非正規雇用と正規雇用の格差─女性・若年の人的資本拡充のための施策について

要約

永瀬 伸子(お茶の水女子大学教授)

正社員と非正社員の格差縮小は労働力減少が見込まれる日本にとって喫緊の課題である。有配偶女性の3人に1人が、若年無配偶女性も5人に1人がパート・アルバイトに従事し、若年男性を含め非正規雇用が拡大している。『労働力調査』のコーホート分析から、女性は無配偶者を含め正社員化がすすみにくいと示された。さらにパネル調査である「21世紀成年者縦断調査」を用い、観察できない個人特性を考慮し、固定効果モデルで就業形態間の賃金差を推計したところ、同じ個人でも、正社員からパート・アルバイトに移動すると、女性で19%程度、男性で15%程度、時間当たり賃金率が下がると推計された。同じ個人でもパート・アルバイト採用であればスキルが生かされない雇用慣行があると示された。こうした大きい賃金差が持続する一因に税制・社会保険料節約目的の有配偶女性による就業調整がある。末子10-12歳だと4人に1人のパートが103万円の壁近傍で就業調整をするようになっている。正社員と非正社員の同一労働同一賃金のガイドラインが機能するには、仕事配分と仕事評価の雇用慣行の改革が必要である。しかし加えて多くの妻に就業調整を奨励するような税制や社会保険の改革も同時に行われることも必要である。

2018年特別号(No.691) パネルディスカッション●非正規社員の処遇をめぐる政策課題

2018年1月25日 掲載