タイトル:平成10年技術革新と労働に関する実態調査結果速報

     コンピュータ機器の使用に伴い

     ○精神的な疲労やストレスを感じている労働者は約36%

     ○身体疲労・自覚症状のある労働者は約78%

      

発  表:平成11年7月26日(月)

担  当:労働大臣官房政策調査部

              電 話 03-3593-1211(内線5676)





I 調査の概要





1 この調査は、情報通信等の技術革新の進展に伴う労働態様の変化、それに対する

 労働者の適応、事業所における職場環境や労働者の衛生管理等の実態を把握するこ

 とを目的とし、平成10年11月に実施したものである。



2 調査対象は、日本標準産業分類による鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供

 給・水道業、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業、不動産業及び

 サービス業に属する常用労働者を30人以上雇用する民営事業所のうちから一定の方

 法で抽出した約12,000事業所(有効回答率84.7%)並びにこれらの事業所に雇用さ

 れている事務管理等部門の労働者のうちから一定の方法で抽出した約12,000人(同

 70.1%)を対象とした。



3 調査の内容は、原則として平成10年10月31日現在の状況である。





II 調査結果の概要





  【骨子】

 〔事業所調査〕





1 コンピュータ機器の導入状況等



 (1) 事務管理等部門においてコンピュータ機器を導入している事業所は97.6%

    となっており、そのうち95.1%の事業所がパソコンを導入している

    (第1表第2表)。	



 (2) パソコンをネットワーク化し使用している事業所は、38.7%であった

    (第4表)。



 (3) 過去5年間にコンピュータ機器の導入に伴い労働条件面を「変更した」と

    する事業所は16.5%であり、そのうち「労働時間を短縮した」ものが81.1%

    であった(第6表)。



 (4) コンピュータ機器の使用に伴って「目の疲れ、肩のこり等の身体的な疲労

    を訴える者が増えた」と認識している事業所は28.5%、また、「精神的スト

    レスを訴える者が増えた」と認識している事業所は5.4%であった(第9表)。

	





2  VDT関連



 (1) 「専用の作業室、作業区画」を有する事業所で「照明、採光対策」を実施

    しているとする事業所は、90.7%であった(第11−1表)。



 (2) VDT(Visual or Video Display Terminals)作業の時間管理を行って

    いる事業所は15.3%、また、専任VDT作業者がいる事業所についても35.1%

    となっている(第12−1表)。



 (3) VDT健康診断を実施していない事業所は90.1%となり、実施していない

    理由の59.8%は「通常の定期健康診断で十分と考えているから」であった

    (第13表)。	



 (4) VDT作業従事者に対する労働衛生教育を実施している事業所は、9.6%

    となっている(第14−1表)。







3 ME機器等 

	

 (1) 生産現場がある事業所においてME(micro-electronics)機器等を導入

    している割合は、51.8%となっている(第16表)。



 (2) ME機器等の導入に伴って安全衛生面での特別な対策を実施している事業

    所は80.6%となっており、そのうち70.2%の事業所が「事前に安全性を評価

    している」としている(第18表)。



 (3) 過去3年間にME機器等によって、「労働災害があった」事業所は8.0%

    であり、その災害の52.2%は「通常の稼動中」に発生している。また、発生

    原因をみると「人為的ミス」が93.6%、「機器・システム等の欠陥」は4.5%

    となっている(第19−1表第19−2表)。

	





 〔労働者調査〕







 (1) 事務管理等部門において仕事でコンピュータ機器を使用している労働者は、

    90.2%であった。

          また、使用している割合が最も高い年齢層は30〜39歳で94.5%となってい

        る(第20表)。



 (2) 1日当たりVDT作業を行う時間は「2時間以上4時間未満」とする割合

    が最も多く29.6%、次いで「1時間以上2時間未満」23.4%となっている

    (第25表)。



 (3) 職場のコンピュータ機器及びソフトウェアの導入状況に「変化があった」

    とする労働者は、92.1%であったが、そのうち65.4%が「実労働時間は変わ

    らない」としている(第26-1表)。



 (4) コンピュータ機器を使用する仕事に「適応できていない」とする労働者は、

    10.8%である。

          この割合は、年齢が高くなるほど高くなる傾向にあり、50〜59歳で18.5%に

        なっている(第27表)。



 (5) 仕事でコンピュータ機器を使用することに精神的な疲労やストレスを「感

    じている」とする労働者は36.3%となっている。また、女性の方がストレス

    を感じている割合が高く、男性の33.5%に対し39.6%となっている(第28表)。



 (6) 仕事でコンピュータ機器を使用することに身体的疲労・自覚症状を感じて

    いる労働者は、77.6%となっている。特に派遣労働者については92.8%が

    「身体的疲労・自覚症状がある」としている。疲れの部位別にみると、「目

    の疲れ・痛み」(90.4%)、「首、肩のこり・痛み」(69.3%)が高い

    (第29表)。



 (7) VDT作業に関する労働衛生教育を受けた労働者の割合は17.9%となって

    いる(第32表)。



 (8) VDT作業を行う場所の作業環境については、「採光・照明」、「温度」

    に関して「適当」あるいは「気にならない」とする割合が80%以上である。

     一方、労働者がマイナスの評価をしたもので割合が高かったものは、机・

    作業台・イスが「(少し)使いにくい」(43.8%)、レイアウトが「(少し)

    使いにくい」(43.7%)、作業空間が「狭すぎる若しくは広すぎる」(42.6%)

    となっている(第34表)。



(注)

