タイトル:雇用保険部会の中間報告について
発 表:平成14年7月19日(金)
担 当:厚生労働省職業安定局雇用保険課
電 話 03-5253-1111(内線5763)
労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長 諏訪康雄法政大学教授)に
おいては、平成14年4月5日以降、雇用保険を取り巻く状況が大きく変化する中で、
雇用保険制度の在り方について議論を重ねてきた。
今般、その結果を別添「雇用保険制度の見直しについて(中間報告)」としてとり
まとめた。
雇用保険部会としては、この内容を労働政策審議会職業安定分科会(分科会長 諏
訪康雄法政大学教授)に報告の上、引き続き雇用保険制度の在り方について議論を深
める予定である。
(報告の概要)
第1 雇用保険制度の現状
1 雇用保険制度の概要
2 適用給付等の現状
3 雇用保険財政の現状
第2 雇用・失業をめぐる動向
1 労働市場の動向
2 雇用対策の動向及び雇用保険制度
第3 雇用保険制度の見直しに当たっての視点
1 基本認識
○ 積立金は、(1)景気変動に対応し、好況期に資金を積み立て、不況期にこれ
を財源として使用することで収支を中長期的にバランスさせる、(2)年度当初
の保険料納期前の期間などにおける短期的な資金需要に対応する、という2つ
の機能を有するが、現在は積立金残高が大幅に減少。
このままでは、平成15年度中には積立金が枯渇することがほぼ確実。
○ 雇用失業情勢は当面厳しい状況が続くものと見込まれるとともに、それ以降
も、労働移動が確実に増加するほか、雇用就業形態の多様化が一層進展し、保
険料収入が減少傾向で推移するなど雇用保険制度を取り巻く構造的変化を踏ま
え、改めて雇用保険制度を給付・負担の両面から全面的に見直すことが必要。
等
2 留意すべき事項
○ 検討に当たっては、まず給付の在り方について、再就職を支援するという制
度の趣旨に適う者への給付に絞り込むなど、受給者の生活の安定及び早期再就
職の促進をはじめとする制度本来の機能が適切に発揮されるよう見直した上で、
必要な負担措置を検討することが重要。
○ 雇用保険制度は雇用政策の一環をなすものであり、その見直しについては、
雇用政策全体の方向性を十分に踏まえることが必要。さらに、職業相談・職業
紹介や職業能力開発等の「現物給付」の施策をどのように進め、それとの関係
で雇用保険給付という「金銭給付」の在り方をどうするかという視点が必要。
○ 倒産・解雇等により離職を余儀なくされた者と離職前から予め再就職の準備
ができるような者との相違や保険制度における給付の在り方を踏まえ、それぞ
れ公正・効率的な給付内容となるよう見直すことが必要。
○ 雇用保険制度は社会連帯に基づく相互扶助の強制保険であり、信認性を確保
するためには公平・公正性が求められるが、この公平・公正さは、様々な立場
の事業主や労働者の間で確保されることが必要。
等
3 見直しの視点
雇用保険制度の見直しに当たっては、1の基本認識及び2の留意すべき事項と
ともに、労使をはじめとする関係者の意見を十分に踏まえて対応することが必要。
これまで当部会においては、次の5つの検討事項に関連する論点に関して様々
な議論が行われてきたところであるが、今後さらにこれらの議論を深めていくこ
とが必要。
なお、以下は、今後新たな論点について議論することを妨げるものではない。
[5つの検討事項]
(1)能力開発を含めた、早期再就職の促進
(2)多様な働き方への対応
(3)再就職の困難な状況等への対応
(4)三事業の見直し
(5)安定した制度運営の確保と当面の対応
(1)能力開発を含めた、早期再就職の促進
イ 基本手当
○ 給付水準
(再就職時賃金等との関係、60歳時賃金日額の算定の特例等)
○ 所定給付日数
(前回改正後の状況変化、給付期間中の就職率との関係等)
ロ 失業認定等
○ 失業認定等基本手当の受給手続
○ 不正受給への対処
ハ 職業紹介等
○ 職業紹介、相談業務の在り方
○ 民間需給調整機関との積極的活用・連携、情報提供等の支援、カウン
セリング体制の整備等
○ 給付制限期間中の求職活動の支援
ニ 就職促進給付
○ 就業形態の多様化を踏まえた多様な形態による就労や多様なマッチン
グの支援と再就職手当との関係
○ 現行再就職手当及び常用就職支度金の見直し
(民間職業紹介所による紹介の取扱い等)
○ ハローワークによらない自由な求職活動を希望する求職者の取扱い
ホ 教育訓練・能力開発
○ 教育訓練給付や公共職業訓練の政策効果の検証
