海外労働時報
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2002年
4月
 1 マレーシアの繊維工場でインドネシア人が暴動、雇用削減発表と労相謝罪
 2 2001年の海外直接投資額、41.5%減
 3 第2の教員組合誕生  
1 マレーシアの繊維工場でインドネシア人が暴動、雇用削減発表と労相謝罪

  2002年1月17日と21日、マレーシアのヌグリスンビラン州の繊維工場でインドネシア人労働者約500人による暴動事件がおき、マレーシア政府はインドネシア人労働者の新規雇用受け入れを凍結し、不法労働者を強制帰国させる方針を打ち出した。それに対し、インドネシアのヤコブ労相は、ハッサン外相とともにマレーシアを訪問し、謝罪とともに今度の出稼ぎ労働者政策を話し合った。

繊維工場でおきた暴動事件
 事件の背景と経緯について詳しくは、本誌のマレーシアの記事を参照して頂くこととし、ここではインドネシア国内の同事件に関する対応を見てみたい。
 まず、1月17日におきた台湾系の繊維工場でおきたインドネシア人労働者約500人の暴動の発端は、同工場に就労する1800人のインドネシア人労働者のうち16人が麻薬検査で陽性となり逮捕されたことがあげられる。この逮捕に怒った労働者らが、ニライ工業団地内の労働者寮で暴れ、警察のワゴン車やトラックを破壊した。その結果、19日にはこれに抗議するインドネシア人労働者約1000人がストライキに突入するという事態に陥った。
続いて1月21日には、スランゴール州シャアラムでインドネシア人の建設作業員同士のトラブルがおき、約70人が鉈をもって騒ぎを起こし、周辺の商店街に放火や危害を加える事件となった。
 2001年の年末にも、ジョホール州の出入国管理所で、インドネシア国籍の不法労働者1500人が強制送還に反発し、暴動を起こし、キャンプを焼き払うなどの事件がおきており、今回のようなインドネシア人労働者による暴動は過去3年間で4回も発生しており、インドネシア人労働者に対するイメージが低下したことは否めない。
マハティール首相も「インドネシア人労働者は問題をよく引き起こす」と発言、今後の同国からの労働者の受け入れを見直す姿勢を明らかにした。


ヤコブ労相の謝罪
 上記の暴動を受け、1月22日にヤコブ労相は、現地紙ジャカルタポストの取材に対して、「インドネシア政府を代表してマレーシア政府に謝罪の意を表する」とした。そして「インドネシア政府としてもこのような事件が起こったことは大変遺憾であり、わが国とマレーシアの人々は兄弟なのだからマレーシア政府がインドネシア労働者に対して下した罰を軽減してくれることを望んでいる」とコメントしている。
また、インドネシア政府はマレーシア政府に干渉することはできないとして、マレーシア政府が下す法的措置に同意しながらも、マレーシアで働くインドネシア人労働者すべてに悪いイメージが付きまとわないことを望んでいると述べている。

56万人の登録済み労働者と200万人の不法労働者
 現在マレーシアには56万人の登録済みインドネシア人労働者が、プランテーション部門、建設部門、製造部門などに就労している(インドネシア政府の統計では26万人と発表されている)。一部の労働者はインフォーマル・セクターや家政婦などにも従事しており、同国の外国人労働者の約7割を占めている。
 その他、マラッカ海峡やカリマンタンと東マレーシアの国境を越えて密入国する不法労働者が大勢存在するとされ、同国に就労するインドネシア人は200万人以上ともいわれている。そのため毎年数回、合計数万人がマレーシアからインドネシアへ強制送還され、最近では2002年2月下旬に5400人が送還された。
 地理的に移動が容易で、言語も宗教も人種も似ているため、労働移動が途切れることはなく、2カ国間での労働移動に関する話し合いがさらに必要とされている。
 
マレーシア政府の対応
 1月23日、マレーシア政府はインドネシア人労働者の新規雇用の凍結を行うとともに、カンボジアやベトナムなどからの新規雇用などを視野に入れていくことを発表した。
 この対応に関して、インドネシア出稼ぎ労働者支援協会(Consortium For Indonesian Migrant Workers Advocacy)は、「1月17日の暴動を起こした労働者に対しての十分な調査もなく、『疑いがある』というだけで逮捕され、強制送還されるのは納得がいかない。公平な調査を行ってほしい」と反論している。
 ヤコブ労相も、マレーシア政府の決定に基本的には同意の意向を示したが、「マレーシアもわれわれの労働力が必要であり、罪のある労働者だけを強制送還する方針を望む」とコメント。「この事件で両国の関係が悪化したとはいえない」としている。
 ハムザ副大統領も、隣国であり、また雇用の恩恵を受けているマレーシアに対して、新しいアプローチが必要であろうと述べている。
 マレーシア政府は引き続き1月28日、現在雇用しているインドネシア人労働者を半減させる方針を発表した。これにはヤコブ労相が納得できないと反論、一部の労働者が起こした問題を、全員の労働者の問題かのように扱うのは公平でないとし、正規労働者の新規雇用を凍結することは、不法労働者を増加させるだけであると、この決定を批判した。
 また、前労相で労働開発研究センターのボメル局長は、「この決定によりインドネシア国内の失業率がさらに悪化するだろう」と予測、ハムザ外相も、「インドネシア政府としても、最近の暴動を理由にすべてのインドネシア人労働者が罰せられないように望んでいる」と答えている。
 その後2月5日には、ユスリル法務・人権相は、「すべてのインドネシア人出稼ぎ労働者の雇用が凍結するわけではなく、就労許可を得ている労働者の雇用に関しては今後も引き続き行う」と述べた。またフォン人的資源相の発表によると、インドネシア人家政婦の雇用凍結は行わないという。その理由は、工場労働者ほど社会問題になっていないことと、同国に就労する15万人の外国人家政婦のうち、7割をインドネシア人が占めているため、となっている。

マレーシア国内の外国人犯罪者、インドネシア人が1位
 マレーシア政府の犯罪調査局の発表によると、犯罪に関わった外国人労働者の1位はインドネシア人で、2位フィリピン、3位バングラデッシュ人、4位はミャンマー人であることがわかった。インドネシア人が関わった犯罪件数は、2001年に2169件、2000年に2219件、1999年には2378件となっている。そのほとんどが、強盗、殺人、殺人未遂、強姦などである。

最終的な結論が待たれる出稼ぎ政策
インドネシアにとってマレーシアは、年間数億ドルともいわれる出稼ぎ労働者からの仕送りと、国内の高い失業率を緩和するという2つの要因があり、マレーシアにとってインドネシアは、言語・宗教・文化の壁を最も感じない人材を安く供給できる国である。
 両国にとって出稼ぎ労働者問題はいまや相互依存関係となっており、一国の決定で解決する問題ではない。根本的な話し合いが待たれる。

 

 


 
JIL