1980年代半ば以降の雇用共稼ぎの増加とその背景

要約

大石 亜希子(千葉大学大学院教授)

本稿では、共働きの変容を長期的な視点で振り返った後、1990年代から顕著になってきた雇用共稼ぎ化の実態を把握し、そのような変化をもたらした要因を需要側、供給側、制度の3つの観点から検討する。他の先進主要国と異なり日本は、戦後の高度成長期を経るまで、女性就業者に占める自営業のシェアが大きいという就業構造の特徴があった。そのため1960年代までの共働きは、妻が自営業に従事する形態を多く含んでいた。1975年を底として有配偶女性の就業率が上昇に転じる過程では雇用共稼ぎ化が進んだが、加速したのは1990年代以降である。雇用共稼ぎ化は、妻が非正規の短時間雇用に従事する形で増加した。経済格差論争を契機に、高所得共稼ぎ夫婦が増加しているのではないかという言説が広まったが、2000年代前半までについては、高所得共稼ぎ夫婦が傾向的に増加している様子はない。しかし近年は、妻が25~34歳の夫婦のうち、夫の所得がやや高い階層でフルタイム型の雇用共稼ぎの割合が小幅ながら拡大している。雇用共稼ぎ化は、経済面および時間面で子どものウェルビーイングに影響すると考えられるが、共稼ぎのできないひとり親世帯を含めて、子どもの間でのウェルビーイングの格差が拡大していないか検証することが望まれる。

2017年12月号(No.689) 特集●雇用共働き化社会の現在

2017年11月27日 掲載