国内労働情報2013
医療従事者の働き方とキャリアに関する調査
―A大学病院の悉皆調査から―

平成 25年5月31日

概要

研究の目的・趣旨

現下の日本の医療分野においては、医療従事者は、長時間労働をはじめとして大変厳しい勤務環境に置かれている。医療従事者の偏在など需給面での問題も顕在化する中で、将来にわたり安全・安心の医療提供体制を構築・維持していくために、医療従事者の労働条件や需給調整の仕組みなどに対する政策的な対応が喫緊の課題となっている。本調査は、こうした医療分野特有の問題点を総合的に把握・分析し、医療従事者の労働条件の改善や専門職としてのキャリア形成に資する仕組みを構築するため、国立のA 大学医学部付属病院(以下、「A大学病院」と略す)の全面的な調査協力のもと、同大学病院で働く医療従事者全数(医師、看護師、医療技術職員、病院事務職員)を対象とするアンケート調査を実施したものである。

調査の概要

調査対象は、A 大学病院で調査時点に在籍する医療従事者(医師、看護師、医療技術職員、病院事務職員)の全数(悉皆調査)。調査票は医師調査票、看護師調査票、医療技術職員調査票、病院事務職員調査票の4種類を作成。同大学病院事務局を通じて、各部署に在籍する医療従事者に配布し、回収した。調査実施期間は、2012年2月7日から2月27日。

主な事実発見

<医師の週あたり労働時間の平均値は52.9時間、「60時間以上」の割合は52.9%>

1週間当たりの実際の労働時間(時間外労働(残業)時間を含む)を職種ごとにみると、その平均時間は、医師で56.4時間。その分布をみると、「60時間以上」の割合は52.9%。一方、看護師の週あたり労働時間の平均時間は45.2時間であり、医療技術職員は40.6時間、病院事務職員では37.1時間となっている。職種ごとに平均値を比較すると、医師がもっとも長くなっている。

<6~7割の医師に宿日直。交代勤務のある看護師は8割>

医師の宿日直の状況をみると、「日直」があるのは66.5%、「宿直」があるのが73.5%となっており、6~7割は宿日直がある。一方、看護師の交代勤務の状況をみると、「二交代制・変則二交代制」が66.0%、「三交代制・変則三交代制」が16.4%などとなっている。「交代勤務あり」(「二交代制・変則二交代制」、「三交代制・変則三交代制」の合計)は、82.4%などとなっている。

<業務の負担感では、「通常業務以外の業務」がトップ。医師では宿日直も上位>

業務の負担感を職種ごとにみると、いずれの職種も「通常業務以外の業務(書類作成等)に負担を感じる割合がもっとも高い。次いで、医師では、「宿日直」「患者・家族への対応(クレーム含む)」などとなっており、看護師では、「交代勤務」「研究(学会・研究会への参加及びそのための準備を含む)」などとなっている。医療技術職員では、「研究(学会・研究会への参加及びそのための準備を含む)」「通常業務」の割合が高くなっている(図表)。

<「給与・賃金の額」「労働時間の長さ」「仕事と私生活の調和」に不満>

満足度をみると、医師、看護師については、「満足である」(「満足している」「まあ満足」の合計)とする割合が高いのは、「患者(とその家族)との関係」「勤務先(職場全体)」「職場の人間関係」「勤務先の仕事の質、内容」で上位となっている。いずれの職種も、勤務先や仕事、職場の人間関係などに対する満足度は高い。一方、「不満である」(「不満」「少し不満」の合計)とする割合をみると、いずれの職種も、「給与・賃金の額」「労働時間の長さ」「仕事と私生活(家庭、余暇等)の調和」が上位にきている。医師、看護師では、「休日・休暇の日数」の割合も高い。

<看護師の8割が疲労感を感じている。過去1カ月でヒヤリ・ハット体験が「あった」とするのは、医師で4割弱、看護師で5割>

「疲労感」を「感じる」(「非常に感じる」「まあ感じる」の合計)と回答した割合は、医師65.9%、看護師83.7%、医療技術職員66.9%、病院事務職員57.1%。「健康不安」を「感じる」(「非常に感じる」「まあ感じる」の合計)とする割合は、医師54.7%、看護師61.2%、医療技術職員53.0%、病院事務職員32.8%となっている。現在の勤務先で、この1カ月間において、医療事故につながるような、「ひやり」としたり、「はっと」したりした体験(ヒヤリ・ハット体験)が「あった」とするのは、医師が38.2%、看護師が54.4%、医療技術職員が30.7%となっている。

図表 職種別にみた業務負担感(単位=%)

図表画像

図表 拡大表示

※リンク先で拡大しない場合はもう一度クリックしてください。

※1:「負担あり計」は「非常に負担に感じる」「やや負担に感じる」の合計。「負担なし計」は「ほとんど負担に感じない」「あまり負担に感じない」の合計。「負担あり計」の上位3位、「負担なし」の上位3位に網。調査票上、医師調査の「宿日直」は、看護師調査では「交代制勤務」、「医療技術職員」では「交代制勤務の夜勤」と表記。医師調査の「診療」は、看護師調査、医療技術職員調査では「通常業務」と表記。医師調査の「若手医師に対する教育指導」は、看護師調査、医療技術職員調査では「若手(新人)に対する教育指導」と表記されている。

※2:医師調査の「負担あり計」で降順に並べ替えている。

本文

  1. 医療従事者の働き方とキャリアに関する調査 全文(PDF:3.4MB)

全文ダウンロードに時間が掛かる場合は分割版をご利用ください。

  1. 表紙・まえがき・調査実施者・目次(PDF:472KB)
  2. 第Ⅰ部 調査の概要(PDF:1.8MB)
  3. 第Ⅱ部 資料(PDF:1.5MB)

調査期間

平成23年度

執筆担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 調査・解析部主任調査員
奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査・解析部主任調査員補佐

関連の研究成果

問い合わせ等

問い合わせ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104

ご意見・ご感想

研究成果に関するご意見・ご感想はこちらの送信フォームから


Adobe Readerのダウンロード新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。Adobe Readerをダウンロードしても、PDFファイルが正常に表示されない場合は「閲覧に必要なソフトウェアについて」をご覧ください。