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今後の社会保障改革の方向性に関する意見
―21世紀型の社会保障の実現に向けて―

III 社会保障改革の基本的視点

 ○ 社会保障改革を進めるに当たっては、今後、少子高齢化が進んでいく中にあっ
  て、「国民生活の安定」などに社会保障が果たすべき機能を維持していくことが
  基本である。この場合、今日の社会保障は、国民皆保険、皆年金といった制度に
  より、特定の者に限らず、全ての国民を対象とする普遍的な施策として国民の安
  心感を支えていることに留意する必要がある。

 ○ 社会保障が果たすべき機能を維持するためには、何よりも社会保障制度自体に
  ついて将来にわたる持続可能性を確保する必要がある。個別の制度改革もこうし
  た持続可能性の確保を大きな目標として進められているが、制度横断的な改革の
  視点として、(1)社会経済との調和、(2)公平性の確保、(3)施策・制度の総合化
  が重要である。

 ○ まず、「社会経済との調和」については、経済構造の変化や国際競争の激化等
  経済や雇用環境の変化、急激な少子高齢化、ライフスタイルの変容など、様々な
  社会経済の変化の中で、社会保障制度をこれらに適合したものとしていく必要が
  ある。その際、社会保障が本来果たすべきセーフティネットとしての機能が損な
  われることのないよう留意しつつ、給付と負担の両面から、経済・財政とのバラ
  ンスが図られるよう、不断の見直しを進めていくことが求められる。

 ○ 「公平性」については、世代間、世代内に限らず、男女間、職業間、制度間な
  ど様々な側面でその確保が求められる。こうした観点からは、急激な人口変動の
  中で、特定の世代に過重な負担とならないように、また、ライフコースを通じて
  社会保障制度が個人の選択に中立的であるとともに、特定の時期に給付や負担が
  偏らないようにしていくことが重要である。さらに、国民皆保険・皆年金体制を
  堅持していくためにも、国民年金等の未納・未加入の解消等制度に対する信頼を
  確保していくための徴収強化の取組が必要である。

 ○ 「施策・制度の総合化」については、年金、医療、介護といった各制度間の給
  付や負担の整合性や、給付と負担が全体としてどの程度になるのかという問題、
  負担を支える若い世代を念頭に置いた「多様な働き方への対応」や「次世代育成
  支援」との相互連関を踏まえながら対応していく必要がある。

 ○ 「高齢社会への対応」、「多様な働き方への対応」、「次世代育成支援」は、
  それぞれ固有の政策目的を持つものではあるが、相互に支え合う関係にある。例
  えば、高齢者、女性、障害者等の就労促進、若年者雇用の安定確保、さらに、次
  世代育成支援に取り組むことは、中長期的にみれば社会保障制度の基盤の安定化
  にもつながる。また、年金等の制度改革の中で就労形態の多様化への対応や育児
  期間への配慮等を行うことは、多様な働き方や生涯現役社会の実現、次世代育成
  支援に資することにもなる。

 ○ こうした相互関係を念頭に置きつつ、社会保障とともに国民生活に密接な関わ
  りのある住宅施策や教育施策との連携も視野に入れ、それぞれの政策を進めてい
  くことにより、全ての世代にとって、より豊かな生活、多様なライフコースの選
  択が可能な社会の実現に資することが可能となる。こうした「生活保障改革」と
  もいうべき視点も踏まえ社会保障改革を実現していくことを考えるべきである。

 ○ このような改革を進めることにより、社会経済の構造的変化に対しても持続可
  能であり、多様化する国民の生活を支えるセーフティネット機能が維持できる2
  1世紀型の社会保障の実現を図っていくことができる。

 ○ なお、改革の実現、さらに制度運営に当たっては、広く国民の意見を求めるな
  ど参画の機会を設けることにより、国民の理解と納得の下で合意が得られるよう
  十分に配慮する必要がある。また、その際、社会保障に関する国の責任と役割に
  ついて、改めて明確にすべきとの意見があった。

 ○ さらに、今後の人口減少社会を念頭に置けば、外国人労働者の受け入れと、社
  会保障制度における位置づけについて検討することが必要であるとの意見があっ
  た。

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