「春闘」についての調査

日本労働研究機構 発表
平成13年7月

業績が改善した企業は67.3% 成果配分を増やした企業は51.0%
96.6%の企業が春闘で労組と十分話し合えた・話し合えるようになったと評価
~「春闘」についての調査(労働に関するWEB企業調査)~

I.調査の概要

 本調査は、春季労使交渉において話し合われた主要なテーマや企業の対応等を明らかにすることをねらいとして実施したものである。
上場企業と店頭登録企業合わせて3,517社に調査への協力をお願いし、そのうちの259社から協力をいただいた。また、調査の実施期間は、平成13年6月13日~6月28日である。
なお、本調査は、WEB上に調査システムを構築し実施したものであり、インターネットの日本労働研究機構ホームページ上に調査票を設定し、回答をオンラインで提出していただいた。

II.調査結果の概要<骨子>

「春闘」についての調査(労働に関するWEB企業調査)(PDF:93KB)

1.労働条件についての話し合い

(1)春闘で労働条件について話し合った企業は79.2%
 春闘で、労働組合や従業員代表等と労働条件について話し合った企業は79.2%。産業別では素材関連製造業が90.9%、機械関連製造業が90.1%と高い。従業員規模別では1000人以上の企業では92.0%とほとんどの企業で話し合われている一方、300人未満では54.5%となっており、規模が大きいほど話し合いを持った割合が高い。(図1、図2、図3)

(2)話し合いを持たない企業の労働条件の定め方は「経営側から提示し、交渉はない」が75.9%
 春闘で、労働組合等と話し合いを持たなかった企業に、労働条件の定め方を聞いたところ、「経営側から提示し、交渉はない」が75.9%、次いで「労働条件は労働組合等と交渉して決めるが、当面は変更の予定がない」が11.1%となっている。(図5)

(3)話し合った項目は「賃上げ、賞与」が94.6%、「定年延長、再雇用制度」が20.0%
 労働条件について話し合った企業において、労働組合等と話し合った項目は、「賃上げ、賞与」が94.6%、「定年延長、再雇用制度」が20.0%、「労働時間短縮」が14.6%である。資本金規模別に見ると、50億円以上の企業では「定年延長、再雇用制度」が22.2%、10億円未満の企業では「労働時間短縮」が23.1%と高い。(図6、図9)

2.業績の動向

(1)業績が改善した企業は67.3%
 労働条件について話し合った企業において、業績が昨年度より改善した企業は67.3%。産業別にみると、サービス業で90.0%、機械関連製造業で79.5%と高い。(図10、図11))

(2)賃上げや賞与への成果配分を増やした企業は51.0%
 労働条件について話し合った企業において、賃上げや賞与への成果配分を増やした企業は51.0%。成果配分の状況を業績別にみると、「かなり改善した」企業では82.6%、「やや改善した」企業では60.9%、「悪化した」企業では15.2%となっており、成果配分は業績の動向から強く影響を受けている。(図14、図18)

3.業績改善企業と成果配分

(1)業績改善の理由は、「従来から実施している事業が回復したため」が55.1%
 業績が改善した企業にその理由を聞いたところ、「従来から実施している事業が回復したため」が55.1%、「不採算部門の整理、人件費の圧縮等を行ったため」が44.2%と高い。(図19)

(2)成果配分を抑制した理由は、「景気の先行きが不透明であり、業績の見通しに慎重にならざるを得なかったため」が75.0%
 業績が改善した企業のうち、賃上げや賞与への成果配分が前年を上回っていない企業に、成果配分を抑制した理由を聞いたところ、「景気の先行きが不透明であり、業績の見通しに慎重にならざるを得なかったため」が75.0%と最も多くなっている。(図21)

(3)成果配分を増やした形態をみると、賞与(「賞与のみ」「主に賞与」)が79.8%
 成果配分が前年を上回った企業にその配分方法について聞いたところ、賞与(「賞与のみ」「主に賞与」)が79.8%と高い。(図23)

(4)賞与で成果配分をする理由は、「賃金を一律に引き上げるのではなく、賞与により個々人の業績に応じて還元するようにしているため」が54.7%
 賞与で成果配分をするという企業にその理由を聞いたところ、「賃金を一律に引き上げるのではなく、賞与により個々人の業績に応じて還元するようにしているため」が54.7%、「基本給は人件費算定の基礎であり、賃上げすると関連人件費増加の規模が大きくなりすぎるため」が52.0%、「業績の回復は短期的なものであり、賞与で還元するのがふさわしいと判断したため」が50.7%となっている。(図27)

4.業績悪化企業と成果配分

(1)業績悪化の原因は、「従来から実施している事業が回復しないため」が62.7%
 平成11年度よりも業績が悪かったと回答した企業に、業績が悪化した原因を聞いたところ、最も高いのは「従来から実施している事業が回復しないため」で62.7%である。(図28)

(2)業績悪化のもとで配分を増やした理由は、「事業再構築などで協力をしてくれた労組(従業員代表)や従業員に報いるため」が50.0%
 業績が悪化しているもとで成果配分を増やした企業について、その理由をみると、「事業再構築などで協力をしてくれた労組(従業員代表)や従業員に報いるため」が50.0%と、最も高い。(図29)

5.今春闘の評価

(1)労働組合等との話し合いの内容は、「従来から話し合いたいことを十分に話し合っており、特に変化はない」が84.4%
 労働組合等との話し合いの内容については、「従来から話し合いたいことを十分に話し合っており、特に変化はない」が84.4%と最も高い。しかし、規模別にみると、従業員・資本金ともに規模が大きくなるほど「従来に比べ話し合いたいことを話し合えるようにようになった」の割合が高くなっている。(図30、図32、図33)

(2)話し合えたことは「企業の経営状態についての認識」で84.4%
 労働組合等と話し合いたいこと・話し合えたことは、経営状態や経営上の課題など企業の経営に関する項目が多くなっている。話し合えたことは「企業の経営状態についての認識」が84.4%と最も高い。話し合いたいことと話し合えたことの乖離が大きいのは「定期昇給制度の見直し」で、話し合いたいが57.6%であるのに対し、今回話し合えたのは22.9%と
なっている。また、「年金・退職金制度の見直し」も話し合いたいが46.3%に対し、話し合えたが11.7%となっている。(図34)

(3)話し合えるようになった企業が話し合えた内容は「企業の経営状態についての認識」(92.0%)
 「従来に比べ話し合えるようになった」という企業について話し合えた内容をみると、「企業の経営状態についての認識」で92.0%(全体計では84.4%)である。また、話し合えるようになったとする割合が全体の回答割合より高いものは「定期昇給制度の見直し」(28.0%)、「キャリア形成など社員の人材育成、職業能力開発」(24.0%)となっている。(図38)

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