人口構造の変化と経済格差

要約

白波瀬 佐和子(東京大学教授)

本研究の目的は、少子高齢化で代表される人口構造の変化を考慮して、経済格差について議論することにある。特に、世帯構造やだれが世帯主かを考慮して、急激に人口高齢化の進行が始まった1980年代半ばと2010年代半ばの30年間を比較することで、経済格差が生まれるメカニズムを検討した。本分析で用いたデータは、『国民生活基礎調査』である。具体的には、高齢者のいる世帯と親と同居する未婚者に注目して分析を進めた。その結果、高齢層においては、三世代世帯から一人暮らし・夫婦のみ世帯へと世帯構造が変わり世帯規模が縮小したことが、経済格差の変化と深い関係があった。一方、若年未婚者(18~34歳層)については、8割以上が親と同居している状況は30年間で大きく変わっておらず、彼/彼女らの世帯構造に大きな変化はない。しかしながら、その世帯の中で特に壮年未婚者(35~49歳層)と親との経済的な位置づけに変化が認められた。男性については非正規雇用、失業の上昇によって本人収入が目減りし、親との同居によって受ける経済的恩恵が高まる傾向があった。その一方、女性については、所得階層の低いところで彼女らの収入割合が上昇しており、同居する親との経済関係に変化があった。以上、経済格差を検討するにあたって、人口変動を考慮することは個人が所属する世帯の構造的変化のみならず世帯内の関係に注目することが極めて重要であることを確認した。

2018年1月号(No.690) 特集●格差と労働

2017年12月25日 掲載