員会で正式決定する。

統合後、初の春闘では、鉄鋼、造船重機、非鉄金属の各部門ごとの判断を尊重する形で要求基準を設定した。鉄鋼労連からの複数年協定の第4ラウンドの交渉となる鉄鋼部門は、中期賃金政策として策定した「今後の労働条件決定のあり方」をベースに要求案の検討を重ねてきた。鉄鋼部門の試算によると、鉄鋼大手4社の35歳勤続17年標準労働者の平均賃金が、従業員規模1,000人以上の賃金センサスの製造業平均を約1万円下回る30万円程度まで落ち込んでいる。このため、同政策では「年間総賃金での製造業平均への回復・安定部分の拡大」を提示。その一方で、「基本賃金においては、産業・企業のフロー、ストック(財務体質)両面の状況を踏まえた対応が必要」との認識も示している。

今回、大手4社のフロー収益は大幅な改善が見こまれているが、ストックが枯渇している。加えて、大手4社の間にはフロー収益のばらつきや、ストックの疲弊度合いに明確な差が生じている。討論集会でも大手4社組合の意見は、「収益を含め、環境が悪くないのに、今回(ベア要求を)飛ばしたら、06春闘以降勝負できる確約がない」(新日鉄)、「苦しい時期を乗り越えて、やっと収益が出るようになった。この機会を逃して次をどう闘うと言うのか」(JFEスチール)などとするベア要求を推進する声と、「フローは確かに良くなっているが、まずは他社と比して落ち込んでいる一時金を回復したい」(神戸製鋼、住友金属)とするベア要求に二の足を踏む意見に分かれた。運動論的にみれば、業績が改善していれば、ベア要求するのが自然な姿だが、「大事な鉄の生命線」(宮園委員長)である総合大手4社の統一要求を堅持する方向で落ち着いた。

04と05春闘ではベア要求を見送り、「2010年を目途に基本賃金を製造業平均に回復させることにターゲットを置き、その道筋を示すよう求める」方針。2010年にポイントを置いた理由としては、団塊世代層の定年退職や少子高齢化社会の到来を控え、質の高い労働力を確保するために、この時点までに鉄鋼を魅力ある産業にする必要があるためとしている。

宮園委員長は記者会見で、「鉄鋼については総合4社の状況を考えると、04、05春闘での基本賃金改善の統一要求は断念せざるを得ない」と説明。その上で、「額はゼロでも回答はゼロではない。経営側からは『06春闘以降(2010年まで)に製造業平均に向けた格差の段階的な是正に努力する』などの日本語回答を引き出したい」と強調した。鉄鋼は、前回の02春闘に引き続き、4年連続でベア要求を断念する格好。その代わり、交渉において中期的な視点で目標達成の確約を迫ることになる。

造船重機部門と非鉄部門は、定期昇給または定昇相当分の確保に取り組み、非鉄部門については、ベア要求が可能だと判断した単組は要求する。企業業績が比較的好調な同和鉱業などでベア要求の可能性がありそうだ。

一時金要求は、金属労協の「年間5カ月を基本」とする考え方を踏まえて、鉄鋼部門が120万円(生活基礎分)+成果還元分、造船重機部門が50万円+3.5カ月、非鉄部門が160万円(産別最低要求基準は130万円)となっている。

このほか、基幹労連の統一要求として、「老齢基礎年金の支給開始年齢引き上げに接続した就労年齢引き上げ」も求めていく。なお、基幹労連としての要求の一本化は06春闘からスタートさせる考えだ。