III 調査結果 |
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1 賃上げ等の額及び率 |
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(1) |
平成11年中における常用労働者
100人以上の企業の賃上げ等の状況(10〜12月実施予定を含む。)をみると、労働者数による加重平均で(以下の記述について同じ。)、賃上げ等の額は
4,591円(前年 6,079円)、賃上げ等の率は 1.7%(同 2.3%)と額・率とも調査開始以来、最低となっている(第1表、第1図)。 |
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(2) |
企業規模別にみると、規模が小さくなるほど賃上げ等の額・率は低くなっている。
前年と比べると、すべての企業規模で賃上げ等の額・率とも前年を下回っている。
また、1人平均賃金を引き上げる企業の引上げ額は5,565円、引上げ率は2.0%、1人平均賃金を引き下げる企業についての引下げ額は13,644円、引下げ率は4.0%となっている(第2表)。 |
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(3) |
産業別にみると、賃上げ等の額は、電気・ガス・熱供給・水道業が
5,340円で最も高く、次いで、不動産業の 5,239円、製造業の 5,198円の順となっている。また、賃上げ等の率は、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、卸売・小売業,飲食店が
いずれも1.9%となっている。
前年と比べると、賃上げ等の額・率はすべての産業で前年を下回っている(第3表)。 |
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(4) |
平成11年中に賃上げ等を実施しない企業割合は全体の14.3%であり、賃上げ等を実施しない企業について、その理由をみると、「企業業績の悪化」が70.5%と最も高く、「雇用の安定を優先」が18.9%、「その他」が8.6%となっている。
また、1人平均賃金を引き下げる企業割合は全体の3.8%であり、1人平均賃金を引き下げる企業について、その理由をみると、「企業業績の悪化」が87.1%と最も高く、「その他」が8.4%、「雇用の安定を優先」が4.5%となっている(第4表)。 |
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(5) |
平成11年中に何らかの形で1人平均賃金の減額措置を実施した企業について、その実施状況(あてはまるもの全ての複数回答)をみると、「諸手当の減額」企業割合が63.3%、「基本給の減額」企業割合が53.1%となっており、このうち「賃金カットの実施により減額」企業割合が36.0%、「賃金表の改定等により、賃金水準を引き下げた」企業割合が26.2%となっている。また、賃金カットを実施した企業については、「ベア、定昇等を実施した」企業割合が23.6%、「ベア、定昇等を実施しない」企業割合が12.4%となっている(第5表)。 |
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2 賃上げ等の額及び率のばらつき |
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賃上げ等の額及び率の企業間のばらつきの程度を四分位分散係数でみると、賃上げ等の額では
0.528(前年 0.379)、賃上げ等の率では 0.470(同 0.344)と前年に比べともに0.1ポイント強上昇し、現行の集計を行っている昭和46年以降最大となっている(第6表、第2図)。 |
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3 賃上げ等の実施割合及び実施時期割合 |
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(1) |
平成11年中に賃上げ等を実施又は予定している企業割合は80.6%で、現行の集計方法とした昭和57年以降最低となり、賃上げ等を実施しない企業割合も14.3%と本調査で調査項目とした昭和50年以降最高となっている。なお、1人平均賃金を引き上げる企業割合は76.8%、1人平均賃金を引き下げる企業割合は3.8%となっている。
また、企業規模別にみると、規模が小さいほど賃上げ等を実施又は予定している企業割合は低くなり、すべての規模で前年を下回っている(第7表)。 |
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(2) |
賃上げ等を実施した企業及び賃上げ等を予定し額も決定している企業の割合は全企業の78.3%であるが、このうち、複数年協定等により話し合いを行わなかった企業を除いた企業について、賃上げ等の決定時期を月別にみると、4月に決定した企業(36.1%)が最も多く、次いで、3月に決定した企業(26.1%)、5月に決定した企業(20.3%)となっている。企業規模別にみると、5,000人以上の規模では3月に決定した企業割合が最も多くなっている(第8表)。 |
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4 ベアの実施状況 |
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1人平均賃金を引き上げた企業について、ベアの実施状況をみると、「ベアと定昇を区別しなかった」企業割合が47.9%、「ベアと定昇を区別した」企業割合が52.1%となっており、このうち「ベアを行った」企業割合は21.4%、「ベアを行わなかった」企業割合は30.7%となっている。産業別にみると、「ベアを行わなかった」企業割合は「金融・保険業」(63.3%)、「鉱業」(57.7%)で高くなっている(第9表)。
前年と比べると、「ベアを行った」、「ベアと定昇を区別しなかった」企業割合が低下し、「ベアを行わなかった」企業割合が上昇している。 |
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5 個別賃金方式による賃上げ等の額・率及び属性別状況 |
