労働法における正規・非正規「格差」とその「救済」─パートタイム労働法と労働契約法20条の解釈を素材に

要約

神吉 知郁子(立教大学准教授)

本稿は、非正規労働者の正規労働者との労働条件の不合理な「格差」を禁止する法原則について、その解釈をめぐる現状を分析し、今後の課題の整理を試みたものである。その重要な法的手がかりは、2012年に新設された労働契約法20条と、これにならって2015年に改正されたパートタイム労働者法8条における不合理格差禁止条項である。これらの条項は3つの要素(職務の内容、職務内容及び配置の変更の範囲、その他の事情)を考慮して不合理な格差の救済を図る規範であるが、考慮要素の扱いや不合理性の判断方法についての解釈は対立し、裁判例も分かれている。非正規労働者の不合理格差禁止原則を人権保障のための差別禁止アプローチとは異なる政策アプローチとみる立場からは、政治的スローガンとして掲げられた「同一労働同一賃金」の実現による解決の実効性には疑問が生じる。ガイドラインやパート・有期法の制定へと展開する過程においても、差異に応じた救済をどう具体化するかという問題は残されたままである。現時点では、個別労働条件ごとの性質・目的から不合理性を認定する方向性が打ち出されているが、その具体的方法も明らかでない。この点、裁判例でも考慮要素とされてきた労使協議や非正規労働者の加入する組合の合意といったプロセスが重視されることで予測可能性が高まり、真の労使自治の構築を後押しする仕組みができれば、それが本来的な「救済」となりうる。

2018年1月号(No.690) 特集●格差と労働

2017年12月25日 掲載