タイトル:「外国人雇用問題研究会報告書」の取りまとめについて



発  表:平成14年7月5日(金)

担  当:厚生労働省職業安定局外国人雇用対策課

                  電 話 03-5253-1111(内線5766)

                      03-3503-0229(夜間直通)

 このたび、外国人雇用問題研究会(座長 岩村正彦 東京大学教授)において、

我が国の外国人労働者の現状と課題に関する報告書が取りまとめられたので、その内

容を公表する。



1 研究会開催の背景・目的



 経済のグローバリゼーションに伴い世界的な人材獲得競争が起きている一方で、少

子・高齢化が進展する中、我が国の経済社会の活力の維持や人口減少に伴う労働力不

足への対応など様々な課題が浮かび上がってきており、外国人労働者受入れをめぐる

議論が高まってきている。また、我が国における外国人労働者の多様化が進む中、そ

の就労や生活をめぐっての様々な課題も生じてきている。このような新たな状況を踏

まえ、改めて外国人労働者問題について様々な観点から検討を深めておくことは重要

である。  

 このような問題意識の下、主として、労働力政策、外国人労働者受入れ政策の面か

ら外国人雇用問題について幅広く意見交換を行うため、厚生労働省職業安定局では、

学識経験者(別添1参照)の参集を求めて外国人雇用問題研究会を開催し、議論を行

ってきた。





2 研究会での検討内容



 研究会では、多岐にわたる論点について活発な議論が行われ、外国人労働者をめぐ

る問題について取り組むべき課題も多岐にわたることが明らかとなった。

 本研究会においては、まず、外国人労働者に関する問題と課題(とりわけ1990

年の入管法改正以降について)、外国人労働者受入れの在り方についての議論

の中でとかく欠落しがちな、前提・基本として考えておかなくてはならない事

項、具体的な制度を検討する場合に考えるべき項目・視点、についての整理が行

われた。

 また、我が国は外国人労働者受入れの経験が少ないことから、参考となる諸外国

の現在の受入れ制度とその運用の実態を整理するとともに、我が国が外国人労働

者受入れ制度を見直す場合の考え方や想定される受入れの在り方についても検討

された。  

 本報告書は、研究会におけるこのような整理・検討の結果を取りまとめたものであ

る(要旨は別添2)。





3 本報告書のポイント



 第1章 国際的な労働移動をめぐる環境の変化



    グローバル化の進展や少子・高齢化の進展等を背景とした近年の国際的な労

   働移動をめぐる環境の変化について整理。



 第2章 外国人労働者受入れ制度の見直しの必要性



    第1章に述べた環境変化への対応や現行制度が想定していた受入れの姿と実

   態の乖離等、現行の外国人労働者受入れ制度下における問題点及び課題を整理。

   それらにどう対応していくかについて、対応の仕方は我が国の今後の在り方等

   をどう想定するかによって異なってくるが、一つの選択肢として我が国の外国

   人労働者受入れ制度の見直しを検討することとした場合に考慮すべき点として、

   3つの留意点と7つの基本的事項を提起。(別添2の2ページ参照)



 第3章 外国人労働者受入れ制度を考えるに当たっての視点



    具体的に外国人労働者受入れ制度を考えるに当たっての視点を次のように整

   理。



    (1)受入れの範囲を検討する際の視点(どのような外国人労働者を受け入れ

     るのか、どのようなニーズが存在するのか、国内にどのような影響をもた

     らすのか等)



    (2)受け入れられる外国人労働者の質と量に影響を及ぼす要因を検討する際

     の視点(家族の呼び寄せの在り方、在留期間の設定方法、社会的統合のた

     めの施策の在り方等)



    (3)受入れの仕組みを検討する際の視点(受入れニーズを労使等関係者から

     定期的・効果的に把握する体制整備、制度の利用者にとっての利便性、行

     政運営にとっての効率性、不法就労対策などによる制度の実効性の担保等)



 第4章 各国の外国人労働者受入れ制度の比較



    第3章で整理した視点を踏まえて、諸外国の制度の仕組みとその運用の実態

   を整理し、各制度のメリット・デメリットについて検討。



 第5章 想定される我が国の外国人労働者受入れの在り方



    第4章までに示された論点を踏まえ、受入れ制度の見直しを行った場合に想

   定される外国人労働者受入れの在り方について検討。

    一つの整理として、(1)経済社会の活性化のための高度人材の獲得、

   (2)労働力不足への対応の二点を受入れの目的として想定。

    (1)経済社会の活性化のための高度人材の獲得については、我が国経

   済社会が発展するための一種の「起爆剤」となり得る高度な技術・知識を有す

   る卓越した人材(「高度人材」)の獲得のために、次のような積極的な措置を

   講ずべき。



     (1)既存の入国及び在留にかかる手続の障壁を限りなくゼロに近づけ

      

     (2)外国人労働者及びその家族の入国・在留等について優遇措置を講

      じる

     (3)出入国管理制度以外の外国人労働者関連諸施策について受入れ促

      進措置を講じる





    (2)労働力不足への対応については、国内労働者の雇用に対する影響等

   への対処など外国人労働者受入れの前に講じるべき諸施策の実施を前提として、

   受入れの在り方について検討。受入れ制度としては、以下のような制度が考え

   られる。

    (1)労働市場テスト、(2)受入れ上限の設定、(3)金銭的負担等を課す受

   入れ、(4)協定方式等による受入れ

    なお、人口減少対策としての、労働者に限定されないいわゆる「移民」の受

   入れについても併せて検討。





4 本報告書の狙い



 本報告書は、今後、我が国の外国人労働者の受入れの在り方をめぐって各方面にお

いて活発な議論がなされることを期待して取りまとめたものである。

 外国人労働者の受入れの在り方については、長期的な幅広い視点からの国民

的議論が行われることが必要であり、本報告書はそうした議論に寄与し、議論

に必要な様々な材料を提供することを狙いとしている。

 今後、厚生労働省としては、国民的な議論の動向を見極めつつ、本報告書に盛り込

まれた内容を踏まえ外国人労働者の受入れに伴う社会的統合の在り方とそれにかかる

コスト負担の問題や受入れ制度・施策などの在り方について更に調査・研究を進める

とともに、必要に応じて、関係省庁とともに、外国人労働者の受入れの在り方につい

ての検討を深めていきたいと考えている。





  参考) 我が国で就労する外国人(推計)

     就労目的外国人の在留状況

     日系人等の労働者数の推移

     国籍(出身地)別 不法残留者数の推移

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