所得格差の要因と2010年代における動向

要約

石井 加代子(慶應義塾大学特任講師)

バブル崩壊以降、「格差社会」という認識が人々の意識の中で浸透してきているが、直近の経済統計によると、2000年代半ば以降、格差の拡大は頭打ちとなり、その一方で全体的に所得が低下してきている。本稿では、格差の拡大が続いていた2000年代までの所得格差の要因に関する先行研究を概観した。そのうえで、「日本家計パネル調査(Japan Household Panel Survey:JHPS)」を用いて、いまだ研究蓄積の少ない2010年代における有配偶世帯の所得の状況を確認した。先行研究では、個々人の稼得所得については、非正規雇用の増大や、業務の二極化が低収入の仕事を増やし、格差を拡大させたという見解がある。一方、世帯所得については、さまざまな要素で構成されているため、これらの要因以外にも、人口の高齢化や、高学歴・高収入カップルの増加といった世帯構成の変化が格差拡大の要因として取り上げられている。先行研究を踏まえ、分析では、パネルデータの特性を活かして、男性の稼得所得の7年間の変化と、夫の所得階層別の妻の就業率の変化を確認した。その結果、男性の所得は加齢とともに増加しているものの、前の世代よりも所得水準は低く、一方で有配偶女性においては、特に夫の所得階層が低い世帯で非正規雇用として働き出した割合が高かった。非正規・正規間の賃金格差が是正されれば、低所得層における妻の就業率の上昇は、世帯間の所得格差解消に大きく寄与することが期待できる。

2018年1月号(No.690) 特集●格差と労働

2017年12月25日 掲載