タイトル:建設業人材育成推進研究会報告書について
発 表:平成10年6月17日
担 当:職業能力開発局民間訓練促進室
電 話 03-3593-1211(内線5923)
03-3502-6956(夜間直通)
建設業は我が国の基幹産業として大きな位置を占めているが、建設投資の低迷や国
際化による競争の激化等建設業を取り巻く環境が大きく変化する中で、施工方法の高
度化等に対応できる技能労働力を確保し、生産性の向上を図るなど職業能力開発の面
からみた課題も多く、中長期的な視点に立って人材育成を推進していく必要がある。
このため、学識経験者等の参集を求め、職業能力開発局長の私的研究会として「建
設業人材育成推進研究会」を開催し、建設業における職業能力開発の現状と課題、様
々な環境変化の中で求められる技能労働者像等を把握し、それを踏まえた今後の職業
能力開発に資する方策の検討を目的として調査研究を実施した。
今般、同研究会の検討結果を報告書として取りまとめたので、その内容を公表する。
報告書のポイント
1 調査研究の視点
生産性の向上、施工方法の高度化等の課題への的確な対応、技能労働者の処遇の
向上等を図る観点から、多能工と職長の育成を中心的なテーマとした。
2 多能工の育成
多能工育成の目的としては、@生産性の向上、A事業範囲の拡大、B仕事の繁閑
への対応力向上、C技術革新・新工法に対する適応力の向上が主なものであり、特
に総合工事業者では「生産性の向上」を挙げる企業が多い。
また、多能工には次の3つの類型が考えられるが、
@ ある程度独立した複数の職種の技能を習得
A 密接に関連した複数の職種の技能を習得
B 前後の工程など周辺の技能について補助的作業が行える程度に取得
職別工事業者ではB、総合工事業者ではこれと併せAの多能工の育成が必要である
としている。しかし、いずれも多能工育成上の障害として時間がかかりすぎること
を挙げている。
3 職長の育成
従来の職長とは、技能労働者のうち労働者の監督・指導、仕事の段取りなど現場
管理の職務に従事する役付きの者を指すが、今後は「元請けから請け負った工事に
関して、責任をもって自主的な管理・検査や技術者との施工方法等の調整などがで
きる」新たな職長育成の重要性が一層増してくる。
また、職長が作業現場における技能労働者の育成に重要な役割を果たすことから
効果的な指導のできる職長の育成が、円滑な技能労働者の育成につながる。
職長の育成については、@教育訓練にあてる時間がない、A人員に余裕がなく作
業に支障をきたすことが主な障害となっている。また、総合工事業者では、下請業
者が育成する場合には、@教育訓練に関するノウハウや教材がない、A教育訓練を
行える講師等がいないことを障害として挙げる企業も少なくない。
4 今後の方策
(1)認定職業訓練(注)は、これまで技能労働者の育成・確保に重要な役割を果たし
てきたが、今後は、一定以上の訓練生を確保しスケールメリットを活かしつつ、
多能工養成訓練コースなど個別の職別工事業者では実施が難しい職業訓練を充実
させることが重要であり、広域的な認定職業訓練の促進や認定職業訓練施設の相
互連携等に対する支援の充実を図っていくことが必要である。
(2)技能労働者の育成では、OJTによる訓練が大きな位置を占めているが、実際
の指導にあたる個々の職長の経験に依存している部分が多く、効率的・効果的な
方法が一般的に確保されているとはいえない状況にある。そのため、具体的な事
例の収集・分析や職長の役割の明確化等を通じて、計画的なOJTの方法を確立
し、指導方法のマニュアル等の提供により普及を図っていくことが重要である。
(3)建設業界が一体となった職業能力開発の推進に資するため、教育訓練内容・講
師・指導方法等についての情報・ノウハウの提供に努めることが求められる。
(4)高度な職業能力開発への対応として、産業界との連携を重視した高度な実践的
教育を行う私立大学として「国際技能工芸大学(仮称)」の設立が準備されてい
るが、建設業との関係では、元請けの事業所長や主任技術者、あるいは施工管理
のできる職長クラスの育成に大きな力となることが期待されている。
また、職長となる人材の育成のために、職業訓練の高度化を推進していくこと
が重要であるが、公共職業訓練についても建設施工システム技術科などの応用課
程を加えた職業能力開発短期大学校の「大学校化」が進められており、今後、そ
の機能を十分に発揮していくことが望まれる。
注)事業主等の行う職業訓練のうち、教科、訓練期間、設備等について労働省令で定
める基準に適合して行われているものは、申請により訓練基準に適合している旨の
都道府県知事の認定を受けることができ、この認定を受けた職業訓練を認定職業訓
練という。
報告書の骨子
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