有識者からのご意見6
労働の面から時代を読み解く索引として
森 一夫 元日本経済新聞社特別編集委員

※このページは、平成26年4月3日発行の「メールマガジン労働情報」1000号特別編集号を転載したものです。

雑誌社などの様々な発信元から、いろいろなメールマガジンが送られてきます。その中で、「メールマガジン労働情報」はお世辞でなく、一番重宝しています。なぜなら雇用労働関係の基本的な情報がだいたい網羅されているからです。例えば、チェックすべき統計などを発表ごとに伝えてくれるので、手引きとして便利に利用しています。いちいち官庁や調査機関のホームページで探さなくて済みます。

詳しく知るには、記事に付けてあるリンク先のページを開けば、よいわけです。定期的に発表される雇用統計のようなものは新聞で概要を知ることができますが、各種のセミナーや講演会の案内は、主催者に当たらなければほとんどわかりません。これも「イベント」の項目を見れば、主なものはひろえます。

見落としてはならない、または見落としたくない情報は、「メールマガジン労働情報」によって、多少のタイムラグがあってもまとめて見られます。こうした記事は、たとえていえば必修科目か主食に相当します。一方、選択科目あるいは副食に相当するのが、「興味を引く調査物の記事や「コラム」などです。

前者の統計や審議会、イベントなどの情報は一通り目を通しておく必要があるので、数号さぼっても後で必ず読みます。しかし、もしも後者の選択科目や副食に当たる記事がよくなければ、退屈して全体の魅力は半減するでしょう。おかずがまずければ、主食のご飯も進まないのと同じです。

JILPTの研究員の方が書く「コラム」は、雇用労働問題への専門的な知見が背景にあるので、一味違う面白さがあります。国際研究部の方が現地での取材や体験に基づいて書いている「海外情報」も、独自性があって、なかなか読ませます。

ユニークな企業や技能者に興味がある私には、それに関連した調査物が時々載っている点が有難い。例えば日本生産性本部の「エンパワーメント大賞」企業や帝国データバンクの「100周年企業」、厚生労働省の「現代の名工」などは、それぞれのリンク先を開いて参考にしています。これらは「労働情報」としては周辺の情報なのでしょうが、少しはみ出したものもマガジンには欠かせない要素です。

もちろん「コラム」を含めて記事は、JILPTのホームページを開いて各項目に入って探せば読めます。しかしそれらを一括してメールマガジンとして逐次送ってくれるので、手間が省けて助かります。新聞社にいた時も、またフリーのジャーナリストとして仕事をしている今も、基礎的なデータやヒントを得る手掛かりとして役立てています。

欲を言えば、副食としてディベートを適宜入れてみてはいかがでしょうか。論争になっているテーマについて、賛否両論をかみ合わせて問題の所在や真相を浮き彫りにするというものです。一方的な主張は建設的ではありませんが、きちんと根拠のある硬い議論ならば意味があると思います。

その時々のキーワードを、改めて問い直して、いわば“労働用語裏表辞典”のようなものが結果的にできたら面白いかもしれません。例えば「賃金改善」とは何ぞや、「グローバル人材」の虚と実など、転換期なので候補はいろいろあると思います。

現行の基本的な構成、デザインについては、大きく変える必要はありませんが、細かな点で改善する余地はあると思います。「行政」「労使」「動向」などの項目をカラーにしたら、見出しや本文が黒い文字で埋め尽くされている今より見やすくなるのではないでしょうか。

「メールマガジン労働情報」は、労働の面から時代を読み解く索引の役割を担ってきました。これからも資料的な主食となる記事の部分をがっちり守りながら、視野を広げる副食を充実する方向を目指してください。ことの本質を外さない、よい意味での保守的な編集を望みます。

平成26年4月3日掲載