I 調査の概要
1 この調査は、建設業における安全衛生管理活動の状況を明らかにすることにより、今後
の建設業における労働災害防止対策に資することを目的として、平成11年11月に実施した
ものである。
2 調査対象は、建設業の事業所(店社)、工事現場及び労働者で、事業所調査については、
常用労働者を5人以上100人未満雇用する民営事業所から一定の方法で抽出した約8,500事
業所、工事現場調査については、労働者災害補償保険の概算保険料が100万円以上又は工
事請負金額が1億2,000万円以上の工事現場から一定の方法で抽出した約3,500工事現場、
労働者調査については、上記の工事現場(そのうちの約1,600工事現場)で雇用されている
現場労働者のうちから一定の方法で抽出した約17,700人とした。
3 有効回答率は、事業所調査73.0%、工事現場調査89.4%、労働者調査84.3
%であった。
II 調査結果の概要
【骨子】
1 下請・元請工事、共同企業体工事の状況
(1) 工事現場からみた下請工事の状況
工事現場の下請の状況をみると、「三次下請」までの工事現場が最も多く40.1%と
なっており、次いで「二次下請」までが32.1%、「四次下請以下」まであるものも
17.0%みられる。
工事の請負金額が大きいほど、また土木工事や電気・その他の設備工事に比べて建築工
事で、「四次以下」まである工事現場の割合が高くなる傾向がみられる(第1表、
第1図)。
(2) 事業所における下請工事の状況
事業所における下請工事の状況を直近の営業年度の完成工事高でみると、下請の工事を
行った事業所は全体の87.3%である。また、全体の25.9%は元請として工事を行
っておらず、下請の工事のみを行った事業所である(第2表)。
(3) 共同企業体工事の状況
平成11年10月末日現在で工事の施工形態をみると、「共同企業体である」工事現場が
36.9 %、「共同企業体ではない」工事現場が63.1%となっている。また、共同
企業体の93.1%は共同施工であり、6.9%は分担施工となっている(第3表)。
2 工事現場での安全衛生管理体制及び安全衛生活動の状況
(1) 統括安全衛生責任者及び元方安全衛生管理者の「選任義務のある」工事現場は50.
9%で、そのうち74.0%の工事現場では「統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理
者の所属会社が同じ」である。これを工事の請負金額階級別にみると、工事の請負金額
が大きいほど統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者の所属会社が同じである割合
が高くなる傾向がみられる(第5表、第7-1表)。
(2) 元請事業者と下請事業者が労働災害防止等について協議する組織を「設置している」工
事現場は93.1%となっており、そのうち協議組織で「規約を作成している」割合は8
8.5%となっている。また、これらの決議事項の内容について、関係者に周知している
割合は98.5%となっている(第8-1表)。
(3) 作業場の巡視(安全パトロール)を「実施している」工事現場は99.5%となってお
り、そのうち、巡視中に不安全状態や不安全行動を発見した場合に、その場で改善を「行
っている」工事現場は99.3%となっている(第10表)。
3 事業所(店社)での安全衛生管理体制及び安全衛生活動の状況
(1) 工事現場に対する安全衛生活動の状況
店社として工事現場の巡視(安全パトロール)をしている事業所は79.7%となって
いる。パトロールの主な参加者についてみると、「店社安全衛生管理者」が44.2%で
最も高くなっている(第15表、第3図)。
(2) 下請工事に関する安全衛生活動の状況
イ 下請工事の受注者としての状況
注文者(直上の建設業者)と契約を締結する際に、対等に交渉が「できた」とする事
業所は「ややできた」とする事業所を含めると、47.6%であった。
「対等に交渉ができなかった(元請の指し値で受注した)」、「やや難しかった」及
び「どちらとも言えない(物件による)」とする事業所のうち、安全衛生管理面で問題
を感じたものがあるとしたのは32.1%であり、その問題としては、「安全衛生管理
費用を確保することが困難になる」を挙げたものが最も高く、66.9%であった。
その一方で、安全衛生に関する何らかの援助が受けられたとする事業所も38.9
%あり、援助の内容としては「新規入場者教育に必要な場所や資料の提供」が最も高く
、78.6%であった(第17-1表、第17-2表、第18表)。
ロ 下請工事の発注者としての状況
元請事業者として下請事業者に発注する際に、安全施工能力を「評価して選定してい
る」とした事業所は、50.7%であり、「評価せず選定している」の13.8%を上
回っている。また、「選定していない(事業者はいつも決まっている)」は34.1%
であった(第19表)。
4 労働者の安全に関する意識等について
労働者が作業中に「ヒヤリ・ハット」体験をしたことのある割合は、77.2%であった
。これを職種別にみると、土木作業者が最も高く、79.3%であった。
また、その体験を他の労働者に知らせる機会があったとする労働者は、「ヒヤリ・ハット
」体験者のうち93.5%であり、その機会としては「朝礼など現場のミーティング中に話
し合いをした」のが66.8%と最も高い(第20-1表、第20-2表)。
主な用語の説明
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