1 主な用語の説明

(1)  ワークステーション

   この調査では、次の3つの特徴をすべて持っているコンピュータ機器を指す。

 イ LAN(Local Area Network)インターフェース・アダプタをシステムの標

   準構成としているもの。

 ロ  高解像度(1,800×1,200ドット以上)のディスプレイをシステムの標準構成

   としているもの。

 ハ 主としてシングルユーザ、マルチタスク環境下で使われるもので、基本システ

   ム(UNIX若しくはWindowsNT)をあらかじめ搭載しているもの。

(2)  汎用コンピュータ

   事務処理から技術計算まで、多数の情報を処理する能力を主眼に置いて設計さ

  れたコンピュータをいう。メインフレームとも呼ぶ。

(3)  POS

   光学式自動読みとり方式の機器によって商品コードを読みとり、その情報によ

  り逐次、売上管理、在庫管理が行える販売時点情報管理システムのこと。

(4)  ハンディーターミナル

   営業先での商品管理、工場や物流センターでの商品管理、ガスや電気の検針、

  店舗での注文の受付等、情報発生現場において情報を収集するための端末のこと。

(5)  ネットワーク

   コンピュータネットワークの略。独立した複数のコンピュータ・システムを通

  信媒体により、相互に接続し、コンピュータの演算能力・ソフトウェアなどを共

  有・相互利用するもの。規模によりLAN及びWAN、または、社外ネットワー

  ク(インターネット、イントラネット)及び社内ネットワーク(電子メールシス

  テム、掲示板システム)などに区別される。

(6)  VDT機器

   ワープロ、パソコン、携帯用情報通信機器、監視用の大型表示パネル、店舗な

  どで使用するハンディーターミナル、POSなど、文字や図形等の情報を表示す

  る出力装置(ブラウン管、液晶ディスプレイ画面など)と入力装置(キーボード、

  マウス、スキャナーなど)で構成される機器のこと。

(7)  VDT作業者

   VDT機器を利用した作業に従事する労働者をいう。

(8)  専任VDT作業者

   昭和60年12月20日基発第705号通達別添「VDT作業のための労働衛生上の指

  針」(以下、「VDT指針」という。)の(別紙)「VDT作業形態の区分」の

  作業形態Aに該当する者で、1日の労働時間を通じて連続VDT作業にもっぱら従

  事し、他の作業との組合せがなく、ディスプレイ画面からの読み取り及びキー操作

  のVDT作業のみを連続的に行う労働者をいう。

(9)  断続的VDT作業者(同上指針作業形態Bに該当)

   1日の労働時間を通じて断続的なVDT作業に従事する労働者をいう。

(10) 一時的VDT作業者(同上指針作業形態Cに該当)

   1日の労働時間の一部をおおむね一回当たり1時間程度以上まとめてVDT作

  業に費やす労働者をいう。

(11) 低頻度VDT作業者(同上指針作業形態Dに該当)

   作業形態が上記(8)〜(10)のいずれにも属さない労働者で、毎日はVDT作業

  がない者、あるいは、毎日あっても一回当たりの作業がおおむね1時間未満の労

  働者をいう。

(12) 常時VDT作業者

   専任VDT作業者及び断続的VDT作業者の両者を合わせた者をいう。

(13) VDT健康診断

   VDT指針中に定める健康診断をいう。本調査では、VDT健康診断を単独で

  実施していない場合でも、定期健康診断を実施する際等にVDT作業者に対して

  眼科学的検査(視力、近点距離の測定等)や筋骨格系の検査(握力検査等)を実

  施した場合には、VDT健康診断を実施したものとした。

(14) 専用の作業室、専用の作業区画

   一般の事務室とは別のVDT作業を行うための専用の室、仕切り、衝立等で区

  切られた場所。

(15) 照明、採光対策

   VDT作業のために、室内の明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じ

  させないこと、ディスプレイ画面の明るさと周辺の明るさをなるべく小さくする

  こと等の有効な措置を講じること。

(16) グレア

   高輝度の照明器具、窓、壁面や点滅する光源から直接あるいは間接にディスプ

  レイ画面上に反射して受けるぎらぎらしたまぶしさのこと。

(17) グレア防止対策

   VDT作業のために反射防止型のディスプレイの導入を行うこと、照明器具を

  低い輝度のものに変更すること、又は既存のディスプレイにフィルターを取り付

  けること等、ディスプレイのまぶしさ(グレア)を防止するための有効な措置を講

  じること。

(18) 騒音対策

   使用するVDT機器又はその附属機器からの不快な騒音が発生しないよう低騒

  音型の機器に変更したり、床にカーペットを敷く等、騒音伝播の防止のため有効

  な措置を講じること。

(19) 温度・湿度に関する対策

   VDT作業を行う場所に関して、作業を行う者に保温のための衣服を貸与し・

  着用させるなどして、作業を行う者が暑い、若しくは寒い、蒸し暑いといった不

  快を感じない状態に保つこと。

(20) 換気対策

   VDT作業を行う場所での喫煙、暖房用燃焼器具の使用、呼吸等によって、一

  酸化炭素及び炭酸ガスが発生し、蓄積することのないよう、これらを防止するた

  めの有効な措置を講ずること。

(21) VDT労働衛生教育

   VDT作業に関する適正な作業姿勢・作業時間、健康の保持増進を内容とする

  教育・指導。

(22) ME機器

   NC工作機械(NC旋盤、NC放電加工機等)、産業用ロボット(シーケンス

  ロボット、プレイバックロボット、NCロボット、知能ロボット等)、その他自

  動搬送機・自動倉庫・自動検査機等の機器の総称のこと。

  (ME=micro-electoronics)



2 統計表等に用いてある符号は次のとおりである。

   0.0    単位数値未満のもの

   −     該当数値が得られないもの

   M.A.  複数回答



3 統計表において四捨五入等の関係で項目の和が計の数字に合わないことがある。





   

III 調査結果



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