企業年金・退職一時金についての調査

日本労働研究機構 発表
平成13年11月

78.6%の企業が企業年金・一時金制度に課題あり、うち半数が見直し検討
確定拠出年金は18.2%が導入方向で検討、他社の動向を注視が7割
~企業年金・退職一時金についての調査(労働に関するWEB企業調査)~

I.調査の概要

 本調査は、企業における「企業年金・退職一時金制度」の運営状況やそれをめぐる考え方、今後の見直しの方向を明らかにするとともに、今年10月から施行された確定拠出年金制度に対する企業の対応をさぐることをねらいとして実施したものである。 上場企業と店頭登録企業合わせて3,544社に調査への協力をお願いし、そのうちの429社から協力をいただいた。また、調査の実施期間は、平成13年10月22日~11月7日である。
なお、本調査は、WEB上に調査システムを構築し実施したものであり、インターネットの日本労働研究機構ホームページ上に調査票を設定し、回答をオンラインで提出していただいた。

II.調査結果の概要<骨子>

企業年金・退職一時金についての調査(労働に関するWEB企業調査)(PDF:108KB)

1. 企業年金・退職一時金制度の現状

<「企業年金制度」を整備している企業は8割を超え、その割合は大企業ほど高い>
 企業年金制度を整備している企業は83.7%で、産業別にみると製造業(91.0%)や建設業(93.6%)、企業規模別には1000人以上の大企業(96.3%)で高くなっている(図1、図2、図3)。

2. 制度運営上の課題

<制度運営に課題をかかえる企業は約8割、株価の低迷が打撃>
 企業年金・退職一時金制度の運営に課題を抱えている企業は78.6%で、企業規模別には1000人以上の大企業(89.6%)、設立年代別には、昭和19年以前(89.9%)、昭和20年代(84.7%)の古い企業で高くなっている(図4、図5、図6)。
課題の内容としては「株価の低迷などにより運用責任を果たすことが難しくなっている」(75.9%)、「会計基準の変更に伴う説明責任により従来に増して制度運営が重荷となっている」(48.9%)の割合が高い(図8)。
なお、平均年齢が低く若い労働者が多い企業では、中途採用者向けの労働条件を魅力あるものとしていくことを企業年金制度の課題としてあげるものも少なくない(図9)。

3.制度見直しの方向性

<半数以上の企業が見直しに着手、成果の反映、コスト抑制がテーマ>
 制度に課題があるとした企業のうち、見直しを決定している(7.5%)、見直す方向で検討している(44.4%)、を合わせると半数を超えている(図10)。見直しの方向としては、「従業員個別の成果を反映した年金・退職一時金システムにする」(75.5%)、「制度自体を再設計し高齢化等に伴う人件費増を抑制する」(60.0%)と回答した企業が多い(図11)。
なお、企業規模別には、300人未満企業で「従業員がより主体的に資産を運用するシステムを構築する」を重視するものが多い一方、1000人以上の大企業では「制度自体を再設計し高齢化に伴う人件費増を抑制する」を重視するものが多い(図12)。

4.従業員とのコンセンサスの形成

<労働組合等と話し合っている企業は41.0%、従業員は一定の理解示すが不安視する声も>
 制度の見直しを労働組合等の労働者代表と話し合っている企業は41.0%と半数を下回っている(図15)。
また、話し合っている企業について、従業員側の受け止め方を見ると、「経済や経営状況を考え、制度の見直しに一定の理解を示している」(80.0%)と回答する企業が多い(図20)。
なお、従業員の受け止め方として、「見直し後の制度がどのようなものになるか、全体像がつかめず不安視している」(46.7%)とするものも多いが、これを大企業(1000人以上)でみると55.8%と、1000人未満企業の34.4%と比べて高くなっている(図21)。

5.確定拠出年金制度の導入についての考え方

<確定拠出年金制度への関心は高く、導入メリットは運用リスクの回避>
 18.2%の企業が確定拠出年金を導入する方向で検討しており、「現在、検討はしていないが他社の動向をうかがっている」と答えた企業も7割弱あるなど、確定拠出年金制度への関心は高い。企業規模別には1000人以上の大企業で高くなっている(図23、図25)。
なお、確定拠出年金にメリットがあると答えた企業は41.0%あるが、約半数は「分からない」(49.2%)と回答しており、現段階では判断しかねている様子がうかがえる(図29)。
同制度のメリットとしては、「企業の掛け金負担が明確で、運用のリスクを回避できる」(90.6%)が最も多く、「ポータビリティのある制度を導入することによって、中途採用などで人材を引きつける効果が期待出来る」(42.7%)が続く(図33)。

6.確定拠出年金制度の導入にあたっての課題

<導入の課題は投資教育、老後生活安定のための対応も求められる>
 確定拠出年金制度の導入にデメリットとなる点があるとする企業は56.4%で半数を超え、デメリットを感じる点には「従業員に投資教育を実施しなければならない」(79.2%)、「制度運営の事務負担・コストがかかる」(67.4%)、「給付額が確定しないため従業員の老後の生活設計が不安定になりやすい」(51.7%)などがあげられている(図37、図39)。

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