有識者からのご意見1
持ち味を活かした発信に期待
神津 里季生 日本労働組合総連合会事務局長

※このページは、平成26年4月3日発行の「メールマガジン労働情報」1000号特別編集号を転載したものです。

「メールマガジン労働情報」1000号の節目到達にあたり、これまで発行に携わってこられた皆さんに敬意を表します。

様々な課題を抱えるわが国の雇用と労働。政労使には、その解決・改善に向けて、それぞれの持ち場・立場で果たすべき役割があります。そして、それぞれの取り組みをつなぎ、研究と実践の場をつなぐことがJILPTの役割であり、そのつなぎ役の一つが、このメールマガジンであろうと思います。

とはいえ、実際には、つぶさに読む時間が必ずしも得られていないのが正直なところです。それでも気になる記事は後から探して目を通すようにしています。配信される内容も、例えば諸外国の法制度をめぐる動向や労働運動の動きを整理された形で見ることができますし、そこに含まれるJILPTならではの視点も示唆に富むものです。研究者あるいは労働運動・社会運動に関わる者をはじめ、3万を超える読者層を保っているのも、こうした点にあるのでしょう。

これからの労働情報メールマガジンに寄せる期待として、一つだけ申し述べさせて頂くとするならば、それは、3万という数にとどまらず、メールマガジン読者のすそ野を広げることを通じて、情報をさらに広げていくチャレンジへの期待です。

国内随一の雇用労働に関わるシンクタンクとしてのJILPTが蓄積されてきた研究成果や情報は、労使紛争の未然防止、安全で「風通し」の良い働きがいのある職場、そして健全な労使関係を構築する上で、礎となり得るものです。

また、「ブラック企業」という言葉に象徴されるすさんだ職場の存在は、その改善に取り組まねばならないことはもちろん、働く者にとって雇用労働にかかわるルールを身につける機会が今ほど求められている時はないことを示しています。

こうした意味からも、メールマガジンには、働くことや働くルールを啓蒙する媒体として、ますます役割を発揮して頂きたいと思いますし、学生や若者など、より多くの人びとに伝わる工夫をこらすことが有益であろうと思います。

近年、フェイスブックやLINEをはじめとするソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の台頭著しい中、もはやメールマガジンの時代ではないという声もあると聞きます。しかし、メールマガジンには豊富な情報を届けることができるという特長があります。SNSが持つ速報性や伝播力、メールマガジンによるきめ細かな情報、そしてホームページにおける厚みのある情報。それぞれの持ち味を組み合わせ、さらなる発信力の強化をはかられることを期待します。

いずれにしても、いかなる組織であれ、その発信力を高めることは重要な課題の一つです。私たち労働運動に携わる者も、運動の価値を広く世の中に伝え、社会から共感を得られるべく運動を進めていくこと、そのための発信力を磨くことに挑戦していかなければなりません。これからもJILPTの皆さんには、メールマガジンやあらゆる場面を通じて、あるときには労働運動への注文を、またあるときには運動の意義や価値を広く伝えて頂ければ幸いです。

平成26年4月3日掲載