○ 教育訓練給付の対象講座、給付率、対象者、支給要件等
○ 公共職業訓練の機動的な訓練コースの設定・見直し
○ 公共職業訓練に対する的確な受講指示
○ 公共職業訓練受講者に対する職業指導、職業紹介等の徹底
(2)多様な働き方への対応
○ 就業形態に関する個々人の選択に対する中立性
○ 一般被保険者及び短時間労働被保険者の基本手当及び高年齢求職者給付
金の給付内容(所定給付日数、基本手当日額の下限額等)
(3)再就職の困難な状況等への対応
イ 基本手当等
○ 所定給付日数
(前回改正後の状況変化、給付期間中の就職率との関係等)[再掲]
○ 職業紹介・相談業務の在り方[再掲]
○ 民間需給調整機関との積極的活用・連携、情報提供等の支援、カウン
セリング体制の整備等[再掲]
○ 給付制限期間中の求職活動の支援[再掲]
○ 公共職業訓練の機動的な訓練コースの設定・見直し[再掲]
○ 公共職業訓練に対する的確な受講指示[再掲]
○ 公共職業訓練受講者に対する職業指導、職業紹介等の徹底[再掲]
ロ 雇用継続給付
○ 雇用が継続している者に対する給付と離職者に対する給付とのバラン
ス
○ 制度創設後の環境の変化
○ 高年齢雇用継続給付の受給要件、給付率等
(4)三事業の見直し
○ 各種給付金の政策目的に沿った実効性確保のための整理合理化
○ 本体給付に係る制度の見直しとあわせて、付帯事業として期待される
再就職の促進等の機能をより発揮する観点から、4つの対策分野(円滑
な労働移動の支援、安定した雇用の維持・確保の支援、良好な雇用機会
の創出の支援、労働力需給調整機能の強化)の区分を踏まえて重点化
○ 手法・運用面から、より活用される制度となるよう整理合理化
○ 不正受給の防止
○ 利用実績の上がっていない助成制度や政策効果の薄い助成制度の厳格
な見直し
(5)安定した制度運営の確保と当面の対応
○ 見直し後の給付面の在り方を前提とした負担面の見直し
4 当面の対応
○ 現行の制度の範囲内で実施することが可能な措置については、制度本体の改
正に先行して早急に実施に移すことが適当。
○ 特に次のような措置については、早急に実施すべき。
・ 雇用保険受給者に対して、民間職業紹介機関、労働者派遣機関をはじめと
する民間機関の活用に配慮しつつ、ハローワークにおいて、給付制限期間中
も含めて求職活動に対する積極的な支援を行う。
・ ハローワークの情報について、インターネットを活用し、求人等の情報提
供機能の強化を図り(求人企業名の公開等の実施)、自ら積極的に求職活動
を行おうとする者を支援する。
・ ハローワークにおけるカウンセリング機能の充実を図る。
・ 基本手当が制度の趣旨に適う求職者に給付されるよう、失業の認定におい
て、求人への応募等の求職活動を一定回数以上行った実績を確認できた場合
に支給するとともに、給付制限期間中の求職活動実績を初回の失業認定に当
たって考慮するなど失業認定の厳格化を図る。この場合、民間需給調整機関
による職業紹介等の実績を活用する。
・ 教育訓練給付の対象講座を雇用の継続、安定に資することが明確であるも
のに限定するとともに、政策効果を客観的に検証し、指定基準についてさら
なる見直しを行う。
・ 公共職業訓練について、政策評価を行いつつ、訓練ニーズの変化に対応し
た機動的な訓練コースの設定・見直しを行うとともに、的確な受講指示、訓
練受講者の就職支援を推進する。
・ 未適用事業所に対する適用促進を着実、迅速に進める。
・ 不正受給事案の把握に努め、確認された事案に対し厳正に対処する。
○ 以上の運用改善を実施するほか、総合雇用対策等に基づく雇用対策を迅速か
つ適切に実施することを前提として、雇用保険制度のおかれている現下の状況
にかんがみ、制度上予定されている収支改善措置である弾力条項については、
可能な限り早急に発動することはやむを得ないものと認める。
5 今後の対応
○ 現時点では、1の基本認識及び2の留意すべき事項においては関係者が認識
を共有しているが、個別の検討項目においては十分具体化が進んでいない部分
があり、関係者の意見に相当程度の乖離が見られる部分もあることから、第1
及び第2の事実を踏まえ、3の見直しの視点等を基に、今後さらに具体的な検
討を深めることが必要。
○ 4の当面の対応として一致を見た事項については、厚生労働省においてでき
るだけ速やかに成案を得、必要なものについては労働政策審議会への諮問等所
要の手続を経て逐次実施に移すべき。
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