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平成11年中に何らこの形で個別賃金方式により賃上げ等を実施した企業及び賃上げ等を予定し額も決定している企業の割合は、7.2%となっており、賃上げ等の額は、定昇込み額
5,739円、ベア額 1,485円で、賃上げ等の率は、定昇込み率 2.1%、ベア率
0.5%となっている。「年齢30歳、勤続年数12年」(個別賃金方式に占める企業割合
17.3%)では定昇込み額 5,656円、ベア額 2,338円、定昇込み率 2.1%、ベア率0.8%、「年齢35歳、勤続年数17年」(同
13.0%)では定昇込み額 6,057円、ベア額 801 円、定昇込み率 2.1%、ベア率
0.3%となっている(第10表)。 |
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6 複数年協定の実施状況 |
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複数年協定を結んでいる企業割合は、全体の
1.5%となっている。このうち、5,000人以上の規模での企業割合は3.0%となっている(第11表)。 |
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7 賃上げ等と賞与との決定状況 |
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賃上げ等と賞与との決定状況をみると、「賃上げ等と賞与支給額を同時期に決めた」企業割合は34.4%となり、このうち「夏のみの賞与支給額を決めた」企業割合は11.3%、「夏と冬の両方の賞与支給額を同時期に決めた」企業割合は23.1%となっている。賃上げ等と賞与支給額の重点の置き方は「どちらとも言えない」とする企業割合が高くなっている。
企業規模別にみると、規模の大きいほど「賃上げ等と賞与支給額を同時期に決めた」企業割合が高くなっている。
前年と比べると、「賃上げ等と賞与支給額を同時期に決めた」企業割合が上昇している(第12表)。 |
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8 賃上げ等の決定事情 |
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(1) |
賃上げ等に当たり最も重視した要素をみると、「企業業績」をあげた企業が81.5%(前年76.5%)と最も多く、次いで、「世間相場」が10.6%(同14.0%)、「労使関係の安定」が
1.7%(同 3.2 %)、「労働力の確保・定着」が1.4%(同2.9%)となっている。本調査の調査項目とした昭和45年以降で、「企業業績」の割合は最高となり、また、「世間相場」の割合は最低となっている(第13表、第14表、第3図)。
企業規模別にみると、すべての規模で「企業業績」をあげた企業が最も高くなっている(第13表)。 |
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(2) |
「世間相場」をあげた全ての企業(最も重視したものを1つ、そのほかに重視したものを2つまでの最大3つまでの複数回答による。)を対象として、賃上げ等に当たり世間相場として最も参考にした企業の種類をみると、「同一産業同格企業」が44.9%(前年45.1%)と最も多く、次いで、「系列企業」が20.6%(同19.8%)、「同一地域企業」が12.1%(同
14.7%)となっている(第15表)。
「他産業」をあげた全ての企業は 17.4%であるが、賃上げ等に当たりこれらの企業がどの産業を最も参考にしたかをみると、「電機」が32.0%と前年(22.1%)に比べ上昇し、2年ぶりに最も多くなり、以下、「鉄鋼」が15.3%(前年21.3%)、「自動車」が13.6%(同30.8%)などとなっている(第16表)。 |
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9 人件費増加対策 |
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人件費増加に対し、企業が当面どのような対策に力を入れるかをみると、最も力を入れる対策として 「売上高の増加、新製品の開発」をあげた企業が33.7%(前年33.8%)で最も多く、次いで「人員削減、欠員不補充」が14.1%(同14.8%)、「諸経費等コストの削減」が13.7%(同17.5%)、「職能給、職務給、能率給の採用・拡大など賃金制度の改正」が12.8%(同
8.7%)の順となっている。
前年と比べると、「職能給、職務給、能率給の採用・拡大など賃金制度の改正」が
4.1%ポイント上昇したほか、「パートタイム労働者への切替え、下請、派遣労働者等の活用」などの割合が上昇している。なお、「職能給、職務給、能率給の採用・拡大など賃金制度の改正」、「パートタイム労働者への切替、下請、派遣労働者等の活用」は、調査を開始した昭和47年以降最も高くなっている。一方、「諸経費等コストの削減」、「労働力節約のための機械設備等の導入、拡大」などの割合が低下している(第17表)。 |
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10 労働条件の改善に関する話合いの状況 |
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平成11年9月までの1年間に労働時間対策、高齢者雇用対策等の労働条件の改善に関して労働組合又は労働者との話合いを行った企業の割合は71.9%(前年70.5%)と前年を上回ったが、「うち賃金改定時に話合いあり」は14.5%(同15.9%)と同年を下回った。話合いの内訳をみると、「介護休業制度」が38.5%(同16.7%)、「育児休業制度」が29.7%(同16.5%)、「年次有給休暇の付与日数の引上げ及び取得促進」が27.6%(同15.4%)、「所定外労働時間の抑制」が27.4%(同26.6%)、「賃金制度」が27.0%(同29.9%)などとなっている(第18表)。
話合いを行った企業のうち、話合いの結果、合意(一部変更して合意したものを含む。)に達した企業の割合が高いのは「育児休業制度」(92.1%)、「介護休業制度」(90.7%)などとなっている。なお、前年と比べると「育児休業制度」、「介護休業制度」などの企業割合が上昇している(第18表)。 |