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データベース(労働政策研究支援情報)

労働問題Q & A

法律上、労働時間とはどのように定義されていますか。

質問

「造船所に勤務していますが、就業規則により、作業の際には安全服に着替えることが要求されています。勤務先の1日の労働時間は8時間なのですが、この着替えは始業前や終業後にすることとされているので、着替え時間を含めると1日8時間を超えてしまうことが普通です。着替えは労働時間には当たらないのでしょうか。」


回答

ポイント
  1. 労働基準法上の労働時間に当たるか否かは、客観的に判断されるもので、就業規則などで労働時間とされた時間がそのまま法律上も労働時間と扱われるわけではありません。
  2. 労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間をいいます。

<労働時間の一般的定義>

「労働時間」という用語は、日常用語としては、休憩時間を含めたもの(拘束時間)を指すこともありますが、労働基準法上は、休憩時間を除いた実労働時間を指します。そして、そもそも「労働時間」とは何かをめぐっては、まず、労働時間に当たるか否かを労使当事者が就業規則や労働協約、あるいは個別労働契約により決められるかという問題が生じますが、労基法は当事者の合意に優先する強行法規であることから(13条)、労働時間該当性は、当事者の主観的な意思によっては左右できず、客観的に決まるものであるという理解が一般的です。最高裁も、こうした立場をとることを明らかにしています(最一小判平12.3.9 三菱重工業長崎造船所事件 労判778号11頁など)。

そうすると、次に、「労働時間」とは客観的にどのように定義されるのかが問題になります。この点については従来から様々な見解が唱えられてきましたが、上記の最高裁判決は、通説的な立場に従って、労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間であるとする見解(指揮命令下説)を採用しました(前掲・三菱重工業長崎造船所事件)。もっとも、「指揮命令下にある」か否かは微妙な場合も多くなりますが、この最高裁判決は、更衣等の作業準備行為に関して、そうした行為を事業所内において行うことを使用者から義務づけられ、またはこれを行うことを余儀なくされた場合には、当該行為は原則として使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるとしていますので、問題の行為に関する使用者の義務づけ(またはそれと同視される状況)が重視されるように思われます。その他に、問題となる行動がどの程度職務としての性格をもつかも考慮されるでしょう。

<具体的問題>

さて、実務上より重要なのは、具体的にどのような時間が労働時間とされるかです。そこでいくつか具体的類型を見てみましょう。

まず、店員が顧客を待っている間のいわゆる手待時間は、その間特に実作業を行っていなくとも、一般に労働時間に当たると解されています(大阪地判昭56.3.24 すし処「杉」事件 労経速1091号3頁)。ビル管理会社の従業員が管理・警備業務の途中に与えられる夜間の仮眠時間も、仮眠場所が制約されることや、仮眠中も突発事態への対応を義務づけられていることを理由に、労働時間に当たるとする判例が多くみられます(最1小判平成14.2.28 大星ビル管理事件 労判822号5頁 など。ただし、東京地判平11.6.12 JR貨物事件 労判653号12頁では、交替で警備を行っていた警備員について、仮眠時間中は職務上の義務を課していなかったとして労働時間性を否定しました)。なお、管理業務等の場合は、労基法41条3号の定める監視断続労働の許可を得れば、労働時間規制の適用が除外される場合があります(平5.2.24基発110号)。

次に、おたずねのような、実作業に入る前や作業終了後の更衣時間については、裁判例の結論が分かれていましたが、最高裁は、上でみたように、使用者が造船所の労働者に事業所内での作業服等の着脱を義務づけていた事案において、就業規則等の定めにかかわらず、そうした更衣時間は労働時間に当たると判断しました(前掲・三菱重工業長崎造船所事件)。ただし、最高裁は、そうした更衣に要する時間も「社会通念上必要と認められるものである限り」労働時間に当たるとして、一定の限定を付していますし、一般の事務職の制服についての更衣時間に関してこの判決の射程距離がどこまで及ぶかは、必ずしも明らかではありません。

さらに、研修や小集団活動(QCサークルなど)、あるいは運動会などは、所定労働時間外に行われることがありますので、これらが労働時間に当たるかが問題となります。最高裁の採用した指揮命令下説では、これらの活動が強制されたものかどうかが判断基準となるものと考えられますが、職務との関連性がどの程度あるかも考慮されるとの見解もありうるように思われます。 なお、いわゆる自発的残業や持帰り残業は、使用者の黙認や許容があった場合には労働時間となると解されています(大阪地判平成3.2.26 三栄珈琲事件 労判586号80頁など)。

いかなる場合に使用者の黙認や許容があったといいうるかは事実関係により異なりますが、一般には、自発的残業等をしないことを明示的に指示し、それが行われているときには中止を求めるなどの措置が必要だと思われます(ただし、定時に終わらせることが明らかに無理な量の業務を与えた場合には、そうした措置は形だけのものにすぎないと判断されることがありうるでしょう。上記の裁判例でも業務量が考慮の対象となっています)。

(慶應義塾大学教授 山川隆一)
※肩書きは執筆当時

2007年 4月更新

( 厚生労働省法令等データベースシステムにリンク )

( 厚労省サイトにリンク )

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