共働き化社会における社会保障制度のあり方

要約

嵩 さやか(東北大学教授)

個人の選択が介在する事由にニーズを見出すタイプの社会保障の仕組みについては、ニーズに対する保障の要請と自己決定権の尊重の要請との相克が生じる。そのため、こうした仕組みについては、常にその時々の社会状況に照らしながら、その相対立するモーメントの間でいかなる調和点を見出すべきかが問われる必要がある。女性の就労機会が拡大し、共働き世帯が増加しつつある現状において、第3号被保険者制度や遺族年金制度の対象者を、就労阻害要因を持つ者に限定していく方法は、1つの合理的な調和点の見出し方といえる。他方で、数次の改正を経た今日の育児休業給付のように、共働き世帯を主な対象として仕事と育児の両立を支援する給付は、少子化対策の一環としても位置付けられる。そうした給付は、ライフスタイルが多様化する中、所得再分配の動員によって特定の生き方を支援・促進することで、個人の選択に対する非中立的影響をむしろ意図的に引き起こすものである。もっとも、こうした給付の存在により、国家が一定の生き方のみに価値を見出しているという誤ったメッセージを発信して人々の多様な生き方の追求を阻害せぬよう、国家は他の生き方の尊重とのバランスを図っていく必要があろう。

2017年12月号(No.689) 特集●雇用共働き化社会の現在

2017年11月27日 掲載