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今後の社会保障改革の方向性に関する意見
―21世紀型の社会保障の実現に向けて―

II 社会保障の給付と負担

(1)マクロベースで見た給付と負担

 ○ 我が国の社会保障給付を全体としてみた場合、国民皆保険、皆年金という形で
  全ての国民を対象に、欧米諸国と比較しても遜色ない水準を実現している。

 ○ その構成をみると、概ね、年金が5割、医療が3割、福祉その他(介護を含
  む)が2割となっている。

 ○ 一方、厳密な比較は難しい面があるが、現在の我が国の社会保障給付費は、年
  金の成熟化などが既に進行した欧州諸国と比較して「高齢」関係給付の比重が高
  い。一方、「児童・家族」関係給付の割合は欧州諸国と比較して低い。

 ○ 次に、給付を支える社会保障の国民負担をみた場合、我が国の社会保障の国民
  負担の水準は、2002年度現在、82兆円、対国民所得比で221/2%となっ
  ている。また、社会保障以外の支出に係る税負担も含めた国民負担率(国民所得
  に対する租税及び保険料負担の割合)でみると約37%となっている。これらの
  マクロの負担水準は、欧州諸国と比較すると相対的に低くアメリカより高い。

 ○ 今後、急速な少子高齢化の進展に伴い、2025年度には、社会保障の国民負
  担の水準は、対国民所得比で321/2%となると見込まれるが、これは、現在の
  イギリス、アメリカよりは高く、その他の欧州諸国の水準よりは低い。

(2)ライフコース・家計から見た給付と負担

 ○ これまで、社会保障に係る給付と負担の議論は、マクロベースでの議論が中心
  であった。しかしながら、給付と負担を議論する際には、国民にとってわかりや
  すく、生活実感の伴う「ライフコース」や「家計」の視点に立って考えてみるこ
  とも必要である。

 ○ 生涯にわたる人生の選択であるライフコースという視点からみると、給付につ
  いては、年金等の現金給付が大半を占める高齢期に手厚く、負担については、所
  得の増大に伴い社会保険料や税が増大するため、子育てや教育に費用がかかる現
  役期に重くなっている。

 ○ また、被用者の社会保険料水準をみると、現在は、本人負担分と事業主負担分
  がそれぞれ約12%、合計して約23%、現行制度のまま推移するとした場合、
  2025年には、本人負担分と事業主負担分がそれぞれ約18%、合計して約3
  6%程度に上昇すると見込まれ、保険料率を見る限り、現在の欧州諸国並の水準
  である。なお、このように保険料率を比較することについて、各国における賃金
  水準の相違があることから、保険料率の高低のみでもって比較するのは適切でな
  いとの強い意見があった。

 ○ 家計に占める社会保険料・税の負担は、平均的な勤労者世帯でみれば、現在2
  割弱となっている。今後、高齢化の進展等に伴い、社会保険料や税などの公的負
  担は増大するが、大胆な仮定の下に推計すると、2025年時点においても社会
  保険料や税という公的負担は3割弱と約1.5倍になる。

 ○ この場合、家計の状況は、例えば、教育費の負担は40〜50歳台で大きく、
  住宅費の負担は30歳台で大きいなど世帯主の年齢によっても異なり、また、世
  帯における働き手の数によっても、その厳しさに差異が生じることに留意する必
  要がある。ちなみに、欧州諸国の場合には、30歳台の女性の労働力率は日本が
  約60%であるのに対し、いずれも80%に近い水準になっている。

 ○ なお、家計の負担を考える際には、社会保障サービスに係る利用者負担(自己
  負担)の水準についても配慮することが必要であるとの意見があった。

 ○ 今後、女性の労働力率の上昇、雇用形態の変化等、家計を取り巻く環境が大き
  く変化することが見込まれる中で、ライフコースや家計という視点から給付と負
  担の在り方を議論する場合には、生涯の特定の時期に過重な負担とならないよう
  に、また、家計の消費・貯蓄行動を展望しつつ、働き方の見直しや教育・住宅施
  策との相互連関も踏まえながら考える必要がある。

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